テーマ「肋骨」の作品プロット

犬狂い

プロット(草案)

 外務省庁の会議室に召集された六人。

 主人公はその顔ぶれを見て、年齢も性別も、そして職種すらバラバラの六人だなと思った。

 その会議室に、彼らを招集であろう外務省の役人とその秘書だろうか、帽子を目深にかぶった女性らしき人物が入ってくる。

 その役人と秘所が自己紹介してくる。

 その後役人に促され、テーブルの右手前から集められた六人は自己紹介していく。

 名前と年齢、現在務めてる地域と職種だ。

 まず最初に自己紹介したのは40代の男性の東北の大学の古生物学者。白髪交じりの柔和そうな笑顔を浮かべる人物だった。

 次は30代の自衛隊曹長。関西の基地勤務で、こちらは対照的に厳めしい顔つきで、がっしりしたいかにも自衛隊員といった感じ。

 次に20代の女性。職種は中部地方の大学の言語学者。こちらは短髪で、どこかおどおどした雰囲気の女性だった。

 次に主人公の番になり、20代後半の公安課の刑事だと自己紹介した。関東の警察所属である。

 五人目は30代の女性民俗学者。九州の大学教授でもある。落ち着いた女性であまり口数は多くはなさそうだった。

 最後の一人が地層学者。50代でこの中で最年長だったが自衛隊の男と変わらず大柄でがっしりと引き締まった身体をしていた。

 やはり主人公が思った通り職種も在住地も年齢もバラバラの六人。

 どうしてこんなまとまりのない人間が一堂に介したのか、役人から説明があるかと思われた。

 だが役人が秘書に部屋に運び入れるように言ったのは、ガラスケースに覆われた標本がひとつ。

 そのガラスケースの中には大きな骨が一本入っていた。

 大きさからして、なにかの恐竜の大腿骨かと主人公は思った。

 しかしどうして恐竜の化石なんて。

 そう思っていると、役人が言った。

「先日出土したこちらの化石が本日皆さんを呼んだ理由となります……」

 そして古生物学者の男の名が呼ばれる。

「教授、こちらのサンプルを事前にお送りいたしましたが……分析結果をここで皆さんにお聞かせいただきたい」

 教授はなぜか顔中汗びっしょりで、ふらふらと会議室の前に出て行ってホワイトボードとペンを渡される。

 初老の古生物学者はまず前置きした。

「皆さん、なぜ私たちがここに集められたのか……私にはわかりません。ただ今回のこの骨の分析結果に私自身、疑念しか抱いておりません」

 主人公を含め、その言葉の意味はわからなかったが、男は続けた。

「これは私の戯言ではなく、あくまで科学機器を使った測定・分析の結果だと思ってください」

 男は説明を始めた。

「ところで皆さん、このサンプル……化石……と呼んでいいのか。この骨は、元の生物のいったいどこの部位だと思いますか?」

主人公が答える。「大きさや太さから言って、大腿骨でしょうか?」

 主人公の一言を皮切りに、言語学者、地層学者からほかにも様々な意見が飛ぶが、古生物学者は言う。

「これは……なんらかの生物のアバラ……肋骨です」

 驚く主人公たちに古生物学者は続ける。

 大きさはともかく形からいってなんらかの生物の肋骨であるらしい。

 ただいくつも奇妙な点があって分析結果を教授自身信じられないらしい。

「私は最初に見たとき形からこのサンプルを肋骨だと思い……まず肋骨がこの大きさだとすると、元の生物の大きさは15~25mほど」

「に、二十……」誰かの驚きの声が漏れる。

「もちろんこんなに巨大な生物が地上を闊歩している可能性は低いでしょう。そこで私は……」

 最初の推論として、海生生物であるという可能性を探ることになった。

「しかしレアビタンやモササウルスなど大型の古生物の骨と比べましたが、構造がまったく違いました」

 いくつかの例をあげて古生物学者は説明する。

 しかし骨の太さや、関節部につながると思われる部位の柔軟性、また骨密度などから推定して一番近い生物種を推察した。

「この骨に最も近いのは……翼竜です」

「翼竜!?」

 空を飛んでいたのか。

 こんな大きな骨を持った、20mを越すほどの翼竜なんているはずがないと皆が思った。

「私もそう思いましたが、新種という可能性もあります。また鳥の骨格といっても、この大きさで空を飛んでいたわけではなく、巨体かしたため翼などが退化して地上歩行で暮らしていた可能性もあります」

