第5話
「ほら、HRすんぞー。席につけー」
キーンコーンと鐘がなり、教師が教室の中に入ってくる。その音を皮切りに席を離れていた生徒が席につき、全員が正面を向いた。
「ふんふんふん……よし、初日だが全員いるな、感心感心」
ふむふむと出席を付けながら頷く。そこに、一人の生徒が手を挙げてこう言った。
「九条せんせーがここの担任ですか?」
「ん?いや、別にそういう訳では無いぞ。俺が去年一年二組の担任だったからとりあえずだとりあえず」
彼の名前は
ちなみに、暁斗の去年の担任の先生でもある。
「……げ、立川兄妹今年は同じクラスだと?」
「ちょ、なんスかその言い方」
「いや、だってお前らところ構わずイチャつくじゃん。これからその頻度が増えると思ったら頭が痛てぇ」
「イチャついてないです。ただのスキンシップですよ」
「……イチャつ?」
「……お前、それまじで言ってんなら一度病院に行くことをオススメするぞ」
智和の言葉に、暁斗とエミリ以外の全員が頷く。全員の反応に「解せぬ」と呟いた暁斗だが、智和はゴホンと一度咳払い。
「それじゃ、今から始業式だ。全員、体育館に移動しろ」
長月学園では、一々廊下に並んでから移動するのではなく、各々が自分で移動して、集合場所で並ぶということになっている。
「んじゃ、行くか暁斗」
「おう」
前の席から賢治か声をかけてきたので、頷く。チラリとエミリの方を見ると、エミリはエミリで違う友達に誘われていた。なので、今回は別行動かと思ったらクイッと袖を引かれた。
「アキト」
「どうした?」
袖を引いた人の正体は当然エミリ。その背後には先程エミリと喋っていた女子がいた。
「私のFreu――――トモ、ダチ、紹介する」
「はろはろ~、よろしくね立川くん。エミリちゃんと仲良くさせてもらってる、
「花見坂……あぁ、聞いたことある。俺がいない時の翻訳係」
「エミリちゃーん!?お兄さんに私をどんな紹介してたの!?」
「むぎゅ!間違ってない!」
花見坂花音。茶髪のショートカットに、黒色の瞳を持つ少女である。
幼少期のころはドイツに住んでいた帰国子女である。去年、エミリと同じクラスになり、ドイツ語を話せる事から友達となる。エミリからしてみれば、学園では、暁斗の次に頼れる存在である。
そんな彼女は、エミリのほっぺたにぺちーん!と手を持っていくと、そのままこねこねとほっぺを弄る。暫くはなされるがままだったエミリだが、流石に嫌になったのか暁斗の影に隠れて威嚇をする。
「フシャー!」
「あまり、俺の家族を虐めないで欲しいな」
「安心して、スキンシップよスキンシップ」
パチッ!とウインクを綺麗に決めた花音。何やら星が飛んできたような気がするので、ペチンと手で払い落とした。
「それでエミリ。態々呼び止めたのはなんだ?」
「……あ、
「私的にはエミリちゃんと立川くんが普段どんなことして過ごしてるか非常に興味があるの。それが知りたいからお願いしちゃった」
「別に、俺はいいけど……賢治はどうだ?」
「ん?俺も別に構わないぜ」
「決まりね、それじゃあ行きましょうか」
こうして、四人は移動を開始した。もちろん、エミリは暁斗の腕に軽く抱きつきながら。
「本当に、エミリちゃんは立川くんのこと大好きよね。見てるだけで伝わってくるわ」
「だな、どうやってそんなに仲良くなるか教えて欲しいわ」
賢治は二つ年が離れた妹がおり、絶賛反抗期中である。
「どうやってって……そんなこと言われても……」
「うーん……
「スポ……?」
「雰囲気からして自然とって意味かしら?全く参考にならないわ」
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