アタシの可愛いご主人様 2話 【見習い時代】

「この絆創膏可愛らしいですね」


「子供ぽいですか?」


「いえ、ありがとうございます。うふふ」


(よかった。笑ってくれた)


 ソニアは慌てて割れた皿を回収しようとするあまり指を軽く切ってしまいました。それでも安静にして様子を見ていると血は直ぐに止血できたので携帯していた絆創膏を貼ろうとするも、彼女を心配して割れた皿を片付けた後に救急箱一式を急いで持ってきてくれたタスの厚意をそのまま受け取り、ソニアの指にはカエルのマスコットが描かれた可愛らしい絆創膏が貼られてしまいました。この絆創膏は支給品ではなくタスが自分で買い揃えたものであり、冒険者であれば携帯するなら機能性を重視すべきものでしたが、あくまでこれは女性の使用人がマッチングしたと判明してから彼女のもしもの時のためにタスが用意していたものでありました。そうして少年タスにもお似合いのような可愛らしい絆創膏は彼の手によってソニアに巻かれてしまう。その時にまたひんやりとした肌触りもよい艶肌に触れてしまった時にタスは心臓がトクンと大きく鼓動をしてしまい、見て見ぬフリでもするように使用人の様子を伺うと、可愛らしい絆創膏を見てクスリと微笑んでくれたソニアの珍しい柔らかな表情に思わず見惚れてしまいました。ただしジッと見つめているのは恥ずかしくもあり、先程はそれで一発大胆に行動をしてみましたが、流石に二度三度と美人な大人の女性を口説くような行動はタスにはできるだけの余裕はなく、とりあえず強張っていた表情が少しでも柔らかくなってもらえたことを喜んでいました。



 タスとソニアは二人きりでの食事を始めました。その食事の合間にタスは次のステップに踏み出すために話を切り出しました。使用人を休息させるためにタスは昼寝を提案しましたが別段きっかけは何でもよく、さらに言えば彼女とこの機に話し合いの場を設けて使用人業務をより心地よくノビノビとやって欲しいと考えていました。ただし仕事への向き合い方は人それぞれでもあるために、自分と話しをしてからもソニアの心境に変化がないようならタスも干渉を控えるべきかもと様子を見ることも考慮に入りました。その上でタスにはソニアの抱える過去の闇は知らないだけに、多少の下心も交えながら同じ空間に異性がいるというシチュエーションを作りたくもなり、彼女との穏やかな日常となる昼寝を計画してもいました。タスとしたらそれでまったりと過ごしながら気楽に談笑でもして打ち解けようとする軽い気持ちでもあります。しかしソニアは過去の経験から主人の言動を深読みしてあらぬ誤解から珍騒動を招いてしまう。


「一緒の部屋で寝ませんか? 少しお話しがしたいです」


「私がいたらご主人様が休まらないのではないでしょうか」


普通なら異性が同室で濃密に一緒に過ごすのには抵抗があるはずなのにソニアはそれで驚くことはなく平然とタスの心配をしてくれました。彼女も男性全般に慣れたわけではないものの冒険者であれば安心できるという判断材料と主人への敬意とタスという優しい人への信頼から、同室で共に眠ることさえも抵抗はありませんでした。


「そうなら初めからこのような提案はしていません。最終的には別の部屋で寝てもらってもかまいませんから、それまでは話しませんか?」


「それならお食事中に話してしまってから、それぞれで仮眠をとれば良いのではないでしょうか」


「うぐっ・・・たしかに・・・でも、込み入った話になるかもしれないので」


「かしこまりました。ご主人様が望むのなら私は何処にでも何なりと」


「そこまで強要するつもりはないのですけど・・・」


タスにも考えがあるのだろうと知るとソニアは深読みをして、さらに主人の為を思い自分にできる精一杯の奉仕をするために準備があるとタスに時間をいただきたいと願うことにしました。彼女からしたらそれが当然の行為でもありました。


