第108話 食事に誘われるフィルランカとエルメアーナ
フィルランカとエルメアーナは、固まったまま、言われるがまま、ジュエルイアン達の後を追うつもりでいたのだが、緊張のあまり、体がまともに動かない。
ガクガクしながら、出した手と同じ方の足を出す程になっていた。
(あらま、2人とも固まっちゃったわ。 こんな時ジュエルイアンは、気にしないのよね。 まあ、この時のために私が居るのか)
ヒュェルリーンが、仕方なさそうに2人の方に行こうとすると、その前をすり抜けて、リズディアが緊張気味の2人の方に動いていった。
「ねえ、2人とも、行きましょう。 私も、あなた達に、色々、お話も聞きたいわ。 それと、お友達と話すような感覚で構わないからね」
リズディアが、フィルランカとエルメアーナの間に入るようにして、2人の腕を持つようにすると、2人に笑顔を交互に向けた。
ただ、2人には、畏れ多く感じたのだろう、驚いて、青い顔をしている。
「あ、あの、それは、流石に、ちょっと」
フィルランカが、辛うじて答えるが、エルメアーナは、固まった様子で、ギクシャクした動きをするだけだった。
「フィルランカちゃんも、エルメアーナも、良かったじゃない。 リズディア様は、お話し上手だから、きっと、あなた達の役に立つと思うわ。 それに、きっと、楽しい時間になると思うわよ」
ヒュェルリーンが、リズディアのフォローをするのだが、ジュエルイアンとイルルミューランは、2人で話しながら、先に行ってしまったままである。
「あらー、男達は、さっさと行ってしまったわね」
「昔から、あの2人はぁ・・・。 南の王国に留学していた時から、2人になると、あんなだったわ。 うちの人は、私の護衛も兼ねていたのに、ジュエルイアンと一緒になると、周りの事を気にせず話し込むのよ。 まあ、あの頃は、他にも誰か居たから、大事にならなかったから、構わなかったのだけど」
「あら、ご結婚されても、まだ、皇女殿下の癖が残っているのね」
ヒュェルリーンは、少し笑いながら、リズディアに言うと、少し恥ずかしそうに顔を赤くした。
「そんなんじゃ、無いわよ」
すると、ヒュェルリーンは、少し意地悪そうな顔をする。
「あら、リズったら。 じゃあ、うちの旦那様に対してヤキモチを焼いているのかしら」
リズディアが、旦那のイルルミューランが、ジュエルイアンと男同士で仲が良い事に対して、面白くなさそうだったので、少しからかった。
「もう、ヒェルったらぁ。 ちょっと、意地悪だわ」
「あら、ごめんなさい」
ヒュェルリーンとリズディアの、何気ないやり取りを聞いていた、フィルランカとエルメアーナは、呆気に取られ表情をしていた。
(あー、今の会話って、リズディア様とヒュェルリーンさんは、まるで、お友達のようだわ)
(ヒェルは、皇女殿下とも仲が良かったのか。 さすが、私のヒェルだ)
「それにしても、リズは、昔から、直ぐ、人に手を回すわね。 それに、体を近づけたがるんじゃなく、くっつけるわよね」
ヒュェルリーンが、リズディアの様子を注意する。
「だって、2人とも、可愛い妹みたいなんですもの」
「「妹?」」
リズディアの妹発言に、フィルランカとエルメアーナは、驚いて、声に出してしまった。
2人は、畏れ多いことだと思って、声に出したのだが、リズディアは、少し、イラッとした表情をし、そして、2人を抱えるリズディアの手に力が入った。
「妹、です」
「「はい」」
リズディアが、改めて、妹だと言ったので、2人は、それに同意するしか無い様子で、返事をしたので、リズディアは、表情に笑顔が戻った。
「あら、私には、16歳下の妹が居るのよ。 この子達も、私の妹と、歳は、大して変わらないわよ。 だから、妹なの」
リズディアは、少し引き攣った表情で、ヒュェルリーンに言い訳のように言う。
「あ、そうですね。 妹でも通りますね」
気まずそうにヒュェルリーンは、答える。
(ああ、年齢的な事を気にしていたのね)
(リズディア様は、何を気になさったのだ? とても素敵なお姉さんじゃないか。 それ以外、何かあると言うのだ)
2人は、緊張が解けた様子で、リズディアを見る。
そんな2人をヒュェルリーンが、見ると、その視線にリズディアも気がついたようだ。
2人の顔を交互に見る。
「じゃあ、行きましょう。 男達が先に行ってしまったわ。 私達も行きましょう」
「今日は、ジュエルイアンと私が、2人の結婚祝いをするつもりだったのよ。 だから、あなた達も一緒にね」
ヒュェルリーンは、フィルランカとエルメアーナに、今日の趣旨を伝える。
「あ、それだと、私達は、お邪魔じゃないですか?」
「そんなことは無い、・・・わ」
ヒュェルリーンは、困ったような表情をしつつ答えた。
フィルランカは、突然、ヒュェルリーンの表情が変わったのを、不思議に思ったようだが、その視線の先に居るリズディアが、自分とエルメアーナを抱えるようにして、離そうとしないこと。
その表情をチラリと横目で見ると、ジト目でヒュェルリーンを睨んでいた。
その目は、この2人は絶対に離さないと訴えているようだった。
(これ、私達、絶対に断れないみたいね)
仕方がないと思ったようだ。
「では、ご一緒させていただきます」
「あ、ありがとう。 助かるわ」
ヒュェルリーンは、つい、本音が出たようだ。
「じゃあ、話も決まったみたいだから、私達も行きましょう」
リズディアが、2人を抱えて、ジュエルイアンとイルルミューランの後を追う。
その後ろをヒュェルリーンがついていくのだった。
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