Retrace:Ⅱ -猫?-
まだ朝日が頭をちょこんと出しただけの早朝に俺は目が覚めた。
太陽が出てからほとんど時間が
『早朝に行動するのは何か良い事の前触れなんだぜ!』
とかなり前にとある腐れ縁の友人に言われたような気がしたので、そのまま立ち上がりまた裏路地を進んでいく。
俺の歩みは決して速くはないが、どんどんと裏路地の奥へ奥へと進んでいく。太陽が少ししか出ていないが、まだ少しだけしか出ていない為この裏路地はまだ薄暗かった。聞こえる音は風が路地を通る音だけで他は
しかし、少し歩くと、何やら「ニャーニャー」という鳴き声が聞こえた。猫の鳴き声だろうか。何やら気が立っているらしく、ところどころ「シャー!!」と
1分もしない内に、ある大きな5匹の猫と、その猫達に囲まれて威嚇されている小さな青い猫を見つけた。
大きく、黒白の
(本当はこういう自然の争い事には関わらない方が良いんだがな…。何故か、何故かこの小さな青い猫を助けたくなってしまう)
ちょっとした運命というのだろうか、性なのかも知れない。
とにかく、俺はこの小さな青い猫を5匹の大きな猫から助ける事にした……のだが。
俺が人間と言っても流石に5匹を相手にするのは骨が折れる。でも、今助けないとこのまま襲われて死んでしまうかも知れない。現に今襲われている。だが、興奮した猫達をどうにかする方法はわからない。
「出来れば俺が来ただけで逃げた方がまだマシなんだけどな‥」
どう助けるか考えあぐねていると、ふと
「猫達に殺気を放ったら良いんじゃないか?」
と思いついた。俺の殺気がどれほどなのか分からないが、よっぽど貧弱ではなければ効くはずだ。猫より人は格上なんだからな。
とにかく、今のところ思いついたのはコレしかなかったので早速実践することにした
(流石に猫に暴力を振るうのは大人げないと思ったしな)
「…………!!!」
出来るだけの殺気を出して5匹の猫達に向けて威嚇してみた。
するとどうだろうか、5匹の猫達は明らかに恐怖を感じ、一目散に俺の反対方向に走っていった。
「まさかそこまで強いとは思わなかったけどな。ま、助けられたし良いか」
そして、俺はその助けた小さなサファイアブルーの猫に歩み寄った。近くでよく見てみると、サファイアブルーの美しい毛並みがよりはっきりと映って見える。目は金塊の様に輝いていた。体は小さくどこかの貴婦人が飼っているペットだろうか?
そう俺か思った瞬間何とその猫が、
「うぅ‥、痛かったよぉ〜」
と言葉を喋ったかと思うと、【ポン!】と白い煙を猫から出してあたりが煙で全く見えなくなった。
煙が晴れたらそこには………、
絶世の美女がいた。
海の底の様な深くも透き通った
腕には白い
足も長く、細い。まさに貴婦人と言えるような透き通った肌色。いや、白に近い肌色といったところか。
そして、とにかく目を向けてしまうのはその胸だ、とにかくデカい。いや、普通の女性の何倍あるのだろうか。Fカップくらいはあるかも知れない。服はその胸が良い感じに強調される白いワンピースを着ていた。まるで一度も汚したことも無いと思えるような透明感が入った白だった。そのせいもあり特に胸や腰のくびれが強調されていた。
「はぁ~~、やっと猫の姿から開放された〜。」
そう、絶世の美女が叫ぶと、大きく背伸びをした。この仕草も全て芸術品に匹敵すると
伸びをしたあと、俺の方向へと振り向き、
「あ‥、貴方が助けてくれたんだよね!!ありがとう‥」
と少し頬を赤らめて、俺に感謝を伝えた。
「あ‥、あぁ、どうもアンタの事が何故か気になったからな。気にするな」
俺はそう、ぶっきらぼうに言った。
すると急にその美女が俺の手を取って握ったかと思うと、
「あ‥、お礼に何だけど、私も一緒に貴方と共にいていいかな‥?」
と、少し驚く事を言ってのけた。その言葉もそうだが、その美女の手も凄く気になってしまう。白く透き通った肌はすべすべとしており今まで触ったどんな物よりも心地が良く感じる。
「それは良いが、今の俺は半ホームレスみたいなモンだし。何より、アンタみたいな美女は俺みたいな奴につかなくても他の適当な貴族にでも仕える事も出来そうだがな」
実際、美しい女性は高名な貴族に召し抱えられる事もよくあるらしい。しかし、
「そ‥、そんなのはいらないよ‥。ただ貴方の元にいたいだけなの‥」
と、上目遣いで俺に訴えた。
(コレは反則だろ‥)
と思いつつも、パートナーが出来るのは悪い事じゃない。何より猫の姿になれる能力は貴重というレベルじゃない。
俺は、1つ返事でOKを出すと、彼女はぱあっと満面の笑みを浮かべて
「ありがとう!私、セドナって言うの!」
と自分の名前を教えてくれた。
「セドナか‥良い名前だ。俺の名は‥」
彼女‥セドナが名前を教えてくれたから自分の名前を思い出そうと頭を捻って考えてみたが、当然思い浮かばなかった。
「すまない、俺は記憶喪失の様でつい先日に目覚めたばかりだから名前がわからないんだ。適当に呼んでくれ。」
俺はそう弁明した。セドナに理解してもらえるかと多少心配だったが、
「記憶喪失?そうなんだね‥。‥じゃあ、貴方でいいかな‥?」
と少し心配そうな声で言ってくれた。
「ああ、それで頼む」
と俺は言った。名前も言わないのは何だか失礼だと思ったがまぁ気にしないでくれるだろう。
それより、
「しかし、なぜセドナはこんな猫の姿になって襲われてたんだ?」
と率直な疑問を聞いてみる。
「え?‥えぇ‥。気分で猫に姿を替えて散歩してたらあの野良猫達に見つかったのよ」
と、少し
「襲われちゃって大変な時に貴方が来てくれたから助かったけど‥。もしそのままだったら……」
「確実に軽症程度では済まなかっただろうな。まぁ、その前に良か‥」
最後まで言葉を言おうと思ったら何と感極まったのか今まで不安だったのか分からないが、セドナが俺の左腕に抱きついてきた。
「ありがとう‥ありがとう‥」
顔を見たら涙のシミが出来ている。緊張が溶けてたのか、それか安心したのか分からないが。
俺はセドナの頭を優しく撫でてあげた。しかし‥、貴族の令嬢から探してもたった3人しかいない様なレベルのこの大きな胸が今俺の左腕に当たってるのがどうしても気になってしまう。しかも、2つの乳房が俺の腕を挟んでいるのだ。これには流石に居心地が悪いので、多少強引にセドナの体を引き離して
「ま‥、まぁ‥これからよろしくな」
と言い握手をする
「ええ、よろしくね!」
とセドナも左手を差出し固く握った。
???「奴は死んだか?」
???「えぇ、川の中に沈めたのでたぶん死んだかと」
???「なら良い、あの方もきっと安心なされるだろう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます