ねこあかねこべこ

 授業も終わり家路に着こうと駐輪場へ向かう。

 ふと右を見ると、ガードレールの隙間から見知らぬ三毛猫が学内へ入って来ている所だった。猫はこちらに気付き立ち止まる。首輪をしている様子もなければ人慣れしていないようで、恐らく野良の雌猫だろうと推測する。

 私は小さく会釈をして駐輪場に向かおうとしたが、なんとなく猫と目を合わせたまま、ぐるりと彼女を見渡す形で移動する。どこか気になったものの、やはり猫だ。目線を外し真っ直ぐ駐輪場を向いたその時…カコンコンという木が揺れ動く音がした。首振りおもちゃにありそうな音に釣られて後ろを向くと、先ほどの三毛猫は真っ赤になっていた。まるで、赤べこのようだった。色だけでなく、模様も赤べこだったのだ。

 猫はこちらを見ながら口を開き、にゃーではなくカコンコンという音を喉から出す。白昼夢を見ているのではないかと頬をつねるが違った。

 猫、猫?猫なのか?はさっと逃げしてしまった。急いで後を追うも、四足歩行の生き物のスピードは加速装置でも付いているのかと思うほどで、あの目立つ赤はどこにもいなかった。

 あれは…あれは一体…ねこ…ねこあか…ねこべこ、とでも言うのだろうか。

 

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