 皆それでいったん納得した。

 そこで古生物学者はまた前置きした。

「これは機器の故障でもなければ、私のミスでもありません……しかしここでの発言は私の教授職としての公式の発言としてはとらえないでください」

 それからとんでもないことを言った。

「このサンプルを放射性炭素年代測定法にかけました……ご存じの方もいるでしょうが、この測定法でおよそ何年前のものか推測できます」

「何年くらい前の物だったんですか? 7000万年ほど前?」

 地層学者が言った。

 古生物学者は静かに首を振り、言った。

「0年です」

「は?」

「0年。つまり測定不能でした」

「それは機器が検知できなかったということですか?」

「いえ、地層学者のあなたならわかるでしょうが、放射性炭素年代測定は物質内の炭素が年月の風化でどれだけ崩壊したかを逆算することで、その動植物が生まれた年代を推測するというものです。ですが検査結果では炭素の崩壊は検知不可能なほど微弱か、もしくは崩壊が起きていなかった」

「つまりどういうことですか……?」

 主人公が問いかける。

 そこで古生物学者が震える手でメガネをささえて、汗びっしょりになりながら役人に言った。

「このサンプルは……最近生きているサンプルから採取されたものですね?」

 会議室に衝撃が走る。

「そのとおりです」

 役人がそれを認めたことで、さらに会議室の面々が驚いた。

「こ、こんな巨大な生物が……ゾウよりデカイぞ!?」

 いままで発言が許可されていなかったのか沈黙していた、さすがの自衛隊員でも驚きの声を漏らす。

「あ、あの……それよりも私のところに来たこの未知の言語は!? ひょっとして、その生物がいる土地の……」

「いや、こちらの質問が先です。こちらも地層サンプルをもらっているんだが……」

 会議室は学者連中の叫び声に埋め尽くされた。

 それを役人はまあまあとなだめ、ひとつの映像をスクリーンに映した。

「皆さん、ここから先の映像は他言無用です」

 役人はそう言ってから映像をスタートさせた。

「……!」

 そこには誰も見たことのない、しかし幾度も映画で見たような光景が広がっていた。

 自衛隊と思しき部隊が、翼竜――ドラゴンと戦っていたのである。

 最後は火砲を何発も受け沈んでいくドラゴン。

 もう誰もなにも言えない。

 だが主人公はそれでも重い口を開いた。

「な、なんですか! あれはいったい……」

 そこで役人は、主人公の話を無視して淡々と語り始めた。

 はじめは三か月前にとある山中に見つけられた、空間の亀裂だったらしい。

 現地に政府の調査員を派遣すると、それがどうやら次元の亀裂で事故で調査員がその亀裂に落ちたらしい。

 運よくその調査員は亀裂から救出されると同時に向こうの情報がもたらされた。

 次元の先は異世界だったらしい。

 動植物は見たこともない姿かたちをしていたが、空気は地球の物と同じく息を吸うことはできたらしい。

 そこで日本国政府は極秘に先発の自衛隊を調査に送り出した。

 そこで散発的な戦闘が起こって、撮影されたのが先ほどの映像だという。

 学者のひとりが怒って、こんな茶番に付き合えるかと帰ろうとする。

 そこで役人はいままで黙っていた秘書らしき人物の帽子を取るように言う。

 その素顔はトールキンの本に描かれていたエルフという種族そのものだった。

 役人は言う。

「我々先発の自衛隊の任務を失敗した。大規模な戦力は向こうの凶悪な生物を引き寄せるらしく、大部隊を送り込むことは不可能だ。そのため向こうの調査のためそれぞれのプロフェッショナルであり、親族や身内のいない君たちを異世界に送るプロジェクトが発足された」

 こうして主人公たちはエルフ先導の下、異世界を探査するという任務を日本政府から与えられたのであった。


 次元のはざまを前に気合を入れる主人公たち。

 これからどのような困難があるのか。なにが待ち構えているのか。

 不安と期待の中、物語は終わる。

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