第12話 追放高専生も魔法が使えた②

僕が手元に魔力をあつめると、召喚の光が現れ始めた。

よし!


あれ?力がこれ以上集まらない……。

本当ならここから……。


と思っていたら、魔力は弾け飛び霧散した……。

「うわっ!!」


うん。ぐうの音も出ない失敗である。


『……まあ、そんなもんだよ。スキルと武装召喚は魔術の基礎ができた後に、偶発的に目覚めるものだ。今のお前にはできんよ』


……へい。なんだよ。先に言ってくれりゃあいいのに。


『まあ、知識としては、教えといてやるよ』



えー以下脳内メモ

異世界の力は「異能」と呼ばれており、それは、①魔術と魔法 ② スキル ③ 武装召喚  である。


まず、

① 魔術と魔法。


地・水・火・風・光・闇・生・滅


このどれかの属性に関する現象、或いは組み合わせた現象を発現させるのが魔法。そのための諸々の論理やら手続きやら法則やらを総称して魔術と呼ぶ。


レイヴンはこの分野における専門家であり、第一人者でもある。まぁとりあえずは良くある自然現象を操る魔法のこと、という理解で問題ないそうだ。


ただ、バリバリの剣士の身体強化なんかも生属性魔法にカウントされるらしいから、あまり先入観でシンプル過ぎる理解の仕方は良くないな。


そして②「スキル」


これは、上記に属さない特殊な力のことで、原則、一人に一つから二つ、多くとも三つしかないモノらしい(そしていつ目覚めるかもわからない)


原則、と言ったのは例えば他人のスキルを奪うスキル、とかもあるらしい。聖女たるセシル様なんかは30以上のスキルを持っていたそうな。


そして、③

「武装召喚」

これは初めて知ったが、異世界人は皆、己の心から武器を召喚できるらしい。というか、地球人もできる人はできるそうな。具現化、と言った方がいいかもしれない。


例えば、レイヴンの象徴たる大鎌がまさにこれだし、氷見野さんの細身の剣なんかも、そうだと思われる。


武装召喚も一応はスキルの一種とされる。武装召喚にスキル的な効果が付与されている場合も多いみたいだし。とはいえ、見た目的に武器なので、スキルと分けて語られることが多いそうな。


武装召喚は、一人に一つと決まっているが、本人とともに強くなってゆく。


実は、勇者デューク様の聖剣も実は武装召喚だったらしい。デューク様は武装召喚を極め、ついには至高の一撃時、即死というチート過ぎる特殊効果が付与された。その話はあまりにも有名だ。


これらのうち、どれに素質があり、どれを極めるか、そしてどう組み合わせて闘うかでその人の闘い方の個性が出てくる。


そして、魔族、魔獣の作る結界という防御壁は、これらのどれかの手段でないと効果がない。それでかつての地球文明はなす術なく魔王に敗れたのだ。


「地球人も、異世界の力を使えるんですね?」


僕はレイヴンに少し気になっていたことを聞いてみた。たぶん地球人が異世界の力を使い始めたのは最近の筈だからだ。


「ああ、ま、そうだな。魔王が来て、ちょっとしてから地球にも『魔那マナ』が満ちてきたらしいから」


 魔那マナ、正体不明の物質で、平たく言えば魔力の源である。なるほど。そういうことかい。異世界から来た魔王やら勇者やらレイヴンやらは元々、体内に魔那マナがあったから、異能を使えた。地球人で異能の戦闘で言うと、第二世代と呼ばれる八雲 源やくも げんとか毒島 冥山ぶすじま めいざんなんかが有名だが、その辺は地球に魔那が満ち始めたから、異能に目覚め始めた訳だ。


そして今の討魔軍も異能のプロの集まりである。


『ま、そういうことだな。地球人は異世界人、つまり俺たちみたいに全員が使える訳じゃないみたいだが』


ま、そうだわな。レイヴンとかもそうだけど、魔獣やら魔族やらは基本的に魔那マナの申し子だ。それだけ人類は不利なのだ。



『まあ、でもお前は俺が出てきてからのことを考えると、並みの異世界人より、全然才に恵まれてるぞ?』


 え?そうなんか?たしかに本当に僕は異能に関しては、無才だったから、そういう意味では大幅なランクアップである。


本当に何故なんだろう?レイヴンが主人格のときにチートなのはわかるが、僕が主人格となったときでも、魔術が使えるようになったのは、不思議としか言いようがない。


まあ、いいや。


『だから、考え事してねえで、ひたすら撃てっての』


はーい



 と、いう感じで追放後のスローライフの日々を僕は気ままに魔術を極めつつ過ごしていた。……親の仕送りで生活しながら。たまにバイトには入ったが。





【???side】


その公園で、遠目にトオルの様子を見ている少女がいた。

正確には、少女と二人の取り巻きだ。


少女は、ハッとするほどの美少女であった。だが、服装が奇抜である。いわゆるゴスロリと呼ばれる格好をしている。


その取り巻きの一人はやたらと大柄でガタイのいいスーツにサングラスにスキンヘッドの男。もう一人は、やたらと小柄な猿のような同じ服装の男だ。


「へえ、やはり凄いですわね、彼」

少女は、どちらにという訳でもなく呟いた。もしかしたら独り言であったかもしれない。


「無詠唱魔法をいとも簡単に使っていますね」

小柄な方の男が淡々と高い声で反応する。


「ええ、それに中級魔法すら無詠唱で成功させつつありますわね」

少女はトオルの状況を正確に見抜き、語る。


「しかし、お嬢様もそれくらい容易にできるでしょう」

大柄な方が、何とも低い声でそのように反応した。


「できますわよ。でも、問題はそこではありません」

ぴしゃりと少女は言う。


「あの成長速度が問題なのです」


「ふむ、どうします?」

小さいほうが、尋ねる。


「え?決まってるでしょう?」

少女は満面の笑みで振り向いた。


「こういうときは襲撃しか無いのではなくて?」

それを聞いて、小さいほうは、にやりと微笑した。

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