第5話 講義

京都旅行 一日目の夜


茶道の離れとは別の離れに案内された。

そこは、和風の建築だがコテージのように独立した一つの家になっていた。


キッチンもお風呂も台所もあった。


その離れに慈照君と僕は布団をしいて、就寝するところだった。


「さすがに、今日は疲れたなぁ。明日も早いしもう寝るわ。おやすみ。」


慈照君はそう言うと、2分もせず寝息をたてていた。


「寝るの早っ。」


僕は一人今日一日の反省をする。


僕の目は、呪師の人にとっても特別な力を持っているようだ。

見識は2級と言っていた。


明日は、呪術基礎という講義をお爺さんがしてくれると言っていた。


朝5時起きなのは、正直驚いたが。


ちなみに今は、20時半だ。21時には寝なさいという暗黙のルールであろう。


明日の早起きと勉強のために、しっかり睡眠をとらねば、目をつむって深呼吸しているとどんどん意識は薄れ、夢の中に入っていった。


京都旅行 二日目


コココッコケコッコー!!

コココッコケコッコー!!


朝5時。どこからか鶏の鳴き声がする。


あれ?鶏とかいたっけと思いながら、目を覚ますと慈照君のスマホのアラームだった。


「おはようさん!」


慈照君はすでに作務衣に着替えていた。

めちゃくちゃ早起きのようだ。


「どや。鶏の鳴き声を起きるのええやろ。」


良いか悪いか置いておいて、朝早く起きれたのは助かった。


「はい。聖護の分もあるで。」


僕の分の作務衣も渡してくれた。


「よし。顔洗って支度や。5時半には寺にいくで。」


慣れた感じで、慈照君は身支度をする。


朝早いので、まだ瞼が思い。台所で顔を洗い気持ちを整える。

今日は大事な講義の日だ。集中するぞ。


両頬をばちんと叩く。


「ええ。気合やん」


慈照君が心なしか嬉しそうだった。


そして、お寺に向かう。


「まずは、雑巾がけや!!」


そのまま、トイレ掃除、庭掃除と朝からバタバタと掃除を終わらせた。


「朝の掃除、気持ちええやろ。」


たしかに、なんとも言えない心地良さがあった。


太陽もまだ日差しが柔らかい良い角度で差し込んでくる。

温かい光が僕を包む。空気も透き通っていて美味しい。


「気持ちいいね。」


心から穏やかな気持ちになる。


「よし朝飯や!」


離れに戻るとすでに朝ご飯の準備がされていた。

朝から良い運動をしたこともあり、とても美味しそうな食事に感謝した。


朝ご飯はTHE和食であった。


麦ごはんに味噌汁、納豆にお浸し。

一見質素だが、十分においしく健康的な感じがした。


毎朝パズー定食の僕には新鮮だった。

これくらいの食事なら僕にも準備できるぞ。

一人、朝食の改善を決心した。


朝食を食べて、一息ついたところで、

「よし講義の時間や。」


慈照君が立ち上がり、寺に向かう。

僕もそれについていく。


寺では、江戸時代の寺子屋の挿絵のように長机が用意されていて、僕と慈照君はそこに座った。


間もなく、お爺さんがやってきて、講義を始めると前の席に座った。


「それでは、講義をはじめる。」

「まず、呪師基礎学だが、呪師が存在するのか。」


・・・


お爺さんの話が長くなったので、以下に要約する。


まず、なぜ呪師が存在するのかは、この世界の陰陽のバランスを保つためである。


どんな人間にも良い側面と悪い側面があり、善にも悪にもなりえる。


人には煩悩があり、その欲望に終わりは無い。人は自分を律しない限り、心は穢れていくようだ。


世間に悪の心【穢れ】が満ちていくほど、争い、貧困、差別と世の中が悪い方向へ走っていくのだ。


精神世界の【穢れ】が、現実世界に影響を与える。その最も最悪な例が戦争であり、疫病であり、天災である。


人が己の欲や憎しみを増大させればさせるほど、我々はその大きな報いを受けるのである。


人の欲望を無くす事はできない。

せめて、世界がバランスを保てるよう呪師は【穢れ】を祓うのが役割なのである。


精神世界の【穢れ】は悪霊となり、現実世界に影響を及ぼし、伝播していく性質がある。ウイルスが人に感染していくように【穢れ】は憑るのだ。


そして、【穢れ】にもランクがあり、それを祓うために実力ある呪師が派遣される。呪師には階級があり、


「4級、3級、2級、1級、D、C、B、A、S」

プロとして活動できるのは、「D~」となる。


認定呪術になるには陰陽呪術高等学院:通称【いん】の卒業資格が必要となる。


そして、入学試験を受けるには認定講師の4級以上の実力があるという推薦が必要となる。


【いん】入学後。陰陽呪術連盟に登録して、そこから案件をもらうそうだ。

案件の難易度と達成度により、階級があがっていく。


ちなみにお爺さんは現役時代クラスSで活動していた呪師だ。実績を認められ【いん】の外部認定講師に任命されているようだ。


そして、呪師の評価制度は以下3つとなる。


知識、見識、丹識の三つだ。


知識はそのまま学問である。

業界におけるルールやマナー。また呪術や式神の種類。印の数などである。


見識は、呪力を感じ取る能力のようだ。

この見識は人それぞれ扱う五感も違うようだ。

眼、鼻、耳、肌、髪 各々が得意なもので呪力を感じればよいとの事。


もちろん、僕の場合は眼に圧倒的なアドバンテージがある。


そして丹識である。

丹識は呪力の総量である。この呪力が多ければ多いほど、強力な呪術が扱える。

強力な呪術とは、威力、範囲、効力の長さなどにより★の数で分類される。

★が多い呪術ほど、強力であり、強力な呪術が扱える事も評価の一つだ。


そして、最後に式神基礎論だ。


式神には、5種の特性と十二支の属性がある。


5種の特性は木、火、土、金、水に分けられる。

そして、十二支はそのまま子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥だ。


外見は必ずしもこの十二支属性にあてはまる訳ではないらしい。

狐虎のように十二支属性が寅でも外見は狐という事もある。


式神には3つの能力があり、それぞれ得意な能力がある。式神の得意な力と呪師の得意な力が合うかは運次第。


式神の型

1.憑依型

2.幻象型

3.具現型


それぞれ詳細の説明は、その時にするようだ。とりあえず、3つの型がある事を頭に入れておくとの事。


また、式神は呪力を喰う事で強くなるようだが、それも詳細は次回になるとの事だった。


呪師基礎概論は以上のようだ。







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