第3章 Black Princess

Night's



アリスを殺した犯人がますます分からなくなった。


帽子屋とインディバーは犯人候補から抜いて良さそうだが…。


「Nightmareも俺に言って欲しかったよ。何でインディバーには言ったのかなー。」


帽子屋が頬を掻きながら呟いた。


「マッドハッターがマリーシャに捕まってばかりだったから言えなかったのよ。アタシだってNight mareが姿を消す前に聞いたんだから。」


2人が淡々と話しているのを黙って聞いていた。


「おーい。アンタも話に入りなさいよ。てか名前は何?」


インディバーがボクの顔を覗きながら尋ねて来た。


「え?ボク?名前はゼロだが…。」


「ゼロね。アタシ達はゼロ側の人間だから安心して良いわよ。」


「え!?」


「マッドハッターもその事を言う為に2人っきりになったんでしょ?何やってんのよ全く。」


そう言ってインディバーは帽子屋の背中を叩いた。


「ゼロの事が気になっちゃったから少し意地悪しちゃったごめんね?」


帽子屋がボクに謝って来た。


「いや…。ん?じゃあボクがアリスじゃないって事はマリーシャ達は知ってるのか?」


ボクは帽子屋に尋ねた。


「いや、マリーシャやズゥーは気付いていない。」


「じゃあ何故、マリーシャにボクの事を調べさせたんだ。」


「マリーシャはアリスが嫌いだからね。それを利用しただけだよ。あの子は俺の命令なら何でも聞くし、ゼロがどんな感じの子なのか知りたかったんだ。」


つまり、マリーシャにボクの事ではなくて城で起きた事を聞いたのか。


だけど、どうしてインディバー達はアリスを殺した側ではないんだ?


「俺達がアリスを殺した側じゃないかって思ってるな?」


「っ!?」


帽子屋にボクの心を読まれた。


ここの世界の奴等は心を読む事が出来るのか?


「俺とマリーシャはNight mareの下に付いてるんだ。」


「Night mare側の人間って事か?何者なんだソイツは。」


「Night mareはね、Trick Cardを作った魔術師なのよ。アタシ達はその魔術師団体の一員って訳。」


帽子屋と話しているとインディバーが入って来て説

明をしてくれた。


「Trick Cardを作った?このカードを作ったのか!?そんな事が出来るのか…?」


「Trick Cardはこのカードに魔力を閉じ込めているんだ。様々な魔法を使える魔術師達が集まって作ったんだ。」


帽子屋が分かりやすく説明してくれた。


あの大きな嘴の付いた仮面を被った奴もNight mareの部下か。


「アタシ達は"Night's(ナイツ)"と言う名前の団体に入ってるの。まぁ、アタシ達以外はNight'sの存在も知らないし、団員の数も少ないからね。」


「そうなのか…。だが、そんな団体を仕切っている団長が何故、ボクの存在を知ったのだろうか。」


ボクはインディバーに尋ねた。


「いつからか分からないけど、この世界が正常に回らなくなったんだ。」


「どう言う事だ?」


「俺達はアリスが死んだ事を知っている。だが、アリスが死んだ事を知らない奴が多過ぎる。」


「それは…、エース達が隠しているからじゃないのか?」


ボクが帽子屋にそう言うとインディバーが口を開いた。


「この世界では誰かが死ねばすぐに広まるのよ。それがただの市民や団員でもね。だけど、アリスが死んだ事はアリスに執着している人間しか知らない。」


だとしたら、アリスが死んだ事を知らない方がおかしいのか。


じゃあマレフィレスは何故、アリスの事を調べていたのか?


「ゼロは城に潜入したんだよな?」

そんな事を考えていると帽子屋が話し掛け来た。


「あぁ。」


「そこで何か変わった事はなかったか?マリーシャはゼロの事しか情報がなくてな。」


「それならマレフィレスがアリスの事を調べていたみたいだ。」


「「え!?どう言う事?」」


インディバーと帽子屋の声が合わさった。


ボクは2人にマレフィレス部屋の話をした。


すると2人は何か納得した様子だった。


「だから俺達を呼び出してアリスの話を聞いて来たのか。」


「それなら納得出来るわね。」


ボクの中に1つ疑問が出来だ。


「何故、マレフィレスはアリスの事を調べていたんだ?」


ボクが2人に尋ねると帽子屋が答えてくれた。


「主にジャックが絡んでるからだろうな。」


「ジャック…?」


「マレフィレスはジャックに依存してる。それは異

常な程に。アリスと同じくな。」


「アリスはジャックに依存していたのか?」


「ジャックの行動や交流関係を束縛してたな。」


束縛…か…。


独占しようとしていたって事か。


ジャックはアリスの事をそんな風に言っていなかったな。


カツカツカツ!!


ボク達は後ろから聞こえる足音を聞き会話をやめた。


「アリスー!!帽子屋ー!!」


後ろから走って来たのはエースとマリーシャだった。


「遅いわよ!!いつまで散歩するの?」


マリーシャはそう言って帽子屋の腕を掴んだ。


「インディバーもここにいたの?」


「えぇ。」


「何だよそれー。」


エースとインディバーが話してる内容が頭に入って来なかった。


今日は色んな情報を聞き過ぎ頭がパンクしそうだ。

スッ。


インディバーがボクに小さなカードを渡して来た。


エースとマリーシャは気付いていない様子だった。


ボクは素早くカードを取りポケットにしまった。


「あら、もう15時じゃない。そろそろお茶はお開きしましょう。」


「えー。残念。」


インディバーが時計を見ながら呟くとマリーシャが溜め息を吐きながら喋った。


「アリス?どうした?」


エースがボクの顔を覗き込んで来た。


「え?あ、あー。何でもないよ。」


「アリスも疲れてるみたいだし早く送ってやれ。」


帽子屋がボクの様子を見てエースに話し掛けた。


「え!?そうなの!?アリス大丈夫?早く帰ろうか。」


「うん。」


「お茶ご馳走様でした。じゃあまた!!」


「あぁ。」


エースがボクの手を引いて帽子屋の屋敷を後にした。


「帽子屋と何かあった?」


「え…っと…。」


エース達が来る前に帽子屋に耳打ちされていた。


「Night'sの事はエースやジャック達には内緒で頼む。」


そう耳打ちされていたのだった。


だからこの事はエース達には秘密しておかないといけない。


「何でもない。少し疲れただけだ。」


「そっか!今日は早く休んでゆっくりして!!早く帰ろう。」


「うん。」


ボク達はロイドの家に向かった。

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