第8話 ラッキースケベをください

「いい加減にぃ……くたばりなさい、よッ!!」


光剣と刀が幾重にも音を響かせる。


サーヴァントにも負けず劣らずな激しい剣劇が始まって、もうどれくらい経っただろうか?


ワシゃ本気で疲れてきたよ。


「どうしたぁ?息が上がってるぞ小娘ェ……所詮はこの程度か。貧弱、貧弱ぅううううううううううううう!!」


「あんたも人のこと言えないでしょうが!」


仰る通りで。


先程からずっと、俺たちはこうして刀と剣で火花を散らし続けていた。


武器を振る速さが互角なら、一撃あたりの重さも互角。そして今のところスタミナにも大差は無い。


身体的なスペックはほぼ変わらないと言っていいだろう。


異なる点があるとすれば二つ。


「スティング・レイ!」


「不洞式神回避の術!」


まず一つ目は、エイミーが攻撃型なのに対し俺が防御型だということ。


別にタイプとかステータスの問題じゃなくて、要するに俺があまり攻撃に出ていないということだ。


なんていうか……いくら超人で化け物で敵といっても、美少女相手に刀を振り回すのは非常にはばかられる。怪我でもさせたら大変だし。


勿論そんなことを考慮している余裕なんて無いのだが、理屈では分かっていても、どうしても斬りつけることが出来ない。


これぞフェミニストの極み。


で、二つ目。


「ブリッツ・カノン!」


向こうは心力とやらによるファンタスティックな攻撃が使える。これは大きな差だ。


こっちは黒若の手により作られた、あくまで科学の成果。魔力とか心力とか、そんなもんが一切関わっていない為に攻撃手段はこの日本刀一本しかない。


故に距離が離れると不利。めっさ怖いけどこうして近くで斬り結んでいる状況が一番望ましかったりする。

 

そしてエイミーもそのことは理解しているようで……というかまだ俺が何らかの能力を隠していると信じているらしく、頻繁に距離を開けては遠距離攻撃をバンバン撃ってきやがる。


能力を使わざるを得ないような状況まで俺を追い詰めようとしているのだろうが、そんなことをしても無駄だ。


出来ないものは出来ないんだよ、バーロー。


「この……強情な奴ね!頑固な女は嫌われるわよ!」


「構わんよ」


皆の前では猫被ってるから無問題だし。というかそれ以前に頑固な訳じゃないし。本当に使えないだけだし。


「ふん、その減らず口がいつまで続くのかしらね!!」


エイミーが、また遠距離攻撃の動作に入った。どっちかっつーとこいつの方が頑固者じゃね?


しかしこれ以上好き勝手されては面倒だ。ここは向こうの攻撃よりも先に接近し、技の出を潰すべきだろう。


俺は姿勢を低くして足元の屋根を蹴り、懐に潜り込むような形で、エイミーの正面から見てやや下側に体を滑り込ませた。


「その短剣、貰い受ける!!」


光剣の発生元たる謎の短剣。それを破壊すべく俺は刃を立てるが、


「甘いッ!!」


「あばばばばっ!?」


顔面に迫っていたエイミーの膝蹴りが俺の行動を阻害してくる。咄嗟に海老反りになったおかげでギリギリ回避できたが、貴重なチャンスを逃してしまった。


一転して隙ができた俺に光剣を振り下ろしてくるエイミー。


「なんの!」


海老反りになる勢いを利用して、ブリッジの要領で俺は背後にある屋根に手をついた。


と同時に両足で順に足元を蹴り飛ばし、姿勢は片手倒立に。足の爪先が真上に来たところで更に腰を捻る。


タッチの差で空を斬る光剣。体操選手も顔負けな腰捻りバック転を披露し、俺は事無きを得た。


脇腹の数センチ横を光剣が掠めた時には流石にヒヤッときたけどさ。

 

