第13話 新生活スタート

 お昼はどうするか話し合った結果、出前でまえを取ることになった。会計は割り勘の予定だったのだが……。


「うーん、オレちゃんはピザがいーっスねぇ!」


「僕はその、そういうカロリーの高いものはご遠慮させて頂きたくぞんじます。はい。あとベジタリアンなのでございまして……」


「ちゃんとした飯食えや!」


 結局バラバラに注文することになり、まだ家具のないリビングの床に座りながら、初めて四人で食事をることになった。等依とういが宣言通りのベーコンがどっさり乗ったピザ、空飛あきひが野菜たっぷりのサラダうどん、鬼神おにがみがバランス弁当、五奇いつきが海鮮丼というラインナップだ。


「じゃ、じゃあいただきますか?」


 あまりのバラバラっぷりに五奇いつきが苦笑しながら三人に声をかけ、食事を開始した。


 ****


 食事をり終わった後は、トクタイから出たお金で共有スペースの家具を買いに行くことになった。市内にある大型商業施設に等依とういの運転で着いた四人は駐車場に車を停めた。なお、車も支給品だ。


「ふいーオレちゃん、チョー働いてるー! 今晩はステーキたっべちゃおっかなー!」


 一番働かされているのに、明るく言う等依とうい五奇いつきは申し訳なくなてきた。同じ気持ちだったらしい空飛あきひ等依とういに向けて声をかける。


等依とういさん、お疲れではございませんか? よろしければ、休憩スペースにて少しお休みなされますか?」


「んー? こっれくらい平気っスよ? 空飛あきひちゃんサンキューな! つーわけで、家具見るっしょ?」


 等依とうい五奇いつきの方を見て話題を振る。


「あー……じゃあ、えっと何から見ますかね? 一階は確か、リビングと和室だから……」


「こういうのは奥から順番に決めてきゃいいんじゃねぇのか? さっさと決めるぞ。俺様はもうダリぃんだ!」


 語気ごき強めに言う鬼神おにがみの提案で、和室から家具を決めることにし、四人は商業施設の中へ入って行った。


 ****


「おっ、和室ならコタツっしょ!」


「僕は花瓶など置きたいところでございますね、はい」


「座布団はいんだろうが!」


「俺は特にない……ですかね」


 こうして和室の家具を決めた後、リビングに置くソファーとローテーブル、カーテンを決めていった。それぞれの好みで選ぶととんでもないことになりそうだったため、パンフレットやモデルルームを参考にして決めた。

 問題は風呂場だった。なにせ、四人が四人とも使うものが違うのだ。必然的にそれらを収納するものも困る。


「おい、どうすんだよ? 言っとくが俺様は、野郎クセぇのは一切使わねぇぞ!」


 本気で嫌そうな彼女に、「あぁ、そういうところは乙女おとめなんだな……」と思った男三人は、彼女の意見を優先して、風呂場とトイレの収納などを決めていった。


 ****


 一通り家具を決め購入してきた四人が戻った頃には、夜になっていた。夕食は商業施設で済ませたため、風呂の順番を決めることにした。女性である鬼神おにがみを一番にして、残りの三人は年功序列ねんこうじょれつと働きっぷりから等依とういを二番、譲り合いの果てのじゃんけんで三番が空飛あきひ、そして最後が五奇いつきとなり、風呂の準備をする。


「覗いたら殺すからな?」


 そんな物騒な文言もんごんとともに、鬼神おにがみが脱衣所の扉を閉めた。順番が来るまでの間、残りの三人は各自の部屋で過ごすことにした。


 ****


 部屋に入るなり、どっと疲れが襲ってきた五奇いつきは、まだ片付けきっていない室内を見ながらベッドに腰かけた。


「疲れたー。家具選びってこんなに大変だったのかよ……」


 父と住んでいた頃はすでに家具があったし、ルッツに用意してもらったマンションは備え付けだった。だから、人生で初めての経験なのである。


「……これが、家族とかとだったら楽しかったのかな」


(正直、疲労感が強くて楽しい感じじゃなかったしなぁ)


 まだ慣れない部屋を眺めつつ、五奇いつきは時間をどう潰そうかと考える。


(ゲームかテレビか……うーん。どれもピンと来ない。って、あ……)


 今までが目まぐるしくて、完全に失念していたあることを思い出した。


蒼主院そうじゅいん退魔術式たいまじゅつしき! あれってどういう意味なんだ!?」


 慌ててスマホを手に取ると、ルッツに連絡を入れる。だが、久しぶりの連絡だからか返信がすぐに来ない。


「こ、このタイミングで返信来ないのかよ! うぅ……はっ!」


 蒼主院そうじゅいん術式じゅつしきなのなら、蒼主院そうじゅいん姓を持つ等依とういけばいいことに気づいた五奇いつきは、彼の部屋に向かうことにした。

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