斜陽
日がぐっと傾く時、学校の廊下の影はまるで生き物のように伸びて闇に溶ける。
だけど普通は溶けてお終い。西校舎の廊下以外は。
日の傾き具合が良ければ、時折不思議なものを見ることができる。
だから、ものは試しにそっと覗き込む。
夕日が山に翳りを落とし、廊下の影を異常な速さで動かす。
すると、影がまるでトンネルの様になり、その向こうには草花の咲き誇る心地の良い午前の空が広がる。
そこへ着物姿の幼い女児と、学生服を着た坊主頭の青年が現れ、何やら話をしていた。そこだけ昭和の映像を投影しているかの様で、なんとも奇怪な風景が広がっていた。
その間およそ三分、ぐっと影が動き出し、渦の様に二人の世界を包み込む。あと少しで閉まり切る瞬間、青年がこちらへ振り返り、ふっと微笑みかけた。
渦が閉まり切った瞬間、呆けていた私の顔が一気に赤く沸騰した。盗み見をした羞恥心と、彼の微笑みに乙女心が反応したのだ。
顔を手で冷ましながら早足で下駄箱へ向かい、この廊下に来るのはやめようかと思うが、またあの青年の顔を見たいと感じてしまうのだった。
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