ピンク街の噂話 I

ピンク街の噂話 I


ボクは家に着くと黙ったまま部屋に戻った。


ロイドの「お帰り。」と声を掛けられたが、返事を

せずに部屋に向かった。


答える気力がなかった。


「はぁ…。」


ボクは溜息を吐きながらベットに横になった。


今日は疲れた。


Night mareの存在やアリスの性格。


もっと、アリスの事を調べてみる必要があるな。


チリンチリンッ。


そんな事を考えていると鈴の音がした。


音のした方に目だけ向けた。


「ゼーロ。お疲れ様。」


「CATか。」


CATがボクが寝ている横に腰を下ろして頭を撫でて来た。


CATの手を退ける元気もなくされるがままだった。


「ゼロに1つ謝らないといけない事があるんだけど…。」


「何?」


「ゼロと帽子屋の話聞いちゃって…Night mareの事を知っちゃったんだよね…。」


「ん?」


ボクはゆっくり体を起こしてCATの方を見ると耳を

シュンとさせていた。


「CATは何処で聞いたんだ?」


「ゼロの事が心配で…ゼロの影から聞いてた。」


「CATは誰にも言わないだろ?」


「勿論!!ゼロの言う事しか聞かないよ!!」


「なら良いよ。」


ボクがそう言うと目を丸くした。


「え?お、怒らないの?」


「怒る理由がないだろ。」


「そ、そう言うモノ?」


「そう言うモノだろ。灰皿取ってくれ。」


「うん!!」


CATは喜んで机に置いてあった灰皿を取ってくれた。


ロイドが昨日くれたモノだ。


ボクが煙草を咥えるとCATが火を付けてくれた。


そう言えばインディバーが小さなカードを渡して来たな…。

ボクはポケットに入れたカードを取り出し目を通した。


カードには"Night's"と書かれていて裏には基地と思われる場所の地図が書かれていた。


コレを渡して来たって事はこの場所に行けって事か?


「それってNight'sの基地の地図?」


「そう…みたいだな。」


「すぐに行く?」


「…いや、ちょっと調べたい事が出来た。」

「調べたい事って何?」


「ボクの影を通してアリスの話を聞いていたか?」


ボクがそう言うとCATは黙って頷いた。


「アリスの男事情を調べたいんだ。」


「男遊びの事?」


「そうだ。アリスは夜中に出て行った事はあるだろうか。」


「あ、そう言えばアリス夜中にピンク街に行ってるって噂を聞いたよ。」


「ピンク街?」


ボクがそう言うとCATが耳元で囁いた。


「夜の店が沢山ある所だよ。」


「あー、成る程。CAT男物の服と帽子を用意してくれ。」


「え!?わ、分かった。」


そう言ってCATは姿を消した。


CATが服を用意してくれている間にシャワーを浴びた。


体の汚れを流し終えてバスルームを出るとロイドが

立っていた。


「ロイドもシャワー浴びるのか?」


「俺はもう入ったよ。それより大丈夫か?」


「さっきは悪かったな。ちょっと疲れてボーッとしてた。」


「そうか…。」


ロイドは何か言いたそうにしていた。


「どうかしたか?」


「あ、いや…その。お茶会はどうだった?」


ロイドにアリスが男好きと言う事を言っても信じてもらえないだろうな。


この事はジャックやミハイル、エースに伝えといた方が良いだろう。


それが悪い事でも…だ。


帽子屋とインディバーにバレた事やNight’sの事は伏

せつつ噂話を聞いた風にして一緒にピンク街に行くように誘導するか。


「お茶会は普通に終わったよ。だが…。」


「ん?どうかしたのか?」


「アリスの気になる噂を聞いてな。」


「噂って…?」


よしよし、食いついて来たな。


噂って言うのは嘘だけど。


「アリスがピンク街と言う所に出入りしていると言う噂を聞いてな。ちょっと確かめたいからピンク街に行ってみようと思ってな。」


ボクがそう言うとロイドの眉毛がピクッと動いた。


よしよし。


「アリスがピンク街に!?誰が言ってたんだ!?」


「帽子屋の屋敷に行く途中に聞いただけだ。誰かは分からないが何人かがその話をしていた。ボクがソイツ等の前を通ったら話をやめたがな。」


「…。」


「ボクはCATとピンク街に行ってくるからまた報告する。」


そう言ってロイドに背を向けると腕を掴んできた。


「俺も行く。」


「ロイドも行くのか?」


「あぁ。俺もこの目で真実を見ないと納得出来ないからな。」


「ゼロー!!服持って来たよー!!」


2階からCATの大きな声が聞こえてきた。


「ボクは準備をして来るからロイドも変装してくれよ。」


「変装?する必要があるのか?」


ボクはジッとロイドの顔を見つめた。


こんな美形がいわゆる夜の街に居たら目立って仕方がないだろ。


「ロイドはかなり美形なんだぞ?ロイドの姿を見たら女が寄って来て目立ってしまうだろ?」


ポポポッ!!


ボクがそう言うとロイドの顔が真っ赤になった。


ロイドの反応を見て驚いた。


何故、顔が赤くなるんだ?


「わ、分かったら早く着替えて来い!!」


「お、おう?」


そう言って顔の赤いロイドを残してボクは部屋に戻った。


部屋に戻るとCATが男物の服を渡して来た。


黒い大きめなパーカーに白Tシャツに黒のスキニー

に黒のキャップ。


そして"MENS"と書かれたパウダーも渡して来た。


「MENS?」


「コレを頭に触れば1日だけ男になれるパウダー。俺も着替えよっと!!」


パチンッ!

そう言ってCATは指を鳴らした。


CATの着ていた服がカジュアルな服装に変わり耳と尻尾が消えた。


「それも魔法ってヤツ?」


「そうだよ!後ろ向いてるから着替えちゃいなよ!」


「あぁ。」


CATが後ろを向いた事を確認し持って来てくれた服に着替えた。


そして頭にMENSパウダーを振りかけると…。


ポンポンッ!!


腰まであった髪が短くなってショートヘアーになった。


胸もなくなりキャップを被れば…。


どこから見ても男だ。


「うわぁ!男になったねゼロ!完璧じゃん!」


「本当、この世界にあるモノは凄いな。それとロイドも一緒に行くからな。」


「え、マジ?」


「あぁ。」


CATのテンションが明らかに下がったのが分かる。


「ほら、行くぞ。」


「はい…。」


ボク達は1階に降りてロイドと合流した。


ロイドもパンクファッションではなくラフな格好をしていて眼鏡と長い髪を帽子の中に入れていた。


「ゼロはMENSパウダーを使って男になったのか。」


「あぁ。CATが持って来てくれてな。」


「そうか。車を表に回してあるから向かおうか。」


「へー。用意が良いです事。」


ボクとロイドの会話に不機嫌な声を出したCATが割って入って来た。


ロイドはCATを無視して車に向かった。


ボクは不機嫌なCATを宥めながらロイドの後について行った。


家の前にレトロなデザインの車が止まっていた。

「さっ乗ってくれ。」

後部座席のドアを開けてくれたのでボクとCATは後ろに乗った。


ボク達が乗った事を確認したロイドも車に乗り込みエンジンを掛けた。


ブルルルル!!


「ここからどれぐらいの距離なんだ?」


「30分くらいかな。」


「まぁまぁ距離があるな。」


「そうだな。」


「早く行こうよー。」


CATが再びボクとロイドの会話に入って来た。


だが、ロイドは無視して車を走らせた。


「無視すんなよロイド!!」


ロイドは再び無視をした。


ボク達はピンク街に向かった。

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