「もしよろしければ身体を清めたいのでバスルームを貸していただいてもよろしいでしょうか」


「そんなに汚れているようには見えませんが?」


「汗と匂いを移してしまうと申し訳ないので・・・」


「そんなこと気にしなくとも、シーツはまた洗えばいいですから」


「ご主人様がお気になさらないのであれば・・・シーツは確かに洗う必要はありますよね・・・」


(技術だけは自信はある。でもこのまま秘密にして身体を捧げてもいいのかしら・・・)


ソニアはタスが好奇心から男女交遊を伴う奉仕を願っているものだと深読みしてしまい、さらに自身はタスに身体を捧げることに抵抗はない程に彼を受け入れてもいたので、まだ経験が浅いはずの主人に悦んでもらえるように積極的に奉仕をするつもりでいたのでした。そのため状況次第では自分がタスのベッドを汚して濡らしてしまうことを心配していたのですが、タスが気にしないことを知ると己の全てをタスに捧げることができることに安心もしました。しかし同時に過去の経験を秘密なままにタスに偽りの愛情を捧げることにも後ろめたさもありました。


 そうして一度ソニアは身を清めてから、タスがまだ見習い初期であるために裸の付き合いはできないことを理由に、深いまぐわいがないのなら男に汚された過去を持つ自分でもタスという光に仮初の愛を捧げる行為をしてもよいと判断をして、最後に最近になってようやくチカラが振えるようになった変化の術を使い火傷の跡を一時的に消して、綺麗な肌になった身体を姿見で確認してから下着を身につけて、その上にタオルだけを巻いて主人が先に待つ寝室へと向かってゆきました。


「お待たせいたしました」


「へ!?」


ソニアの変化のチカラはまだ未熟でもあり身体の一部は変化させることはできるも、年齢がガラリと変わるくらいの全貌を変化させるまでにはチカラが目覚めていませんでした。しかし傷モノではない二十代の艶のある女性には変化はできるようにもなり、男性の熱を醒ますような姿だけは晒さないようにできたことがソニアにとっても救いになっていました。しかし火傷の跡が消えたとしても心にはまだ癒えないでいる傷が残されていたのかもしれない。それは彼女を導いてくれた支援者でも、闇から引き出してくれたジルでも解決出来なかったことでもありました。そうして訳ありな心を抱えたままのソニアは結果的に間違いをしてタスに魅力的な姿で誘惑をしてしまいました。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 ソニアは使用人として仕事をする上で必要となる冒険者の情報を知っているために、タスが現時点での限界となる男女交遊を自ら全て捧げる覚悟で部屋を訪れました。ソニアは部屋に入るなり驚き固まるタスの前に陣取り、そのままタオルを脱いでしまい下着だけを身につける魅力的な姿を晒してしまいました。そうして何故だか忘れかけていた異性に肌を晒す恥じらいをタスからは感じてしまい、熱くなりだした身体を震わせながら、少年でも視姦されると演技ではなく本心から興奮できてしまいショーツはすでに軽く湿ってもいました。本来であればそれすら主人に喜んでほしくて見せつけるつもりでいたのですが、久しぶりの恥じらいの気持ちが高まりソニアは陰部を隠すように手で押さえつけてしまいました。


 これだけの行動力と覚悟に初めて感じた感情が合わされば、それは恋まではいかないにしても愛ではあったはずでした。しかしその愛の形は様々でもあり、偽りではないながらもタスがその愛の形を受け入れられる愛であったのかが重要でもありました。もし敬愛からの行為がエスカレートしたのであれば、好奇心があっても理性が勝ってしまうくらいにタスはソニアを大事に想う気持ちが大きくありました。


