第4話

 奈々美のことを見送った後に校舎の中へ入った二人。長月学園の校舎は三階建てて、一年生が一階、二年生が二階、三年生が三階を使用している。


 二人のクラスは二年二組であった。


 ガラララ、と教室のドアを開け、二人が姿を表すと、反応は大体二つに別れる。「ついにきやがったなこのバカップルが」と、「いつもご馳走様です」の反応である。


 前者は大抵は男子の視線である。エミリはやはりどこに出しても恥ずかしくない美少女であるため、そんなエミリとイチャイチャしている暁斗の事が羨ましいのである。


 後者は女子である。二人のイチャイチャを眺めて脳内で私もこんなことされた〜いという妄想を頭の中で張り巡らせている。


「……お、席もとなりか。運がいい」


「Ja。アキトの近くで嬉しい」


「そうか。そう思ってくれるなら俺も嬉しいよ」


 ちなみに、この二人の心の描写をするのならば、エミリが「恋人であるアキトと近くに入れるのが嬉しい」で、暁斗が「嬉しがってくれているから良かった」と言った所だろうか。


「いよ、暁斗。今年もよろしくな」


「賢治か。よろしくな」


「ケンジ?」


 アキト達が席に座る際に、声をかけてきたのは天河賢治あまかわけんじ。茶髪の髪で、爽やかイケメンといった所だろうか。中学生の頃からサッカー部に入っており、県代表選手にも選ばれるほどの実力者。


 更に勉強も出来るので、かなり女子人気が高く、毎年バレンタイン出もらうチョコは二桁を超える。


 そんな彼は去年、暁斗と同じクラスで仲良くしていた。仲良くなったきっかけは、賢治が頻繁に暁斗に恋愛相談を持ちかけていたからだ。


 エミリとまるで恋人同士のようにイチャつく様子を見て、好きな人を振り向かせるにはどうすればいいのだろうか、と特攻したのが一回目。別に、暁斗からしたら賢治の考えは的はずれなのだが、熱い意思に押された暁斗はそれを全力で支援することに決めた。


 そのかいあってか、無事、賢治はずっと好きだった女の子とようやく付き合えたと報告をしてきた。それ以来、暁斗と賢治は仲良くしており、賢治は暁斗に多大な恩を感じている。


「こいつは天河賢治だ。俺の友達」


「よろしく、立川さん」


「Ja。よろしく。アキトとFreund友達なら、私ともFreundだね」


「……フロ?」


 突如として出てきたドイツ語の意味が分からなくて首を傾げる賢治。


「ドイツ語で、友達って意味だ」


「あぁ、なるほど……ごめ、カタカナ発音してくんね?」


「フロイントだフロイント」


「OK……あー、フロイントとしてよろしく」


「Ja」


 自己紹介を終えて、席に着いた二人。賢治は前の席なのでそのままくるりと体を回転させて暁斗を見た。


「お前、春休み何してた?」


「特に何も?普通に家でのんびりしてたり、エミリとお出かけとかしたり――――」


 春休み明けとあって、話題は必然的に春休みについて。隣の方でも、エミリの方にも去年同じクラスメイトだった女子がわざわざエミリの所にやってきて話をしている。


「エミリちゃん。私ね、この春休みの間に男の人を誘惑する方法について調べてきたけど……聞く?」


Ich möchte hören!聞く


「おっふドイツ語……いやいや、多分これはフィーチャリング的に聞きたいかな……?では、教えてしんぜよう!」


 しかし、話している内容はある意味物騒であった。

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