友人は半分が人外です

猫家 凪

クリスマスパーティー

第1話

「わー、雪だよ!」「雪、雪!」

学校の外で生徒のはしゃぐ声が聞こえてくる。

季節が最後に巡ってくる、ヴェルアにもとうとう冬がやってきた。

ユウは冷たくなった手を擦りながら学校を出る。

手袋を忘れてきてしまったことを少し後悔していた。

「「ユウ先生さようならー。」」

校門をくぐると何人かの生徒がユウの横を駆け抜けて、ほうきに乗って飛んで行った。

「気を付けてねー」

この天気ではほうきでの帰宅は大変そうだ。

ユウが臨時講師として勤めているこのヴェルア魔法学校は明日から長い冬休みを迎える。

教えているのは魔法植物学で講師の先生が居ない時や補助が必要な時に呼ばれている。

ユウは魔法植物の研究をしているがそれだけでは収入が安定しないので、卒業生に臨時講師をしないか声がかかった時に二つ返事で引き受けた。


ユウは帰りがけに商店街の肉屋『バーバル』に立ち寄り、注文していたクリスマス用のチキンを受け取った。

店主は「これも持っていきな。」とウインナーをおまけしてくれた。

店主も奥さんも気前が良く、いつもおまけをくれるので、いつかおまけで倒産してしまうのではないかと少し心配している。

ユウは家に着くとリリナのからの手紙を読み返して、必要なものが全部そろっているか確認する。

今日行われるクリスマスパーティーで食べたいもののリクエストがたくさん書いてある。

持っていくものを準備すると、玄関の横に小さな山が出来た。

これではナミのバイクに全部乗らない。やはり夏からつけていた梅酒は置いていくべきだろうか?

不必要なものが混じっていないか確認してみるが、どれも持っていきたいものばかり。


選別はナミに任せることにして、ユウは窓際の植物の記録を付け始める。

この季節は植物を窓際において目一杯に日光を当てても足りないくらいだろう。

半分くらい記録と手入れが終わったところで呼び鈴が鳴った。

声をかける間もなくナミが入ってきて「よっ。」っと顔を出した。

ナミとは魔法学校の時に出会いかれこれ10年近くの付き合いになる。

ナミは『何でも屋』として仕事をしている。

「準備できてる?」

「出来てるけど、そのー」

ユウは歯切れの悪い返事しながら、玄関の横の荷物の山に目をやる。

ナミはため息をつきながら肩をすくめて、少し呆れているように見えた。

「じゃあ、これ試してみようか?」

とナミはバッグの中から小さな10㎝四方の羊皮紙を取り出した。

中には細かく何重にも重なった魔法陣が書いてある。

「何それ?」

「今回の依頼の報酬でもらったの。収納魔法なんだって。」

そう言うとその羊皮紙を左手に持ちに魔力を流す。右手を荷物の山に向ける。

すると荷物を置いている床に同じ魔法陣が現れて、荷物ごと消えた。

「え、荷物その中に入ったの?すごい。」

見たことのない魔法に驚く。

「じゃあ、行きますか?」

「ちょっと待ってー」

荷物の選別に時間がかかると思って油断していた。

急いで残りの植物の記録を付けて、霜焼けしないように窓際から鉢植えを移動させた。

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