「ご主人様はまだ見習いに成り立てですので下着姿までと伺っております。私の身体でしたらお好きなようにお使いください」


「服を着てください。ぼくの言い方も悪かったですよね。ごめんなさい。ただその様な行為は頼んだつもりはありません。だからどうか身体を粗末に扱わないでください」


タスはソニアが躊躇うことなく衣服を脱ぎ捨てたことから彼女の過去の一部を垣間見てしまいました。二人は恋愛すらしていない関係性であるのにも関わらずに、身体を使う奉仕を選択するソニアの過去が訳アリであると知らされていただけに、他人事として見過ごせないくらいにタスはソニアを心配してしまい、毛布を片手に歩み寄ると優しく彼女を包んであげて肌を隠してあげました。


「私の身体では満足していただけないのでしょうか・・・」


「違うのです・・・ぼくはあなたに・・・」


タスは腰を落ち着かせてからとソニアに意図を軽く説明することもなく後回しにしていたことを後悔してもいました。その結果、ソニアがどんな気持ちで主人を喜ばせようと必死になってくれていたのか、タスには理解できないくらいの過去の経験がそういう決断を彼女にさせてしまったのだろうと分からないながらも、答えに近づいてもいました。そうして改めてタスはソニアに仕事への向き合い方をもう一度考えてから選択してほしいのと、できることなら身を捧げるくらいの盲目的な忠誠心はいらないとも考えていると伝えてあげました。そうするとソニアは自分が深読みし過ぎて失敗したことを理解して、主人の優しさを誤解したことを何度も下着姿のまま謝罪をして、それでまたひと騒動起きてしまいました。

――

――

――


 ソニアの誤解は晴れましたが、結局はこの結果を招いたのは自分の過去が原因だと感じた彼女はタスに全てを伝えてしまい、その上で自分を受け入れてもらえるかタスに委ねることにしました。もしそれでタスが拒絶してしまうのならばソニアはそれをただ黙って受け入れるつもりでいました。そうしてまた違う誰かに仕えるのか、いっそのこと冒険者に仕えることを辞めてもいい。それくらいの覚悟でタスに過去の苦しかった経験を語り尽くしてしまいました。


 タスは話を聞く途中で自分が結果として軽はずみでソニアに重い口を開かせてしまったのではないかと不安になり、無理はせずに辛いならやめてもいいと口にしましたが、彼女の決意は固く最後まで聞いてほしいと願うと、タスもそれなら自分も最後まで聞く以上ソニアの全てを背負いこむ覚悟をもって聞き入れていました。そうして全てを聞いた後で思ったことは、ソニアのこれまでの行動理由に納得がいったことであり、しかしそれを良しとも思えないことにもなりました。心の傷の癒し方など処方箋もなければ、タスには分からないことだらけでもあり、しかし関わると決めた以上無視はできない。手探りで時には間違えてソニアを傷つけることになるのかもしれませんが、そうならないようにもこれからは、もっと十分に互いを理解し合いながら尊重し支えてもあげる。タスもまたソニアの心の使用人になることをこの瞬間に誓いました。


「やっぱり一緒に寝ましょう。日向さんに今必要なのは、人の温もりの別な意味です!」


「はい・・・失礼いたします」


「何故脱ぐのですか・・・?」


人肌が恋しくなるのはなにも性的欲求を埋め合うだけではない。それこそソニアの家族がいた時にも同じ気持ちがあったはずでした。しかし苦しかった日々で心がやつれてしまいソニアは男性に抱かれて行く中でさらに人への触れ合い方をまた忘れかけていたようでした。その交流の仕方を改善させるためにも荒療治になるかもしれませんが、彼女が肌の接触に抵抗がないことを利用してタスは添い寝から始めてしまい、情事を伴わない温もりの共有でも幸せは感じられることを伝えたかったのでした。それが許されるのはソニアからの信頼だけではなく、所々に好意のようなものが見え隠れしてきたからであり、タスがそれに気が付いたことで決断できたことにもなりました。彼としても使用人を気遣う良心と一緒に魅力的な異性としても惹かれていたこともあり、ソニアの変化に気づけたのですが理性が働きソニアの心境を利用する悪い心は抑え込めたのでした。そうして下心を隠したタスでしたが、何故だかソニアはもう一度衣服を脱いでしまい下着姿となって、優しさで靡いてしまった慕う主人のベッドに潜り込んでしまい、さらに魅力的すぎる身体をタスに押し付けながら寄り添ってくれたのでした。