よし、今の技は不洞スパイラルとでも名付けよう。我ながら厨二が酷い。


まぁ二度と使う機会が訪れないのを祈りたいね。怖ぇし危ないし。


不洞スパイラルを済ませ体勢を立て直す。が、まだピンチは終わっていなかった。


「ブリッツ……」


俺が回避している僅かな隙にエイミーは遠くへと移動し、また遠距離攻撃を放とうとしている。


うわ、本気でうぜぇ。例えるなら、空の王者とか言われてたくせに新作で火球ばっかり吐くようになった低空の王者リオ○ウスのようだ。


生まれ変わった奴のウザさは半端じゃない。


「カノン!」


なんてアホなことを考えている間に放たれる光の球。


避けようと思えば避けれる。弾こうと思えばそれもまた可。


だがいつまでもそんな対応をしていたらキリが無い。ここは一つ、こっちも遠距離技があることを知らしめていい加減自重させたいところ。


……うん、それが出来ないから困ってんだけども。


まさか刀を投げる訳にもいかないし、魔力とか銃とかを使わずに攻撃を飛ばすなんてこと……、


「いや、待て」


ある。あるぞ。実行可能かどうかは分からんが、刀一本でも遠くを攻撃できる技を俺は知っている。

 

「おいエイミー……お前、飛ぶ斬撃を見たことあるか?」


「は?」


返ってきたのは素っ頓狂な声。まぁいい。とりあえずこの技を使うからには言ってみたかっただけだ。


光球が着弾するまであと僅か。俺は刀を左手だけで握り、もう片方の腕は左手を支えるような形で前腕部分に沿える。


そのまま頭上に刀を構え、刀身を横向きに。


詳しい原理は作中には描かれていなかったから、やるべきは想像に従って、ただ全力で振り抜くだけ。


「一刀流……」


握る手、腕の筋肉に最大限の力を込める。柄がミシミシと音を立てたが、そこは変態が鍛えし名刀。握り潰してしまうような事態には至らない。


さあ準備は整った。


大きく円を描くように、そして描いた円を前方に押し出すように、高速かつ豪快に刀を振り回す。


ぶっ飛べ。


「三十六……煩悩鳳ポンドほう!!」


まるで金属をぶった斬ったかのような、鋭くも重い手応えが返ってくる。


切っ先が描いた軌道が螺旋状の斬撃を空気中に刻み、一昔の大砲を彷彿とさせる……いや、それ以上の破壊力を誇るであろう斬撃の砲弾を生み出した。


この技の名称は“三十六煩悩鳳ポンドほう”といい、某三刀流の剣士が一振りの刀で遠くまで斬撃を飛ばすために編み出した技だ。


本当に再現できるとは胸熱。


ゴォオオオオ!と派手な音をぶちまけながら、光球と煩悩鳳は衝突する。


俺の見立てでは相殺される筈だったのだが、なんと打ち勝ったのは煩悩鳳ポンドほう。光球を斬り裂いても尚、その勢いを止めることはなかった。

 

「こいつ、こんな隠し玉を……!?」


光球を破り、そのまま煩悩鳳はエイミー目掛けて一直線に突き進む。


ん?あれ当たったらヤバくね?


大事に至らないことを祈りつつ、しかし至らなかった場合を想定して俺は走り出した。


「舐めんじゃないわよ!これしきの攻撃で……リジェクト・シールド!!」


エイミーが光剣の先を前に突き出す。そこから半球状に輝く半透明なバリアらしきものが現れ、斬撃の渦を受け止めた。


衝撃はエイミー本人にも伝わり、5メートルほど後ずさったところで煩悩鳳が勢いを失い霧散する。


「どうよ、私の手にかかりゃこれくらい――」


「楽勝なんですね、分かります」


「ちょ――ッ!?」


エイミーが気付いた時には、俺は既に接近し刀を振り始めている。


やはり念を押しといて正解だった。防御後の今なら確実に一撃を叩き込める。


今度こそ貰った。


「キィェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエアッ!!」


無防備な短剣に向けて、俺は全力で刀を振り下ろした。これさえ壊してしまえば俺の勝ちだ。


刃が目標を捉えるまでコンマ1秒と掛からない。一瞬よりも短い、まさに“刹那”という時間の中、


「はッ!」


何かが俺の太刀筋を側面から叩いた。僅かに逸らされた軌道は短剣の僅か数センチ隣を通り過ぎ、結果的に俺の攻撃は空振りに終わる。


「……あるぇ?」


見れば、俺の刀に向けてエイミーが空いている右手を突き出していた。おそらくは咄嗟に心力を撃ち出して弾いたんだろう。


反射神経良すぎワロえない……。

 

