第7話
「大地や川はこのようなものだったのですね……初めて知りました……生きていてよかった……」
涙ぐんで口を押えるシャーナに、やってよかったと思う。
でも、やっぱり緑がないと。大地だけ豊かでも、そこから育つ緑がなければ蘇ったとは言えない。とりあえず「水」「大地」「聖」に関わるものを再生したりできるんだろう。川とか大地とか、あと神殿とかが再生できるわけか……。
となると、神子を探さなければならないわけだけど、この世界の何処に生きている神子候補がいるんだろうか……。
神子候補を探す方法はないかなあ。
端末をタップして、ステータスを見直してみる。
【遠矢真悟:生神レベル12/信仰心レベル6500
神威:再生5/神子認定1/観察1/浄化2
属性:水3/大地2/聖4
固有スキル:家事全般/忍耐】
それ以外にもまだまだ確認しきれてないものがあるので、どうとも言えない。
と、「ワールド・モーメント・マップ」なるものがあった。
早速タップする。
マップはほぼ全面が黒い。これマップって言わないだろう。いや待て。
よくよく見ると、マップの中央部分が明るい。
確かスワイプってったっけ、それすると縮小拡大できるかな。
す、と二本の指を使って広げてみると、そこが拡大された。
白い神殿と土色と川が、ほぼ四角形状に配置されている。
神殿のすぐ外に赤いマークがある。
もしかして、これ、俺たちの現在地?
とりあえず神殿の絵を触ってみる。
【原初の神殿:聖:生神が最初に降臨する神殿で、生神の本拠地】と説明があった。
てことは、つまり、だ。
俺はこのマップを全面映るようにしないとならないのか?
つまり、再生して再生して再生して……。
面倒だなあ……。
でも、この神殿でもそうだったように、もう食べ物や水ですら尽きてきたこの世界に絶対必要なのは再生の力。世界の何処でギリギリの状態で生き延びている人がいるのかは分からないけど、何とかして助けなきゃ。俺が再生することで助けられるって言うんであれば、そりゃやるしかないでしょ。
で、水は【再生】や【浄化】でいくらでも増やせるけど、動物を増やすにはまず植物が必要で、それを探すためには【属性:植物】を持った神子が必要であって。
その神子が何処にいるか分からないからなあ……。
魚を神子にしてもいいけど、とりあえず今絶対必要な事じゃない。今必要なのは植物で、植物を再生しない限り動物を再生させても飢えるだけ、だ。
あ、そうか、【属性:動物】もいるぞ。
やってる俺は生まれて初めてのゲーム感覚だけど、この世界で生き延びている人たちは俺の再生を待っているんであって、命が関わっているんであって。
出来るだけ急がなきゃなあ……。
なんか他に使えるのないか。神威でも何でもいいからさあ……。俺が神様だってのなら、もっと使える何かがあるはずだよ。
その時、端末が勝手に文字を映し出した。
【生神レベルが10を超え、マップを使用したため、新しい神威が使えるようになりました】
え、マップ使わないとゲット出来ない神威あるの。最初から言ってよ。
【神威:転移/神殿から各地の聖域間を転移できる。聖域は祠、神殿など、【属性:聖】で作られた場所ならば大丈夫だが、その為には神殿から行き来したい場所に【再生】か【創造】で聖域を作らなければならない】
ん-と、つまりは、出て行った先で聖なる場所を【再生】……まだ【創造】は使えないから【再生】だけか……すると、そこと神殿を行き来できるようになるわけか。
何処まで進んでも一瞬でここに帰ってこれるんであって。
これだったら帰り道のことは考えなくていいから楽だ。
けど。
まだ【創造】の使えない俺が目的地もなく歩いて行って聖域を見つけられないと、ここに帰ってこられなくなる可能性もあるってことか。
「シャーナ」
「はっ、はい、なんでしょう、真悟様!」
「この世界……ってかこの辺りの地図ってない? 昔のでいいから」
「はい! 少々お待ちください!」
シャーナは裸足のまま神殿に駆け込んで、少ししてボロボロの、独特の手触りを持った紙を巻いたのを持ってきた。
「この近辺の地図です……が、今と昔では……」
「ああそれは大丈夫だから」
シャーナのマップにも、中央に神殿があった。
東には「大樹海」と呼ばれる森林地帯がって、そこを越えると海に出る。ここからでも大樹海は見えるような距離なんだが、見えないってことは枯れ葉てたんだろう。
で、大樹海の中ほどに、【聖域】と書かれた場所があった。
森エルフの泉、と。
「えるふ?」
某トラックしか思い浮かばないんだが。
ヘルプ機能を使う。
【エルフ:この世界の人間の一種。長い耳と優れた魔力、長寿を持つ一族で、男女関わらず美しいことで知られている。森エルフ、川エルフ、海エルフなどがいて、使える魔法が違う】
森エルフか……。
森、と冠につくくらいだから、【属性:植物】を持っている人がいるかも知れない。いなかったとしても、森エルフの泉を再生すれば、新たな拠点ができる。
「よし」
俺は一人で頷いた。
「明日は大樹海跡地に向かおう」
「シンゴ様?」
「植物を増やさなきゃ大地は完全には蘇らない。大樹海の中にある森エルフが【属性:植物】を持っている可能性が大だし、そうじゃなくても泉を再生できればそこからまた移動が可能になる。より広い範囲を【再生】できる」
「世界を……蘇らせようと仰いますのね……」
「しゃーないだろ。困ってる人がいるんだ、助けないと」
「分かりました。私も同道いたします」
「シャーナ?」
シャーナさんはがりがりの顔で微笑んだ。
「寝殿から、まだ食物が多いと思われる森エルフの里を目指して旅立った方が何人もいらっしゃいました。その方たちから森エルフのことはよく聞きました」
「その身体じゃあ歩けないだろ」
どう見てもまだガリガリで、まともに歩けそうにないシャーナを連れて行くわけには……。
「世界に降臨する神……シンゴ様は神子を通じて力を揮うと伝えられております。私がいなければ力を揮えないのでしょう? なら、何処へでも、何処までもついて行きます」
「いや、無理だろどう見ても。もうちょっと体力つけなきゃ旅できないだろ」
「大丈夫です。この神殿にはいくつかの神具が残されています。それを使えば」
「神具?」
「はい。この世界には、神と神の僕しか使えない神具なる物が伝えられております。神亡きこの世界で、神具を使えるのはシンゴ様と、神子である私以外には使えないものです」
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