「普段は裸で寝るのでこうでもしないと眠れません」


「仮眠ですから我慢してください。うわあ!? そんなにくっついたら・・・」


(おっぱい だ・・・柔らかい・・・それにいい匂いもして変な気分になりそう・・・)


ソニアも策士であり普段はしっかりと衣服を身につけて就寝しているも、タスを言いくるめて少しでも身体で恩を返そうと嘘を散りばめながら強行策で誘惑をしていました。これもタスが拒絶しきれないからこその無害な行為になり、冒険者への害とみなされてしまえば嘘も行動もした時点で彼女は解雇されるなり、最悪の場合は呪いで罰を受けてしまいますが、警告すらない以上大胆になってもいいとソニアは我が道に全力投資をし始めていました。


「それならタス様が我慢してください」


(この方は優しすぎる。少しくらい打算で動いてもいいのに、アタシにも何かあげられるものがあればいいのに・・・)


制約上愛撫はまだ解放されておらず、ましてや情事はないと決断した後なのでタスはソニアの身体を好き放題楽しむつもりはありませんでした。しかしソニアにも主人を慕う気持ちが芽生え始めており、ただしまだ本気になれないのが過去の生い立ちを引きずっていたからでもありました。それでもタスが傷モノの自分を受け入れてくれた上で、さらに自分を救おうとしている姿を見せられてしまえば、どう恩返しをしたものかと考えていた。


「日向さん、これからは自分の身体を安売りしないでください。これはぼく個人のわがままにもなりますが、あなたはもう自由に生きていいと思います」


「タス様は優し過ぎます」


話し合いの過程でタスはご主人様呼びだけは改善することを約束できました。こうして名前で呼ばれる関係まで距離を縮めることができましたが、まさかその先までソニアが求めていたとはタスは思ってもみず、彼女の心境を理解できないまま拒絶しようとしました。


「そんなことありませんよ。今だってこの様に打算で動いているようなものです。こうして優しくすると見せかけてちゃっかりと異性と触れ合っている下心がある少年なのです」


(タス様も下心がある? アタシの身体に触れたいのかな・・・なにこれ・・・嬉しい・・・触って欲しい・・・)


タスは忠誠心や身体の奉仕はいらないと言います。すると結局自分には捧げるものは何もなくなってしまい、どうしていいか途方に暮れてしまい、それならと思いついた妙案をソニアは実行に移しました。


「私の好きなことでしたら自由にしてもよろしいのですか・・・?」


「はい、なにかしたいことが見つかりましたか?」


欲望を満たすだけならソニアも男性を求めたことはありました。しかしそれとはまた違う意味で彼女はタスに自らの身体を触れて欲しい気持ちが溢れてきました。こんなやり方でしか優しさに報いることができない自分が情けなくもありましたが、タスの自由にという言葉が後押ししてくれてソニアは素直な気持ちを身体でも伝えることにしたのでした。


「それでしたらぜひ、私の胸をタス様の枕にしてください。それでしたらタス様でも女性の身体を堪能できます!」


「いやいや、それは行き過ぎですよ。あくまで善行の範囲で収めさせてください」


「私のためなのならばどうか・・・まだ肉体の結びつきがない触れ合いには不安があるのです・・・」


「困りましたね・・・」


「やはり汚された身体では・・・」


「それだけはないです! 日向さんはとても魅力的です」


「そうならば何故そこまで私を拒むのですか・・・あっ・・・タス様のが固くなってる・・・」


魅力的な女性から際どいアプローチを繰り返されていればタスの身体も反応してしまい、まだ未成熟な下半身でもソニアにも分かるくらい興奮していたことを伝えてしまいました。するとタスは恥じらいを感じながらも開き直ってもいて、改めて自分が我慢していたことを伝えてソニアが十分に女性として魅力的であることを伝えてあげました。


