第3話 「冬月」
この家にきて 2 カ月が経ったころ、
さすがにこのままではまずいと思ったわたしは
男が仕事から帰ってくるのに合わせて夕飯を作るようになった。
出過ぎたマネかな・・とも思ったが
わたしの作った拙い料理でも
「うん・・なかなか上手いじゃないか」
そう言いながら残さず平らげてくれる。
食卓を囲みながら
二人の間では次第に会話がうまれるようになっていた。
「あの・・・一つ聞いていいですか?」
「ん? なに?」
「言いたくなければいいんです。あの写真の方なんですけど・・」
ずっと気になっていた。
キッチンには、綺麗な女性の写真が写真盾に飾られている。
「ああ・・女房だよ。涼子っていうんだ」
わたしの心臓が音を立てて脈打った
「え・・・・わたしも・・亮子です」
───────────────────
「あのさ・・明日、ちょっと一緒に来てもらえるかな?」
男から何かを頼まれるのは、初めての事だ。
どこに連れていかれるんだろう?
一抹の不安はあったが、今のわたしには断る理由などない。
その日の夜は久しぶりに眠れなかったけれど、
ここにくる前の眠れない夜とは明らかに違う。
レースのカーテンを開けると
冬の空に下弦の月がぽっかりと浮かんでいた。
まるで、
わたしを寝かしつけてくれるように・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます