ピンク街の噂話 II

ロイドはひたすらCATの言葉を無視しながらピンク街に到着した。


キキッ!!


「着いたぞ。」


「ありがとうロイド。」


「へっ!!ロイド運転遅すぎー。」


ロイドはボクの言葉にだけ「構わない。」と返事を

してCATの言葉は無視した。


車から降りるとイチャイチャしている男女が目に入った。


ピンク街にある店達は風俗店やクラブ、バーのようだ。


そして物陰に男を誘い込んでいる女の姿も見えた。


まさにピンク街と呼ばれる場所だった。


こんな所にアリスは出入りしていのか…。


「相変わらず香水臭い…。」


CATが鼻を摘みながら嫌な顔をした。


「とにかく行くぞ。」


「ッチ。命令すんなよなロイド。」


この2人…子供か!!


「2人共、少しは仲良く出来ないのか。」


ボクは呆れながら2人の間に入った。


「「ごめん…。」」


2人が声を合わせて素直に謝って来た。


「分かれば宜しい。とりあえず手当たり次第店に入ってみよう。CAT、アリスが出入りしていた店とか分かるか?」


「確か…。」


CATはそう言いながら周囲を見渡し1つの店を指差した。


店の名前は"Pink Rady"と書かれたクラブだった。


「クラブか?」


ロイドがCATに尋ねた。


「そうだよ。アリスはここのクラブのVIPルームによくいたらしいよ。」


ロイドの問いにちゃんとCATは答えた。


「よし、ならそのクラブに行くぞ。」


ボク達はPink Radyに向かった。


Pink Radyに着くと扉の前なのに男女数名がキスをしたり抱き締め合っていた。


そして、ブドウの甘い匂いが鼻を通って来た。


この甘ったるいブドウの匂いのせいで気分が悪くなりそうだった。


「な、んだこの匂い。」


「コレDragだよ。」


CATがボクの耳元で呟いた。


「このクラブはDragをしてる連中の集まりか。」


口を押さえながらロイドが話した。


つまりこのクラブはDrag中毒者の集まる場所なのか?


ボクの世界にもDragの中毒者は沢山いたし、売人も山のようにいた。


こんな世界にもボクの世界と同じような所があったのか。


アリスもDragの中毒者?


これはますますアリスの事が怪しくなって来たな…。


ボク達は気持ち悪いのを我慢しながら中に入った。


ズンズンズンズン♪


DJが奏でる音に合わせて沢山の男女が踊っていた。


ここにいる女の服装は露出度がかなり高くもはや着ている意味があるのか?って思う服装だった。


男達はそんな女を見てニヤニヤしたり声を掛けていた。


ギュッ!!


ロイドとCATがボクの手を強く握って来た。


「ゼロ、離れるなよ。」


「危ないから捕まって!!」


2人は大きな声でボクに話しかけてきた。


「ありがとう2人共。助かる。」


お礼を言った側から人の波に押され2人の手が離れてしまった。


2人の手を掴み直そうとしたが、人並みは凄く手を遅れだった。


CATとは連絡が着くから大丈夫だが、ロイドが心配だな。


そんな事を考えているとCATがボクの頭の中に語り掛けてきた。


「ゼロ大丈夫?!ごめんオレとロイド入り口まで追い出されちゃって…。」


「2人は一緒なのか?それなら良かっ…。」


「ねぇーお兄さぁん。1人?」


CATとコンタクトを取っていると女に声を掛けられた。


ボクが女の方を見るとポッと顔を赤らめた。


「やだ…めちゃくちゃカッコイイ…。」


この女から何か情報を聞けるんじゃないか?


