第2話暗雲

「どうしたの、おばあちゃん?」

しおりは珍しく彼女の祖母奈美恵が、涙を流しているのを見つけた。

「ううん、何でもないわ懐かしくてね。」

祖母が見ていたのは写真立てであった。引き出しの奥深くに置いてあった、壊れかけの古びた写真立て。写真には、まだ元気だったおじいちゃんとそしてお母さんとお父さんがいた。少し、表情が硬くなったのを自覚する。おじいちゃんがまだ生きていたことを考えると2025年ぐらいだろうか。コロナウイルスが広まり、世界中の人たちが苦しみ、死に。沈静化し。そしてまだ影を潜めていたころだ。

「あの時は、みんな元気だったのにねえ。」

それから10年後。2035年ほとんど死滅したと思われていたコロナウイルスが変異した。その発生源には圧研究所から漏れた、インドで変異したなどなど様々な説があるが定かではない。重要なのは、変異したウイルスによって2020年代のコロナウイルスとはくらべものにならないほどの苦痛と死が人類にもたらされたということである。5日間ほどの体をもだえるほどの苦痛は20歳以上の老若男女問わず、彼らを襲った。既存の安価なワクチンは効かず、効果が確認されたわずかなワクチンは高価で一般庶民には到底手の届かぬものだった。死者の数は実に人類の五分の二にまで及ぶ。

そして、そんな時期に。彼女の両親はしおりを産んでしまった。別に、ほんの半年前は平和だったのだ。半年後がそんな惨状になろうとも想像できるはずもない。そして、、体力を奪われたことにより彼女の両親は天国へと行くことになったのだ。


さて、この悲劇には続きがある。変異したコロナウイルスにかかり、死の淵から復活した人類。彼または彼女らの体に俗に、「超能力」だとか、その他オカルトチックで霊的でスピリチュアル的なものが宿ったということである。しかも、全員に。これは、若いゆえの免疫により軽傷ですんだ20歳以下も同様であった。何故、そのようなことが起きたのか。そして、どのような原理で能力が発動されているのか。今現在もほとんど知られていない。


カノンの祖母は激動する社会状況の中で見事に彼女を育て上げた。それがカノンが祖母を大好きな理由の一つである。


廃品置き場で灰島すみれはいつものように機械いじりをしていた。生まれたときからずっと、彼女はここにいる。

ただ、一度もつらかったことはない。彼女には頭があった。能力で強化され、天才と呼ばれる頭脳が。また、近所の人が食べ物をくれたのも幸運だっただろう。もし、そのままだったのなら餓死していたのに違いないのだから。

「ある意味、この場所においてくれた両親には感謝してん。」

気が付いたときには、コンピューターを完璧に扱えていた。6歳のころには、プログラミング言語は体が弱かった彼女にとっての手足となった。8歳のころ、彼女はついに自身のコンピューターを完成させた。

「一号。」

不格好で無駄に大きいその機械は、今もここに置いている。

「二号。」

無駄に小型化しすぎたそれは、いつの間にか水に流されてどこかに行ってしまっていた。

そして、3号。今彼女が持っている機械である。もう4年も使っているか。

「新しいの、いい加減開発しようかなあ、、、」

工場、と彼女の友人が呼んでいるところに帰ろうと・・・・


「あれ?誰かいる?」

その声を聞いた瞬間、彼女はなにか悪い予感がして物陰に引っ込んだ。

「見間違いか。」

「おい、早く行くぞ。ここを壊すための計画を早く練らないと。」

「ああ、何しろ枢密院のお偉いさんからのご依頼だからな。」

!!!!思わず、すみれは声を出しそうになった。

「落ち着くのよ、静かに冷静に。」

小声で自身を落ち着かせる。

「で、ここら辺に散らばってるガラクタはどうするんだ?」

「そうだなあ。ここをロボット兵と通常兵の拠点にするとして、、、」

ここで、なるべく情報を引き出すのが一番重要であることを考えて、逃げ出したくなる気持ちをぐっと抑える。

「しかし、日本の中に兵隊を出勤させるなんて、、、どういうことだよ。金でも渡せば解決することじゃないのか?」

「さあ。あの人は左翼勢力の先頭だからなあ。俺たちじゃあ理解できない頭を持っていてもおかしくはない。」

そういって、二人の声は去っていった。


すみれは、すぐにそのまましおりの家へと向かった。しおりの家が一番近い、というのもあるが彼女が一番話していて安心できるし、そしてこの話をむやみに拡散させてここら辺をパニックに陥れる。なんて、こともない。

「しおり!!!!」

「あらー。すみれちゃん、いらしゃーい。」

「あ、しおりのおばあちゃん、お邪魔します。」

急いできたので、飛ばしそうだった靴を慌てて止めきっちりと玄関でそろえる。

「どうしたの?すみれ。」

部屋の奥から、しおりの無表情な顔がひょこっと出した。

「珍しいね。すみれがあせるなんて。」

「ねえ、しおり聞いて。長崎が危ないの。」



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すこし、切りどころを間違えたかもしれません。これからも、更新していきますので、ブックマークやいいねコメント、星評価を頂けると幸いです。

次回予告 食レポ&作戦会議!!!!!!










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