第5話:二人三脚と青春
アレクソンさんとの二人三脚は正直とてもやりにくい。身長の差がすごいし、あまり喋らないというか喋ることができなさそうだし。
ここは私が頑張るしかないと気合を入れているのはいいんだが、二人三脚で頑張るってなんだ?w ___とそんな事を考えていると、
「ちっちゃいね」
とアレクソンさんがぼそっと呟いた。
「ちっちゃい?」
思わず私が聞き返す。
「あ‥‥きかれ、てた‥?」
とこちらを見てくる。
「全体‥、的に、‥‥女‥‥の子、みたい‥に、ちっちゃいな‥、って」
(ドッキィィィィィィィィィィィィーーー)
心臓がばくんと跳ね上がった。やはりバレてしまうのだろうか。アレクソンさんは私の手を掴み、彼自身の手のひらと合わせていた。
「ほら、やっぱ‥り、小‥‥さい、でしょ‥?」
と笑いかけてきた。
確かに、私の手の
すると、先生が笛を鳴らし、大声で言った。
「各自二人三脚の練習をしろ!来週は体育祭だからな!しっかり練習するんだぞ!」
(ゑ??????????????)
私は驚きのあまり硬直した。体育祭なんて大事な行事が来週にあるんだって?お兄ちゃん完璧に出れないやん乙。じゃなくてなんでこういう大事なことを言ってくれないのかなぁ(#^ω^)
しかしちゃんと練習はしないといけないので真面目にやろうと思ったのであった。
「掛け‥声‥‥出、せる‥‥?」
とアレクソンさん。この人真面目なのかもしれない。
「は、はい!まずはアレクソンさんは左足を出していただけますか?そして次に右足。私が1、2、1、2と声をかけるので!」
「わか、‥った‥!」
ふおおおおおお!ちゃんと真面目に授業できてる!すげぇ!
他のやばい奴らと違って真面目で普通なお方だ!この学校では貴重だ!(多分)
授業が終わる頃にはかなり速いスピードで走ることができるようになった私達は、なんとなく分かち合えた気がした‥‥‥‥‥‥‥‥のだが‥‥‥‥‥‥‥‥
授業が終わり、着替えたあと、なぜかアレクソンさんに呼び出された。よくわからないが真剣っぽい。
すると、彼は突然言った。
「水瀬‥‥くん、さ、‥‥今日、おかし‥‥いよ‥‥」
(((ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ!?)))
「さす、が‥に、こんな、に小さ、くな‥‥かった、し。 敬、語も、あんな‥‥に、丁寧、じゃ‥なかった、、、」
(バリやべぇ)
「き、み‥‥水瀬真琴くん、じゃ‥‥ない、でしょ」
彼は日光に照らされキラキラと輝いて眩しい瞳でまっすぐこちらを見ていた。
言い返す言葉を探すのに数秒かかっただろう。沈黙が続き、導かれた答えが__
「あ!ごめん!授業始まっちゃう!先に行っとくね!」
「え、ちょ‥‥待、、、っt__‥‥」
私は見せたことのないような俊足でアレクソンさんを振り切った。額から汗が出ている。とりあえず彼には注意してこの学校を乗り切ろうと決意した。
そして昼食のお時間。楽しくご飯を食べようと思ったのに‥‥
アレクソンさんの視線が気になりすぎてご飯に集中できない!ずっとこっちを見てきてるし、なんか瞳孔開いてる気がする。
「真琴ー!飯食おうぜー!」
「えっ!?あ、うん!!!」
いきなり北条さんにクソデカボイスで呼ばれ、思わずびっくりしてしまった。すると、
「まこちん油断してたねー?」
と東雲さんの声が後ろから聞こえ、振り向こうとするとお腹を掴まれ、揉まれた。
「うわぁ!?くっ、、、ふふっ、、、、やめっ、、」
「真琴は腹がまだ効くのか。若い身体だな。」
と百瀬さんも悪ノリしてくすぐってくる。北条さんもだ。くすぐったくて何も考えられない。
「おーいそのへんにしたれや、顔まっかっかになっとるぞ。」
と隣のクラスから関西弁の男の子がやってきた。
「オー!龍!お前もくすぐるか?」
北条さんたちは目を輝かせているが、その空きにダッシュで階段まで行き屋上へ私は向かった。
「あ!まこちん逃げた!」
「龍が私達を止めるからですよ。」
「うっせ。自業自得やろがい。」
と最後に聞こえた会話がこれだった。その後私は息を切らせて屋上へたどり着いた。振り切ったと思ったが、相手は運動部の男子。流石に無理だった。私に追いついてきたのは北条さん。私はくすぐられないように身構えをした。しかし、北条さんはくすぐる素振りをせずさっきまで聴いていた声より一オクターブ下のだみ声で、
「お前らしくないな、くすぐられて抵抗すらできないなんて」
といった。
私は一瞬思考を停止した。
あんなに明るくて優しそうな陽キャの北条さんの雰囲気が一瞬で変わった。空気が凍りついた気がした。腰を抜かしそうなほど威圧感がすごく、よくわからないが、オーラが凄かった。
そしてドタドタと足音がして、
「たっだいまー!」
と東雲さんと百瀬さんが顔を出すと、
「おっかえりー☆」
と表情がケロッと一変し、元の北条さんへ戻った。
私が見た北条さんはなんなのか、それを知るのはまだ先のようだ。彼がこちらをちらっと見て、笑った気がした。
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