第11話 追放高専生も魔法が使えた
「土よ、我が敵を射抜く弾丸となれ、
僕はレイヴンに教わった術式を作り出し、展開させ、魔力を解き放った……公園で。
魔法陣が発現して、土が凝縮し、岩の塊のようになる。僕はそれを前方に解き放つイメージをする。
ガンッ!!!
岩の塊が、公園の土管に激突した。
おおお、すげえ!できちゃったよ。マジ?僕は多分魔術の素養はない、って言われてた気がしたんだがなぁ。
『へえ、初回で成功させるかよ。もしかして俺が目覚めて体質が変わったのかもな』
そうかもしれない。
「レイヴン様……レイヴンは初回で成功したんですか?」
僕は興味本位で聞いてみた。
『俺は初回で無詠唱で成功したな』
……ええ、そうですよね。そりゃ歴史に残る大天才でしょうからね。
僕は、退学後の時間を使って魔術の訓練を行っていた。なぜか?ヒマだったからである。ニート万歳。
――というのもあるが、レイヴンの影響が大きい。なぜかレイヴンは僕が強くなることを強く望んでいたのだ。
正直、歴史で知っていたレイヴンは冷酷かつ残酷、殺しの権化、変人、異端、女好き、というところで英雄であるが、性格的にはアレである、というのが僕の認識だし、世間の周知である。
でも、正直、そういう部分もあるにはあるのだろうが、思っていたより何というか……変に「まとも」なところがあるのだ。
例えば、氷見野さんの家に行ったとき、自分で応対しようとせずに、この世界の状況がわからないから僕を探して僕に任せよう、とした判断もそうだし。
今、現時点でわかっているレイヴンの目的、行動原理は「滅魔」「魔を狩ること」といったところだ。それに対し、凄まじいまでの思いを感じる。
だが……それなら今から僕の身体を乗っ取って、ダンジョンに乗り込んでゆけばいい話だ。それもできるはずなのにそうしない。
そうではなくて、この世界のことを把握し、同時並行で僕を強くしたうえで、この世界の状況に則った上で目的に向かおうとしている。
破天荒でありながら現実的かつ冷静で戦略的なところもちょっとある。
ここまでで、レイブンと肉体を共有して感じた印象である。
『……考え事してる暇があったら、魔法撃てっての。次は無詠唱な』
ああ、そうね。
よし!できらぁっ!!
僕は、頭の中で術式を作り、魔力を解き放つ。
「
今度は瞬時に水の塊が前方へ射出された。
『ほらな?できるだろ?たぶん才能が目覚めたんだよ。俺によってな』
どうやらそうらしい。
よっしゃ!!俄然やる気がでてきた!!
「
僕は調子に乗って、中級の水魔法を同様に無詠唱で放った。……いや、放とうとした。魔力が暴発して、水の弾が真上に放たれ僕に降り注いだ。
水弾……というより滝行である。
『……まぁアレだ。初級魔術でも無詠唱で使えりゃ十分実戦で闘えるさ』
あれ?ひょっとして慰められてる?
◇
そういうことで、僕は無事一つの肉体に魂を二つ持つ憑依人間となったわけだ。
強さと知識が手に入る、とか言ってたけど、それは誇張で、その都度、レイヴン様がレクチャーしてくれるだけだ。まあ、体質が変わったところはあるけど。
まぁそりゃそうだ。それでいきなりレイヴンくらい魔術が使えたらチートである。まぁ任意のタイミングで「入れ替われる」から結局、チートはチートだけど、そのとき僕は何もできない。そのとき主人格となったレイヴンがチートなだけだ。
だが、これは言わば「切り札」である。極力、僕としてはやりたくない。まぁ何か怖いし。
そういうところもあったので、レイヴンと自我の在り方、肉体の所有権については細かい契約を結んだ。(これはレイヴンからの提案だった)
まぁ、簡単に言うと、肉体のメインの所有者は僕で良く、自分は必要な時に出るよ、というものだ。
レイヴンからしたら、肉体を完全に自分の自由にできないから、ストレス溜まるだろうし、さぞ嫌だろうなぁ、と僕は想像していたのだけれど、どうやらレイヴンは一つの肉体に二つの魂、ということに何か可能性を見出しているようであった。
要は現在の状況をポジティヴに捉えて、生かしてゆこう、という意志みたいなものが、垣間見えるのである。それによって具体的にどういう結果を目指しているかまでは、分からなかったけど。
で、僕は退学になって時間もできたので、この日から魔術の勉強と訓練を緩くやってみたりしている訳である。レイヴンも僕が強くなることは、なぜか大いに推奨しておら、喜んで魔術を教えてくれた。
知らなかったけど、異世界の戦いの術は興味深いし、きちんと体系立てられていることを知った。
戦いの術は大きく分けて3つ。これらは地球では3つ合わせて「異能」と呼ばれている。それは、①魔術と魔法 ② スキル ③ 武装召喚 である。
うーん、魔法は使えたからなあ、他のも余裕でしょ?
『てか、お前スキルと武装召喚が何なのかわかってんの?』
……わかりません。でも、武装召喚ってあのレイヴンが鎌を召喚してたり、氷見野さんが使ってた剣のことなんじゃないの?
『まあ、そうだ』
ほらやっぱり。あれカッコいいよなあ。何もないところから武器が現れてさ。厨二心を絶妙にくすぐる。
『……ま、そう思うならやってみたらどうよ?』
よし、やってみよ。
えーやり方としては……ゴニョゴニョ。ふむなるほど。
僕は意識を自分の内面に向けて集中させた。
そして自我を押し固め、物質化するイメージを持つ。そして、イメージと現実を裏返す。
で、最後に、自分の魔力を流し込む!
「武装召喚!!」
召喚の光が僕の手元に生じ始めた。
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