第107話 ジュエルイアンの連れの男女
フィルランカは、ジュエルイアン達に食事に誘われた。
(ジュエルイアンさんも、ヒュェルリーンさんも、この前、お店に来てくれた人だわ。 ヒュェルリーンさんには、お菓子の作り方を教えてもらえた人よ。 エルメアーナも、ヒュェルリーンさんと仲が良いのだから、構わないわよね)
フィルランカは、後ろのエルメアーナの様子を確認する。
(そういえば、この前のようにエルメアーナが、ヒュェルリーンさんに、抱きついていかないわね。 ……。 いくら、エルメアーナでも、ここでは、家のようなことはないみたいね)
エルメアーナは、ヒュェルリーンの顔を見て、嬉しそうにしているだけだったので、フィルランカは、ほっとした。
(でも、ジュエルイアンさんの後ろにいる2人は、誰なのかしら?)
食事に誘われたのは、ジュエルイアン達と一緒に居た女性の一言で決まったので、フィルランカは、お礼を言おうと思ったが、その前に挨拶をしようと思ったようだ。
「初めまして、私は、カラン・レンリン・カインクムの家に住む、フィルランカと申します。 そして、後ろに居るのは、カインクムの娘である、エルメアーナです」
フィルランカが、スカートを摘んで、後ろの男女2人に挨拶をする。
「エルメアーナです」
フィルランカに続いて、エルメアーナが、フィルランカと同じようにすると、名前だけを伝えた。
「これはご丁寧に、ありがとうございます」
後ろの女性は、そう言うと、一方の男性を立てるようにして一歩下がると、男性の方に目配せをした。
その様子から、見るものが見たら、明らかに女性の方が立場が上のように見えるのだが、その女性は、一緒にいた男性を立てるようにしていた。
フィルランカは、その男性に向く。
「この度は、お食事に、お誘いいただき、誠にありがとうございます。 エルメアーナ共々、心より感謝いたします」
フィルランカは、その男性に、お礼を言うと、エルメアーナも、フィルランカと同じ仕草をした。
それを見た後ろの男性が、挨拶を始めた。
「初めまして、私は、スツ・メンサン・イルルミューランと申します。 こちらのジュエルイアン様の後輩に当たります」
フィルランカは、どこかで聞いたことがあると思ったようだ。
「そして、隣が、私の妻である、スツ・エイ・リズディアです」
「妻のリズディアです」
夫のイルルミューランに紹介されて、リズディアも挨拶をする。
フィルランカは、2人の名前に聞き覚えがあるように思ったようだ。
(スツ・メンサン・イルルミューラン様と、その奥様のリズディア様? ……。 スツ、スツ家? リズディア?)
そう思っていると、もう1人の顔が思い浮かんだ。
(イルーミクは、スツ・メンレン・イルーミクだったはず)
イルーミクの家は、イスカミューレン商会、そして、その兄嫁が、第1皇女殿下だったのだ。
その人が、今、フィルランカの目の前にいる事に気がついたのだ。
「スツ家? えっ! リズ、ディア、様?」
驚いた様子で、フィルランカは、リズディアの顔を見る。
「はい、リズディアです」
視線を受けたリズディアは、笑顔で答えた。
しかし、フィルランカは、青い顔をしていた。
その様子を、イルルミューラン、ジュエルイアン、ヒュェルリーンの3人が、困ったような表情でフィルランカを見ていたが、エルメアーナだけが、何なんだといった表情で様子を伺っていた。
ただ、このままではいけないと思ったのか、リズディアが、フィルランカに声をかける。
「あのー、フィルランカさん。 ここでは何ですから、座って、お話しませんか?」
「あー、キミ、4人の予定だったのだが、6人に変更できるかな」
リズディアが、フィルランカに話しかけると、それを聞いたジュエルイアンが、フィルランカ達と一緒にいた従業員に声をかけた。
「かしこまりました。 ただいま、確認してまいります」
従業員は、そう言って、すぐ、奥に入っていく。
すると、副支配人が顔を出した。
「いらっしゃいませ、本日は、ご来店いただき、誠にありがとうございます」
ジュエルイアン達に話しかけた。
「ああ、丁度、知り合いに会えたので、一緒にできないかと思ったのだが」
副支配人は、リズディアの顔を見ると、次にフィルランカの顔を見た。
フィルランカは、リズディアの顔を見て、固まったままだった。
「かしこまりました。 ご用意させていただきます」
「ありがとう」
リズディアが、答えた。
しかし、フィルランカは、固まったままだった。
「なあ、フィルランカ。 お前、どうかしたのか?」
固まっているフィルランカに、エルメアーナが聞くと、フィルランカは、エルメアーナが、リズディアのことが、誰なのか分かってないことに気がついた。
すると、慌てて、一歩下がって、エルメアーナの横に立つ。
「エルメアーナ。 あの方は、リズディア様よ。 第1皇女のリズディア様よ。 私達、皇女殿下とお食事をしようとしているのよ」
「ふーん。 えっ! えぇーっ!」
流石にエルメアーナも驚いた。
後の方は大声になってしまったので、フィルランカが慌ててエルメアーナの口を押さえたのだが、漏れた大声に、全員が、エルメアーナを見た。
ただ、その場にいた人達は、これが、普通の反応だろうと思った様子で、エルメアーナを温かく見ていたが、フィルランカは、苦笑いをする。
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