第3話隼人の元に届いた1通の新着メール(3)
片手にスポーツ飲料水、もう片手に親父のギャルゲーを携え、隼人は部屋へと辿り着いた。
部屋の中央に置かれている1人部屋に丁度良い大きさの木製で出来ているテーブルの前に腰を下ろす。
そのテーブルの上には1台のノートパソコンがいつもの様に置かれている。
隼人は画面が閉じられている状態のノートパソコンに手を向け、ゆっくりと画面を開いていく。
慣れた手つきで電源ボタンを押し、正常に起動されるまでの間に部屋へと持って来た『萌えちゃダメなんだからねッ!完全版』のパッケージを丁寧に開封し、1枚のCD ROMを取り出した。
「ええっと、これをパソコンに入れてインストールすればいいのか?」
ディスクケースから1枚のギャルゲーソフトを取り出し、先程無事に起動されたノートパソコンに挿入する。
するとノートパソコンの画面中央にこのソフトをインストールされますか?というメッセージが表示され、隼人はマウスを手にしYESの場所にカーソルを合わせてクリックする。
カリカリとノートパソコンから機械音が漏れ出し、ゆっくりとインストールが進んでいく。
インストールを待つこと約5分、ようやく画面中央にインストールが完了しましたとメッセージが表示された。
最初の画面に戻るとデスクトップ画面にはインストール完了を知らせるかの様に今まで無かった女の子の顔がプリントされた四角いアイコンが貼り付いている。
「……これ、もし母さんや姉貴に見られでもしたら親父と同じく変態扱いされそうだな……」
若干インストールをした事を後悔してしまったが、時すでに遅し。
例え今すぐにでも消去したとしてもインストールしたという事実は消せないのだ。
「………まぁ、見つからなければ大丈夫だ…。見つからなければ…な…。」
独り言を言いながら自分自身を納得させる。
そうでもしないと安心出来ない自分がいたからだ。
一瞬の迷いを振り切る様に隼人はそのアイコンをダブルクリックする。
すると、攻略ヒロインであろう4人の女の子達がノートパソコンの画面に映し出された。
だが、それだけではすまなかった。
昨日の夜にノートパソコンで好きな音楽をそこそこ煩い音量で聴いていたのを忘れていた影響で、ヒロイン達による可愛らしいボイスでタイトル名『萌えちゃダメなんだからねッ!完全版』とタイトルコールが部屋中に響き渡る。
「おわぁぁぁぁッ!!!!」
慌ててノートパソコンの音量をゼロに合わせる隼人。
(まさか誰かに聞かれてないよな!?)
心臓が今までに無い程バクバクと鼓動する。
(…………誰も帰って来てない…よな…?)
全神経を耳や肌に集中させ家全体の様子を伺う。
もしかしたら知らない間に母さんや姉貴が帰って来ている場合も無きにしも非ずだからだ。
「……大丈夫みたい…だな…。ふぅ、流石にびびったぞ……」
誰にも聴かれていない事を確認した隼人は安心したのか安堵のため息を吐いた。
「流石に母さんや姉貴に変態認定されたら俺の精神が崩壊しそうだ…。」
訪れて欲しくない未来を想像するだけで悪寒が身体全身を駆け巡る。
変態認定は親父だけで間に合っているんだ。その仲間入りだけはしたくないと改めて実感する。
「さて、いきなりハプニングがあったけど気を取り直して中学1年生の今の俺には少しだけ早すぎるギャルゲーデビューの幕開けだ」
そう意気込みながら隼人はカーソルを初めからプレイのタグをクリックした。
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