アフター・パンデミック

絶対に怯ませたいトゲキッス

第1話悪ガキ4人衆

悪ガキ、というものをみなさんご存知だろうか。コロナ流行後の2050年ではもはやそれは数世代前の概念であったが、ここ長崎県では彼等、いや。彼女らが存在していた。


「人食い熊が出たらしいわ!!!!!!行くわよ!!!!!!!!!」

いつものように、4人の少女の中で少し身長が高い本村の声から、悪ガキどもは動き出した。

「常彦さんとこのおじさんがわき腹をやられたらしいね。早く倒さないと!!!!!」

森に向かって歩き出しているときに本村の隣にいた小柄な少女が発言する。彼女は、少しにやにや笑いをしながら、彼女の自作であるタブレットを見ていた。灰島、彼女自身の名前を使ってそう呼んでいる。

「大丈夫かなあ。また、叱られたりしないかなあ。」

ナーバスなのは、意外にも彼女らの中で一番背丈が高い子であった。最後方から、彼女らを追っている。

「もーう。心配性なんだから、真山は。」

「そうだよー。大丈夫だって。私たちには、「能力」があるんだからさ。」

そして、あと一人。物静かで無表情な少女がいる。走っているのに全く息も乱れていない。彼らがここら辺で悪ガキと呼ばれている少女たちである。



「お、大きい足跡。」

慣れ親しんだ森の中で、彼女たちはずんずんと歩く。

森に少し入った彼女たちの目の前には、大きめのクマの足跡があった。

「近いみたいね。」

彼らは、能力を使う準備をする。そして、現れたのだ。

「ああーーーー。あっちに見え、、、こっちに向かってきますう。」

「オッケー!!!恋は、私の後ろに隠れてて!!!!!」

本村が、熊に対して一番前に出る。

熊は、人間たちを見つけると、猛烈な勢いで突進してきた。横にあった木を、蹴りでなぎ倒しながら。

「さあさあ。始まりましたよ!!!!!」

そういって、タブレット持ちの彼女は、タブレットを素早い手で操作した。どうやら、情報などをうちこんでいるようである。

「真姫は、その体格で熊を殴って!!!!しおりは土の壁を作って!!!!!恋は後ろで逃げる道を確保!!!そして、熊の援軍がやってこないか見てて!!!!」

「「「了解。すみれ。」」」

指示の通り、彼女たちは動き出す。


真姫の前に、しおりが作った土の壁が現れる。

「ありがと、しおり。」

熊はこっちからはよく見える。

「行くよ!!!!!!」

彼女の足が、壁の横から入ろうとしてきた熊の手をキックする。熊の手はぽっきりと折れてしまった。

「あれ?そこまで強くなったりする?」

首をひねる。しかし、その直後、熊のもう片方の手が土の壁を突き破った。

「え?」

クマの腰がうなるように回転し、足が彼女の腰を襲った。

「うぐ!!!!!!」

彼女は、おそらく並大抵の木ならすでに折れているであろうキックを食らい、3mほど後ろに飛ばされる。

「やるじゃん。」

ただ、彼女は何もなかったかのように起き上がる。

「目つぶし。」

しおりは、その間に土を使って目をつぶしていた。

「眼、早く開けないと危ないよ。」

彼女の声は、急所にけりを食らって倒れた熊には届いているのだろうか。

ともかく、圧勝ではあった。


「コラー!!なんべんいったら、勝手に山に入ったらいかんというのが、わかるんじゃ!お前たち!」

少し寂しい頭に、迫力のあるダミ声。典型的な目玉おやじである。こちらも、また絶滅危惧種かもしれない。決して保護しようとは思わないが。

「えー。だって、人喰いグマが出たって言ってたから、、、、」

店の中に座っている4人のうち一人が、不満そうに愚痴をこぼす。

「なおさら危ないじゃろうが!!」

「大丈夫だよ。私たちには、能力もあるし。」

ほら、と。彼女が指さした先には、息絶えている大柄な熊が倒れていた。

ああ、またか、という言った風に目玉おやじは頭を抱えた。

「どう言ったらやめるんだ、お前たちは。」

少女たちのうちのさっきとは違う一人が、

「だって、町に出たらおばあちゃんたちも危ないし、、、」

少し無表情な顔で言った。

「もう高校生になるというのに、、、、小学生のころとまるで変わらないじゃないか!!!!!」

「なに?一昔前の話みたいに女だから守られるべきだ、、、とでもいうの?」

「そんなことは言わん。だがな、、人には専門というものがあるのだ。うちは肉屋だが、野菜はうらん。逆に八百屋は、肉屋を売らんだろう?それと同じことだ。」

クドクドと同じような説教が続いた。


「くそあのくそじじいのせいで、宿題が終わらねえじゃねえか。」

「まあまあ、すみれちゃん。心配してくれるんだしねえ。」

熊は、肉屋のおじさんに捌いてもらって肉をもらっていた。

「しかも、2割ぐらいの肉を持って行ってよお。しかも、あいつが持って行った部位、高いとこだぞ!!!!!」」

いつものような悪口に、4人は、笑い声をあげていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ブクマと星評価を頂けると、モチベーションがぐぐーーんと天まで上がります。コメントもどしどし送ってください。

追伸一話でコロナ後の世界観と、能力について説明するタイミングを逃してしまいました。次話ですべて解説しようと思いますので是非、お読みください。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る