過ぎた刃先が屋根に刺さり、慌てて引き抜こうとしたら屋根の端まで切れ目が走った。


怖っ……なんつー力で振り回してんだよ俺。こんな威力を生身の人間にぶつけたら絶対死ぬわ。マジで気をつけないと。


ここで唖然としている暇は無い。とりあえず仕切り直す為に俺は急いでエイミーから距離をとった。


もう遠距離攻撃は大丈夫だ。煩悩鳳の方が威力が勝ってるから、そう易々と撃ってくることもあるまい。


まぁアレすっげぇ疲れるんだけどさ。二本も三本も同時に撃つマリモの気が知れんわ。


「……お?」


次はどんな手で攻めてくるのか。慎重に様子を伺っていたが、エイミーは俯いたまま微動だにしない。


鬱のスイッチでも入ったか?


「……あんたさ、本当に私のこと舐めてんの?」


「別にペロペロしたいとは思わんが」


嘘です。あれで性格さえ良ければ今すぐペロペロし……いや何でもありません。


なんて茶化していられる雰囲気でもなさそうだ。


「さっきから私の武器ばっかり狙って……何よ?手加減でもしてるつもり?」


「いやいやいや、普通に考えてみろよ。これモノホンの日本刀だぞ?本当に斬られたら痛いじゃ済まないだろ。血ぃ出るぞ、血」


「コロネの時もそうだったわね。そういう気遣いは見下してるのと同じだってことが分かんないの?最低の侮辱よ」


「知るか。分かりたくもないわアホ。いいか、大怪我したり死んだ後じゃ遅いんだぞ。侮辱だの誇りだの威張ってる暇があったら道徳の授業受け直してこい」


こいつは大怪我をしたことがあるんだろうか?無いとしても普通は忌避するもんだろう。


臨死経験者の俺から言わせてもらえば、全く以って馬鹿げた感性だ。

 

「そういうことを言ってるんじゃないのよ。これは命のやり取りなんかじゃなくて、どっちが強いかをハッキリさせる為の真剣勝負。怪我の一つや二つ付き物でしょうが」


「お前な……矛盾してるぞ。真剣勝負ってのは要するに殺し合いだろうが。なのに“命を落とさない”なんて都合が良すぎるぞ」


あぁなるほど、ようやく判った。こいつは本物の“阿呆”なんだ。


簡単に言えば厨二病の子供。漫画やアニメなんかを見て「真剣勝負ってカッコイイ」とか夢見ているに過ぎない。


そしてこれは推測だが、おそらくこいつは今まで負けたことが無いのだろう。だから安易に「怪我なんて気にしない」なんて口に出来るんだ。


死なない程度の真剣勝負。つまるところスポーツのような感覚を戦場に持ち込んでいやがる。


「よし分かった、今度お前に聖杯戦争の外道シーン集を見せてやろう。それで勝負の何たるかを勉強してから出直してこいや」


まぁ本当に鬱になるかもしれませんけどね。いとワロス。


「へぇ……戦争経験者が語る言葉の重み、ってやつ?」


「いや、参加した訳ではない」


あんなのが実際にあったら怖くて逃げ出すっつーの。


「まぁいいわ。あんたが勝負に誠意を示せない軟弱者ってことはよく分かった」


「そうだろうそうだろう。そういうワケだから回れ右して今すぐ帰れ」


「だったら、勝負せざるを得なくしてやるわよ」


「会話が全く成立していない件について」


何故だ。今の流れだと俺に失望して帰るシーンだろう。どんだけ勝負したいんだよこいつ。


「あんたは私の武器を壊せば勝ちになると思ってるみたいだけど……」


左手に光剣。空いている右手を上に翳し、エイミーは言う。


「こんなものは、私のエネルギーを安定させる為の道具に過ぎないわ。これが無けりゃ光を出せないなんて、いつ誰が言ったかしら?」


翳した右手から、不安定ながらも剣の形をした光が現れる。


なんてこったい。


「これで分かったでしょ……武器を壊した程度じゃ私には勝てないってことが!!」


叫ぶと同時、両手に光剣を握ったエイミーが駆け出してきた。

 

二刀流とか反則にも程がある。誰だよ、正々堂々とか宣言してた奴は。


「はぁあああああああッ!」


ものっそい迫力で繰り出されるニ対の刃。こんなの防ぐだけで手一杯だ。反撃に転じる余裕がまるで無い。


「どう!?流石に無駄口を叩いてる余裕も無くなってきたみたいね!」


「見くびるなよ、不洞式エア斬馬刀の術ぉうぇぁっ!?」


光剣が鼻先を掠めた。もう心拍数が大変なことになっている。


一本はまだ良い。刀で受け止められる。だがその度に二本目を躱さなければならない。


「そらそらそらそらそらぁ!」


随分と力任せな攻撃だ。ありったけの力で光を振り回すその様はまさにゴリ押し。


「ぐっ……ゴリラみたいな奴め。今日からお前はゴリミーだ」


「なんですってぇええええ!?」


あははは、火に油注いじゃったよ。俺のおバカさん。


まぁそれはともかく、またもピンチに追いやられてしまった。遠距離攻撃は何とかできたが、流石の俺も一本の刀を二本に増やすような技は知らない。


そりゃ漫画じゃ一本の剣で二刀流を相手にしながら勝つキャラもいるけど、そういうのは実力に差があればこその結果だ。


少なくとも俺達の間に明確な力の差は無い。


「だいたい、そこまで俺に固執しなくてもいいだろ!決闘だの真剣勝負だの、俺はそういうのに興味は無いんだよ!」


「あんたが無くても私にはあんのよ!それにあんたは“今世紀ぶっ飛ばしたい奴ランキング”ナンバーワンなんだから!」


「じゃあ負けでいいから!俺の負けでいいから!」


「全力のあんたをぶっ飛ばさなきゃ意味無いでしょうがぁああああああああああああああッ!!」


これを寺理不尽という。

 

「ウェーブ・スライス!」


「ぶるあぁっ!?」


ただでさえ押されているのに、さらに心力も併用してくるときた。


まずいな、俺の限界もかなり近い。刀を握る手の感覚が段々薄れてきたぞ。


でも体力の消耗はエイミーも同じ筈。いや心力を使ってる分、疲労は俺よりもずっと大きいだろう。


だというのに、エイミーは休むどころか一層激しい攻撃を繰り出してくる。


恐ろしい、これが執念というやつか。


まったく……なんで矛盾した真剣勝負にこだわるんだか。試合という形じゃ納得できんのかね?


どっちにしろ俺は御免だけど。


「これでぇッ……トドメよ!」


両の光剣が今日一番の輝きを放ち始める。素人の俺から見ても、明らかに今までの技とは格が違った。


まだそんな大技を使えるだけの体力が残ってるんスか。


「エクスターミネーション!」


ちょっ、なんて物騒なネーミングしてやがる!超人が口にしたら洒落にならんぞ、いやマジで!


ちなみにエクスターミネーションとは、日本語で“殲滅”という意味になる。聞くからに恐ろしい技名だ。


もちろん黙って見てるほど俺も馬鹿じゃない。全力で阻止するに決まってんだろ。


「必殺、俺の宇宙CQCパート2ダッシュ!」


要するに思いっきり刀を振り回すだけです。


アレを撃たれたらアウトだ。俺はその前に接近し、光剣を真っ二つにするべく渾身の斬撃を放った。

 

仮に光剣を壊せなくとも、技の発動さえ止められればそれで良い。


乳酸の溜まった筋肉に鞭打ち、絞りに絞り出した最後の全力。


「そうくると思ったわよ!」


「ダニィ!?」


しかしその一撃は、目標であるはずの光剣によって受け止められた。いやそれどころか、力負けして逆に弾き返されてしまう。


技の副産物的な効果だろうか、ただの攻撃にも相当なパワーアップが施されているみたいだ。


これはまずい。非常にまずい。


「イグニッション!」


点火……つまり技が発動してしまう。


「させるかッ!」


急げ急げ急げ急げ急げ急げ!そして間に合え!


めげずにもう一度斬り掛かる。だが、やはり光剣に打ち勝つことは出来なかった。


右手から握力が抜け、マサル・パンツァーが宙を舞う。


……まだだ! まだ終わっちゃいない!


「しつこいわね!」


光剣の先を二本とも前に突き出すエイミー。


あの状態だと剣を振ることは出来ない。おそらくは技を放つための体勢だろう。


発動までの一瞬。つまり、ラストチャンス。


こうなったら最終手段だ。


「則ち、肉体言語ッ!!」


二本の剣の隙間を縫うように、俺はエイミーの顔面目掛けて左手を伸ばした。


その面に掌底をぶちかましてやるぜ。


「――――ッ!?」


流石のエイミーもこればかりは予想外だったらしく、完全に反応が遅れている。

 

あと少し。あと少し手を突き出せば当てることが出来る。


「うらぁあああああッ!」


くっ……まだ届かない。あと一歩分の距離を詰めなくては。


いや、一歩だけでいいんだ。むしろその一歩で更に勢いをつけてやる。


「爆熱!ゴッドフィ……」


だがその時、予期せぬ出来事が起こった。


踏み出そうとした一歩。しかし疲れが酷かった為、最悪のタイミングで脚がもつれてしまったのだ。


勢いをつけるどころか、バランスを崩して前のめりに倒れ始める俺の体。


必然、顔面に当てるつもりだった俺の左手も軌道が下に逸れていき……、






むにゅっ。






「え……?」


エイミーの口から、そんな声が漏れた。


まるで時間が止まったかのような、とても静かで空虚な今この瞬間。


キョトンとしているエイミー。


手の平の感触を確かめる俺。


ある意味奇跡的な光景が、そこにはあった。


「ら、ラッキースケベ……だと……!?」


二次元の中だけと思っていたイベントが、まさか本当に発生するとは。俺は今、世界中のオタクが夢見る幻想の境地に辿り着いたのだろうか。


小振りながらも、ちゃんと膨らんだ女の子の部分。


やっべ……何これ柔らかい。他人のオパーイってこんなにもワンダフルだったのね。


っていうか、この感触は……。


「貴様まさか……ノーブルァ……!?」


「…………」


唖然としたまま俺の左手を見つめるエイミー。しばらくすると、その瞳に怒りの炎が揺らめき出した。

 

いや……だってさ、年頃の女の子が上半身下着無しとか普通思わないじゃん?


元男の俺でさえ着けているというのに。


「うん、これはアレだな。不可抗力というやつだ。だから俺は悪くない。悪いのはノーブルァで戦場に赴いたお前の開放的すぎる心なんだ。おk?」


「あ、ん、た、ねぇええええええええええええええ……ッ!!」


怒りと羞恥心でエイミーの顔はもう真っ赤だ。そんなに恥ずかしいならブラくらい着けてこいよ、いやホント。


「誰だって!着けたくない日くらい!あんでしょうがぁああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


「知らん!そればかりは本気で知らん!」


エイミーの叫びに呼応して、光剣の輝きが更に大きくなった。


もう光だけじゃなくて電気がバチバチ鳴ってるし、空気がヤバいくらいに振動してるし、なんだか今にも爆発しそうな勢いだ。




…………ゑ?




待て待て待て、冗談じゃない。まさか本当に爆発なんてオチじゃ……、


「しまった……制御が!?」


こんなはずじゃ、なんて言わんばかりに焦りまくってるエイミーさんの姿がそこにはあった。


不洞新斗終了のお知らせ。


「おいエイミー、止めろ!今すぐ止めろ!頼むからぁ!ねぇ!誠心誠意頼むからぁああああ!」


「ダメ……膨張が……抑えられない……ッ!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


臨界点を突破したっぽい雰囲気に、俺達の体中から冷や汗が涌き出す。



バ ク ハ ツ マ デ 、ア ト 2 ビ ョ ウ 。



そんな音声が、頭の中に響いた気がした。












「んぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」


「ア゙――――――――――――――――――――――――――――ッ!!」










結局、典型的すぎる程のアホな展開には逆らえず、俺達は揃って巨大な光の爆発に飲み込まれることとなった。


爆発フラグって、怖い。


そう悟った18歳の春でした。

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