「ゼロ!!大丈夫!?何かあったの!?」


「CAT、少し待っていてくれ。」


「え!?待つって?」


「女が話しかけて来てな?アリスの事を知っているかもしれないから話を聞いてから合流する。」


「だ、大丈夫なの…?」


「あぁ、心配するな。」


ボクがそう言うとCATは「分かった。」と言って頭の中から消えた。


「お姉さんさ?ボクちょっと聞きたい事があるんだけど良いかな?」


そう言ってボクは女の肩を優しく掴んだ。


「え、なに?こんなカッコイイお兄さんだっらなんでも答えちゃうよぉ。」


そう言って女はボクの体をベタベタと触った。


女の体からはあの甘ったるいブドウの香りがした。


この女、Drag中毒者か。


ボクは女と共に空いているソファー席に移動した。


女は向かい側のソファーに座らずボクの隣に座って来た。


「聞きたい事ってなぁに?」


「お姉さんさ、アリスって子知ってる?」


「お兄さんもしかしてアリス目当て?」


「違う違う。ボクの連れがさアリス目当てなんだよ。その連れがアリスの事を知りたがってるからさ。」


ボクは即座に女に嘘をついた。


「あ!そうなんだぁ。アリスはねーかなりの男好きで毎回ここに来る時に男と一緒なんだけど連れて来る男は違う男なの。」


「へぇーアリスって子はモテるんだ?」


「んー。夜の方が上手いんだって。」


「え?」


ボクは女の言葉を聞いて固まってしまった。


やっぱり。


アリスの裏の顔は男好きって事か。


「へぇーそうなんだ。」


「それにアリスはこの飴ちゃんを売ってたよ?」

女はそう言ってボクにブドウの柄が描かれた棒付きの飴を渡してきた。


「コレ何?」


「お兄さん知らないの!?」


「ボクここに来るの始めてだからさ。教えてくれるかな?」


ボクは女の体を引き寄せ耳元で囁いた。


女の顔がポポポッと赤くなった。


「もーお兄さんったらぁ♡仕方ないなぁ。コレはね。grape って言って気持ち良くなる飴ちゃんだよぉ?」


アリスが売人?


「コレを売りに来る時はいつも同じ男を連れて来てたのぉ。」


「へぇー、どんな男?」


「えっと…。見た目は暗くてよく見えなかったの。」


ッチ、使えねー女だな。


だが、アリスの情報はだいぶ掴めたな。


アリスがいつも連れて来る男はアリスの仕事上のバディーと言う事か。


その男が誰なのか…。


アリスの裏の顔を知らないジャック達は犯人候補からはずしても良さそうだな。


まだボクが合っていない双子のディとダムに会わないといけないな。


ここにはもう用は無いし、そろそろ出るか。


「ありがとうお姉さん。助かったよ。」


そう言ってお礼に女の頬にキスをした。


女は頭から茹でが出るんじゃないかって程に顔を真っ赤にさせた。


ボクは人混みを避けながらクラブを出た。


クラブの出入り口の外にロイドとCATの姿が見えなかった。


どこに行ったんだあの2人…。


「ギャアアアアア!!」


「っ!?」

女の悲鳴が街中に響き渡った。


声の方に視線を向けると、数人の男女がウサギの被り物を被った2人の男にナイフで切り刻まれていた。


何だアレ!?


「アハハハ!!」


「楽しー!!アハハハ!!」


被り物を被った2人の男は笑いながらナイフを刺し続けていた。


すると被り物を被った1人の男がボクの方を見た。


「あれあれー?何見てんの?」


もしかして…これは、ボクにロックオンして来た…か?


「ダム、ムカツクからアイツ殺そう。」


ダム!?


コイツ等…もしかしてディとダムか!?


「いーじゃん殺そうかディ。」


ディとダムはナイフを持ち直しボクの方に猛スピー

ドで走って来た。


これはまずいな…。


ボクは腰に隠しておいた銃を構え2人に銃弾を放った。


パンパンパンパンッ!!!


街中に悲鳴と銃弾が響き渡った。


銃弾は見事にディとダムの足に命中し2人は地面に倒れ込んだ。


「アハハハ!!痛いねダム!!」


「アハハハ!!痛いねディ!!」


2人は銃に撃たれたのに大声で笑っていた。


なんだこの2人気持ち悪!!


2人は血を流しながらボクの方に再び走り出した。


キキキキキッー!!


「ゼロ!!!」


後ろを振り返るとCATとロイドが車を走らせてボクの方に向かって来た。


「捕まって!!」


CATが助手席を開けて手を伸ばしてきた。


ボクはCATの腕を掴み車に乗り込んだ。

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