起床4

 特に最後のが今恋愛を紐解くにあたって全てに差しあたる大問題であったのは間違いない。同性だ同性。同姓じゃなくて同性。あなたと私、女と女って感じ。


 しかし、その辺全て承知で私は自分の親友に気持ちを伝えた。


 高校に入学し、出会った彼女をいつしか親友と呼ぶようになり、親友として時間を過ごしてく内に、彼女が私の事をもっと好きだったら良いのになぁと考える頻度が日に日に増して、そこで抱えるコレが恋慕だと気付いてしまった。しまったのだ。


 そして友愛を持って一緒にいるだけでは得られない心の結びつきや触れ合いを望み、恋人という形で隣にいる許可を貰おうと決心して告白をしたのが三日前の金曜日、というわけ。


 それから親友とは会っておらず、スマホでのやりとりしかしていないので、月曜日の今日は私達が、その、噂の、恋仲の、か、カップルというやつになってから初対面ということになる。故にこの反応、このテンション、この体たらく……とまでは別に言わない。私は親友の前でまだ何もやらかしてなどいない。まだね。


 ……まぁ今後の予定は誰も知りうることは叶わないので、前向きに自分の盤石な精神力を信じるとして、とにかく今朝は私にとって、いつもの朝とは捉え方がまるっきり違っていて、おそらくそれは人として、多感な高校生として、健全で当然の事であった。


 親友と恋人となってから初めての対面、そして登校。私が望んだ親友との形がいよいよ日の目を浴びることになる。だから今日は全てが記念であり、イベントであり、きっと今後忘れることの出来ない一日を今から親友と二人で刻んでいくことになる。だから、


「行こう」


 自分に語りかけ、扉に手を掛け、想いは駆ける。


 期待、喜び、焦燥、不安、持ち合わせている感情の全てがシェイクされてエネルギーが増大する。それらが内側から私の腕を突き動かし、玄関の扉は勢いよく外側へ開かれる。


 一歩外へ出ると、優しく頭を撫でるような陽光が視界に入る世界の全てを照らし、花と緑の匂いが風に乗ってそっと通り過ぎる。そんな静謐な春の気候が漂っていた。


 親友……ではもうない。『恋人』と会うにはもってこいの天候に、胸の中で差し込む希望が、より一層強靭なものとなる。


 大して広くない庭の向こうで、門の前に立ち私を待つ女の子の姿を想像し、足は考えるより先にその恋人の元へ向かい出す。


 そして口を開き、いつものように「おまたせ」と言いながら、いつもとは違い恋人に手を差し伸べるために顔を上げたところで、止まる。


 足も手も首も眼球も呼吸さえも、その場で止まる。


 しかし声帯だけは活動を止めず、喉からは「えっ」と短い音が鳴っていた。

 

 

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