「少年のぼくでも理解できるくらいにあなたは魅力的です。これ以上は理性が保たないので退いてください」


「いやです。タス様とえっちなことがしたいです」


(嬉しい・・・こんなアタシを選んでくれる人がいる。汚したくないのに・・・でもあげたい・・・好きな人とえっちがしてみたい・・・)


ソニアにも完全に自分が恋に堕ちかけていることは理解できていました。しかしどうしてもそれを口にはできない。何故ならばソニア自身の生い立ちだけではなく、タス自身の縛りも二人には障害があったからでした。ただし一番の躊躇う理由は、やはりタスに重荷を背負わせたくない一身でした。だからこそ気持ちの根底は伝え切らずに、直接的な行動だけを繰り返していたのでした。


「何故こうなった・・・?」


タスもソニアの度重なる刺激的なアプローチに薄々好意が混じってきていたことを感じており、それが自慢や自信にも繋がり彼自信の大胆な決断にも繋がっていました。それでも今回ばかりは流されたくはないので、ソニアの傷心につけ込んだかのようなやり方によって欲望を満たす行為に至るのは避けたくもあったのですが、それ自体をソニアは求めてはいなく、むしろタスには欲望に忠実となり食べ尽くして欲しいとすら考えてしまうほどにタスへの気持ちが溢れていました。優しくされるとコロッと靡いてしまうような簡単な女でもよく、兎に角ソニアはできうることをタスに捧げたくて身体を預けようとしてしまう。そうして最後にはタスが折れてしまい、情事はできない決まりなのでソニアの提案をそのまま受け入れて「特大のマシュマロ枕」を二つ贅沢に使い眠りたくても眠れない至福の時間を過ごすことになりました。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




(日向さんなしでは眠れない身体にされそうで怖い。このままずっとこうしていたいのに理性が邪魔ばかりする・・・)


 タスが母性の象徴に惹かれていた時、ソニアもまた少年に対して邪な気持ちが溢れそうになっていました。生い立ちなど気にもとめず、ただただ優しく温かな存在。そんな人に早く出会えていたらとソニアはタスに想いを巡らせながら、彼女は初めて愛する人に身を捧げる女性の喜びを感じていました。今だけは過去を忘れてタスだけを喜ばせようと身体を預けてしまうも、それだけで彼女の身体は幸せに包まれてしまい、さらなる欲求を自らも求めたくなりもどかしい制約を残念がっていました。


「ハァ・・・ハァ・・・あうん♡ タス様の吐息がきもちいいです♡」


(かわいいなぁ・・・少年でも全然興奮できるし。子供だからまだ下半身も恥ずかしがり屋さんだよね。早く見たい。手ほどきしたいなぁ。でも初体験だけはアタシではない女性なんだろうな・・・)


この先制限が緩めばぜひ深い肉体の結びつきもしたいとソニアは考えていました。しかし性交渉本番ができるようになる冒険者となる時点では自分はタスの使用人からは外された後になってしまう。そうすれば恋愛ごっこは覚めてしまうことになる。その時のソニアにはタスを縛り付けるだけの覚悟もなければ、運命の人になれるだけの価値もないと思っている。それならもう一度オトナの店で働きタスを待つことすら選択肢になるかもと考えつくも、果たして使用人の立場を利用してまでタスからの愛情を沢山受け取ってきた自分が、別の殿方からの愛を受け取ることができるのか。きっと自分は一人の特別な殿方からの愛に染まってしまい抜け出せなくなった後に違いない。そうなる未来が見えてしまい、ソニアは未来のタスのパートナーに嫉妬することになりました。


(きっとアタシはタス様をどんどん好きになってしまいます。それでもこの気持ちだけは抑え込みますから、迷惑だけはかけませんから身体だけはお付き合いさせてください。それだけでアタシは幸せになれますから・・・ああ、でもタス様に種付けだけはして欲しい・・・パートナーになれなくてもいいから愛人になれないのかな・・・)


