第2話

「お待たせ!」

バイクに乗っても寒くないように何枚も着込んで準備した。

ナミはそれに比べて随分薄着だが、来ているローブに夏は涼しく、冬は暖かくなる体温調節魔法がかかっているらしい。

これも依頼のお礼で魔法を付けてもらったと言っていた。

ナミはお金がない人からでも依頼を受けては、魔法の付与や、魔法道具を貰ったりしている。

役所からはいい顔をされないが「役所介入の依頼はちゃんとお金貰ってるからいいでしょ」とナミが淡々と言っていたのを思い出す。

感情をあまり顔に出さないので怖く思われがちだが、根は優しいと思う。

バイクの後ろに乗り町はずれの古城に向かう。食事会の主催者、リリナが住んでいる。

ガタガタと音を立てながら砂利道を上ると、目的地が見えてきた。

随分と古びた見た目なので街では幽霊が出るだとか、黒魔法を使う魔法使いがいるだとか色々な噂があって近づく人はほとんどいない。

大きなドアを叩くと、ギイーッと耳障りな音を響かせながら扉が開き中からリリナが顔を覗かせた。

青白い肌と目の下のクマ。これでは幽霊が出ると噂が立ってもしょうがないかと思えてくる。

リリナは10世紀ほどを生きる種類の吸血鬼らしい。

「リリナまた寝起き?」

「あなた達が来るの早いのよ。荷物少ないけど頼んだのはあるの?」

と、リリナは起こされて不機嫌そうだ。

「しっかり持ってきてるよ。」

ナミはバッグをあさり血液パックを取り出してリリナに渡した。

血液パックのラベルに目を通すと、寝起きが嘘のように目をキラキラさせながら「うそ。」と呟いた。

キッチンにかけて行ってワイングラスを持ってきてさっそく飲む準備をしている。

こんなに子供っぽいリリナは見たのは初めてだった。

「ナミさん、あれどうしたの?」

ユウは不思議に思ってナミに聞いた。

「人魚の血だよ。クリスマスプレゼント。」

「その取引って大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。怪しいものじゃないし。」

とナミは少し笑いながら言った。

「ちょっと研究所の手伝いして安く譲ってもらったの。別にその研究所も怪しいとこじゃないよ。」

というと料理の準備に台所に向かった。

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