第120話 エルメアーナの衣装
最初の衣装を、無理矢理エルメアーナに着せてしまった事で、リズディアは、着方についても、ミルミヨルが、色々、指導をしていることに気がついたようだ。
その後は、一通りの衣装を着けてもらうのだが、リズディアが、見たい衣装を指示して、その衣装をつける方法を聞き、2人が、エルメアーナの手伝いをしつつ、着替えさせる事になった。
その際、エルメアーナの要望に応じて、2人が、連携して動いて、エルメアーナに衣装を着せていた。
(リズは、元皇族なのに、帝国臣民の着替えを手伝っているって、なんだか、変な感じね。 でも、リズったら、とても楽しそうね。 我が子に衣装を用意する母親みたいだわ)
ヒュェルリーンは、エルメアーナの着替えを手伝いつつ、リズディアの様子を確認していた。
エルメアーナは、着替え終わると、リズディアに確認される。
リズディアは、全体を見て確認するだけではなく、身体中を服の上から触って確認する。
特に、脇腹から胸にかけて重点的に触られるので、少し困った様子をしていたのだが、何回か同じ事をされると、エルメアーナは、仕方なさそうに、リズディアに、されるがままになっていた。
最後の1枚を着終わると、相変わらず、リズディアが、エルメアーナの体を触りまくっていた。
何度も同じ事をされていたエルメアーナは、もう、好きにしてくれといった様子で、触られていた。
ただ、やはり、恥ずかしさは、少しある様子で、顔を赤くしていた。
「なるほど、ミルミヨルの衣装は、本当によく考えられているわ。 フィルランカちゃんの、お陰かと思っていたけど、それ以上にミルミヨルの技術は、とても高かったわね。 きっと、フィルランカちゃんの宣伝が無くても、ミルミヨルの衣装は、認められたと思うわ。」
「なら、フィルランカが、着なくても、よかったのか?」
リズディアの話にエルメアーナが反応した。
「そうじゃないわ。 フィルランカちゃんが、宣伝塔にならなかったら、ミルミヨルさんの店は、今のように大繁盛じゃなかったと思うわ。 フィルランカちゃんとの出会いが無かったら、まだ、ミルミヨルさんは、なんとか、店を維持する程度にしか、儲かってなかったかもしれないわ。」
ヒュェルリーンが、エルメアーナの疑問に答えた。
「そうね、フィルランカちゃんが居なければ、これ程早くミルミヨルという名前が、帝都中に広まることはなかったと思うわ。 2人ともとても運が良かったわね。 成功例の一つとして、とても参考になったわ。」
リズディアが、今の話を考察するように答える。
そして、少し考えるような様子をする。
「そうね、きっと、この話は、帝国大学の商学部辺りが興味を持っていると思うわ。」
リズディアは、ポロリと、呟いた。
「ああ、宣伝をして売り上げを増やすってことよね。」
ヒュェルリーンは、納得したような表情で聞いていたのだが、エルメアーナは、何の事だか気になったようだ。
「ヒェル、それは、どういうことなんだ?」
「ああ、自分の売っているものを、人に知らせるための行為かな、どんなに良い物を作っても、誰も知らなかったら、買おうとは思わないでしょ。 でも、それを、色々な人に見せて、欲しいと思わせるのよ。 それが、宣伝よ。」
エルメアーナは、微妙な表情をしていた。
「最近、私もフィルランカと一緒に行くようにしているが、それも宣伝なのか?」
「そうね。 それも同じだわ。」
「それでなのか。 フィルランカと合わせて着るように言われたのは。」
フィルランカが、高等学校に入ってから、エルメアーナもフィルランカと付き合って、食べ歩きをしていた。
その際には、フィルランカとエルメアーナは、用意された衣装で行く事になっていたのだ。
「ねえ、エルメアーナちゃん。 それは、どういうことなの?」
リズディアが、気になる様子で聞いた。
「ああ、ミルミヨルは、いつも、私とフィルランカの2人用にと用意してくれた。 お揃いなのだ。 食べに行く時は、セットで着ていくように言われた。」
エルメアーナの説明を聞いて、リズディアは、考えをまとめていたようだ。
「なるほど、コンセプトが少し変わってきたのかしら。」
ヒュェルリーンが、エルメアーナの話から、気になったことを呟いた。
「そうね。 最初は、第1区画のお店に入るためだったけど、それだけじゃなくなったみたいね。」
「常に同じだと、周りからは飽きられてしまうから、ミルミヨルは、常に新しい衣装を用意したのね。」
「そうよ、デザインは、常に変化するものなのよ。 新しいから、欲しくなるのよ。」
「ここの衣装は、1年分よね。」
リズディアとヒュェルリーンは、ミルミヨルの考えを、ここのエルメアーナの衣装から考えているようだ。
「ああ、フィルランカの、お下がりもあるので、ミルミヨルにもらったのは、全部で5着だけだ。 それに、お下がりは、ミルミヨルの店に持っていくと、寸法を直してもらって使ったんだ。」
そのエルメアーナの一言で、リズディアとヒュェルリーンは、詳しい話を聞きたいと思った様子でエルメアーナを見る。
「フィルランカの方が、私より胸が大きくなった。 フィルランカのやつ、胸が苦しいからと言って、着なくなってしまったものを、私が着ていたら、ミルミヨルが、寸法を直して、私のサイズに合わせてくれたのだ。」
「ねえ、それは、どれなの?」
「この5着がそうだ。」
エルメアーナは、フィルランカからの、お下がりの衣装を、2人に教えた。
それを聞いて、リズディアは、納得するような表情をした。
(なるほど、それで、あの5着には、少し違和感があったのね。 でも、直したといっても、あの出来上がりは、すごいわ。 触ったから分かったけど、外から見ただけなら、エルメアーナに合わせて作ったと言っても分からない出来だったわ。 さすが、ミルミヨルだわ)
リズディアは、感心した表情になった。
フィルランカが、11歳の時に、ミルミヨルに衣装を用意してもらい、帝都の第1区画のお店で食事ができるようになり、16歳の時から、エルメアーナもフィルランカと一緒に食事をするようになり、2人が出歩くようになって、1年が過ぎたのだ。
以前にも、フィルランカの衣装をエルメアーナが着ることはあったが、それを着て外に出るようになったのは、1年前からなので、実際にミルミヨルが寸法を直してくれたのは、ここ1年となる。
それでも、5着の寸法直しをしてエルメアーナ用に、用意してくれたのだ。
ただ、ミルミヨルとしたら、フィルランカの制服と、入学式の時に色違いの制服をエルメアーナが着ていたことも、思わぬ反響を呼んでいたので、そのお礼も兼ねて、フィルランカの衣装の寸法直しも進んで行ったのだ。
ミルミヨルとしたら、2人に提供した衣装が、学校でとんでも無い注文になってしまい、助けを求めたイルルミューランが、その衣装のデザイン料として、追加で作った衣装の数だけ支払ってもらえた事で、かなり、潤ったのだ。
その程度のサービスなら、ミルミヨルとしたら、安い事だったのだ。
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