「うぶっ・・・苦しいです・・・」


「もっと私を感じてください」


(早くもっとえっちなことをしてあげたい。どうしよう・・・興奮し過ぎてエロいことしか考えられない・・・)


愛したいのに愛せないもどかしさにソニアは耐えてもいましたが恥じらいながらも胸に埋もれてくれたタスに今すぐ身体をめちゃくちゃにして欲しい衝動に駆られて、彼の頭を抱えてギュッと密着させました。できることならこのまま胸での奉仕を始めたくなりましたが、それは制限があり中止しました。ただその過程で沢山の妄想も繰り返していたので、ソニアは手ほどきだけでなく大人の自分が少年に組み伏せられる妄想をすると切なくなってしまい、タスの腰に足を絡まめてしまい固くなったままの男性器を自らの陰部近くに引き寄せて、我慢できずに腰を振りだしてしまい擬似的に愛し合うことを始めてしまいました。その一連の動きにビクッと反応したタスが行為を中断させようと言葉を投げかけました。


「これ以上はいけません。これ以上進んでしまったら日向さんが解雇されてしまいます・・・」


(ぼくみたいな少年でもえっちをしたいのかな・・・そこまで好かれる理由もないと思うけど・・・)


「私だけが発情して、はしたないメスで申し訳ございません」


「まだ過去の呪いの影響があるのですか?」


「いえ、ただ私がスケベなだけです。タス様が魅力的すぎて身体が熱ってしまい・・・ああ・・・タス様に貫いてほしいのに・・・」


「ええ・・・そんなに男性とセックスがしたいのですか?」


「ちがっ・・・アタシは・・・私は男性経験が欲しかったわけではなくて・・・タス様が特別で・・・申し訳ございません。なんでもありませんわ」


二人の胸の内の一部を語り明かしたことでソニアも徐々に打ち解けてくれるも方向性が危うくもなっていました。どうしてこうなったのかタスには疑問が残る結果となりますが、ソニアにとっては小さな光のカケラであっても掴めなかった過去があるだけに、タスの優しさは心を寄り添いたくなるには十分すぎる輝きであったのでした。それでもその光すら曇らせないようにソニアは一線だけは引いてしまい大事に大事にしてしまう。それが一番望みたいはずの願いを彼女の口から発してはくれませんでした。




 タスは彼女が自分のことを慕っているのではと薄々勘づいていましたが、行動が刺激的過ぎてイマイチ呑み込めないでもいました。できることなら少しずつ交流を深めて行きたかったところでしたが、ソニアの暴走がタスに慎重さを与えてしまい、事実確認ができないまま男女交遊の一部が開催されてしまいました。漢ならそこで責任をとるなり、改めて冷静になり徐々に交遊を深めるなりやり方はいくつかありましたが、ソニアの誘惑に負けるかたちでタスは流されて気持ちをしっかりと確認し合わないまま、二人は同衾をしっかりと済ませてしまいました。しかしそこはタスも今後のために実りある結果も残そうと、肌を重ねるくらいに距離が縮まったのだからこの際最後まで腹を割って話そうと、改めて使用人の立場をソニアに確認してもらうことにしました。


「これからはもっと気軽に接してもらえたら嬉しいのですが」


「後悔しますよ・・・」


「望むところです」


「あとで後悔しても知りませんよ」


「そんなに変わるのですか? 少し不安になってきました・・・」


「うふふ♡」


(タス様を堕とすことになっても知りませんよ♡)


心までは完全に堕とす自信はなくても、身体を骨抜きにしてしまうテクニックには自信はあるために、ソニアはタスとの使用人を越えた深い交わりを楽しみにしてしまうほど、彼を一途に想う気持ちが溢れてしまっていました。それが明日以降の自分の豹変に繋がってしまうのを「愛して恋するご主人様」には受け入れてもらい、開き直って少年を弄んでもあげようかと計画していたのでした。そんなこんなでタスの願いは叶うことになるのですが明日からはソニアの独壇場が始まってしまうことになるのでした。

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