フィルランカから見た2人の食事

第11話 フィルランカの憂鬱


 フィルランカは、学校に行く事になった。


 ただ、学校から、学力はある事が分かったが、学力以上に、社会性を身につけるため、一つ下の学年に編入するようにと言われた。


 その話を聞いて、カインクムもエルメアーナも自分のことのように喜んだ。


 そして、直ぐに、編入させてもらい、フィルランカは、カインクムの家から、学校に通うようになった。




 フィルランカが、カインクムの家に住むようになって、学校に通い始めると、カインクムとフィルランカの生活習慣について、フィルランカは、困ってしまった。


 カインクムとエルメアーナが、最初は、定期的に食事をしていたのだが、そのうち、食事が不定期になり始めたのだ。


 それは、鍛治仕事を始めると、そちらに集中してしまうため、食事は後回しにされてしまうのだ。


 食材は有り、作れば食べられるのだが、2人は鍛治仕事が始まると、全く、食事を作ろうしない。


 それは、フィルランカの食事も含めての話になる。


 1日に一食だけの時が、何日も続いたり、前日の食事が朝だけだった、その翌日が、夕食だけになったりしてしまうのだ。


 カインクムとエルメアーナは、鍛治仕事に集中するので、それでも問題無いのかもしれないが、一般的な生活を営むフィルランカとしては、その2人の生活の中に入る難しさを思い知るのだ。


 カインクムからは、仕事になると食事が疎かになってしまうから、その際は、自分で適当に作って食べるようにと言われていたのだが、2人の食事について気になってしまったのだ。


 フィルランカは、2人の不健康な食事が気になり、今までは、運が良かっただけで、このままでは、病気になっしまうのではないか。


 2人が健康が心配になり始める。




 フィルランカは、2人の健康が心配になり、その事をどうしたら良いのかと悩む事になった。


 フィルランカは、2人の食事をどうしようかと悩みつつ、学校に向かうため、家を出るのだが、2人の食事の心配が、フィルランカの表情に出てしまっていた。


「フィルランカ。 どうしたの? これから、学校じゃないの? お前が行きたいと思っていた学校に行くのに、何で、そんな顔をしているの?」


 孤児院のシスターに、心配そうに声をかけられた。


(この子、学校で、元孤児だからといって、もう、いじめにあっているのかしら?)


 不安そうな表情で、シスターは、フィルランカを見る。


「実は、あの2人が、食事も食べないで、仕事をしてるんです。 それで、一日一食とか、それも、前の日の朝に食べたと思ったら、次の日は夕飯まで食べなかったりなんです」


「フィルランカ、お前もそれに付き合って、丸一日以上、食事を食べないのかい?」


 シスターは、その話を聞いて、孤児院の食生活の方が、まだ、マシだと思ったようだ。


「いえ、私は、台所の食材を使って食べて構わないと言われてます。 だから、私は、ちゃんと食べてます」


「まあ、そうだったの。 鍛冶屋さんだから、仕事が始まったら、中々、時間が取れないのかねぇ」


 シスターは、フィルランカが食事が出来ている事に安心するが、カインクムの家の不規則な生活にも困ったと思ったようだ。


「ねえ、シスター。 私が、2人の食事の世話をして、助けることはできないでしょうか? このままの生活が続いて、2人が病気になってしまったら、一緒に住めなくなるかもしれない」


 そう言って、フィルランカは悲しそうな表情をして、下を向いてしまった。


 2人の事を思うフィルランカを、シスターは、健気に思う。


「そうねぇ。 家族の健康は、家族の幸せですからねぇ」


「シスター、私、心配なんです。 2人が、倒れでもしたら、私、どうしたらいいか」


「そおねぇ。 それは、心配だわねぇ」


 そのフィランカの心配を聞いたシスターは、そうした家の事情を聞いて、何とかならないか考えだした。


「あのー、シスター? 私が、あの家の料理を作ってあげるのは、いけない事なのでしょうか? 2人が仕事をしていると食事が作れないけど、私は、学校に行って勉強するだけなんです。 少しでも2人の助けになれないでしょうか?」


「うーん。 子供が料理ねぇ」


 10歳の子供が料理を作ると言っても、大した物は作れないだろうと思う。


「そうだ。 だったら、料理を覚えたらどうだい。 孤児院でも、時々、料理を手伝っていたじゃないか。 本格的に料理を覚えて、2人の食事の世話をしてあげたらどうだい? ああ、でも、学校と家事だと少し大変かもしれないわね」


 シスターは、思いつきでフィルランカに提案して、後で、失敗したと思ったようだ。


 だが、フィルランカは、目を輝かせて、その提案に乗ってきた。


「シスター。 それです。 私が、2人の料理を作ります」


「あっ、いや、でも、学校に行って、家事は大変だろう」


 思い付きで言ってしまった事に、フィルランカが食い付いた事に、シスターは少し困った様子を見せるのだが、フィルランカは、本気で家事を行うつもりになったようだ。


 その表情を見ていると、やめた方がいいとは言えなくなった。


「そうかいぃ。 じゃあ、料理を教えてあげるから、孤児院の料理を作る時に来るといいよ」


「はい。 じゃあ、今日、学校が終わったら、伺います」


 フィルランカは、シスターに一礼すると、走って学校に向かった。


(しばらくは、カインクムさんの寄付のお陰で、少し良い物を食べさせてあげられるから、その間にフィルランカに料理を教えてあげる事にしようか)


 フィルランカの喜びようを見て、シスターもその気になったようだ。

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