第59話_再チャレンジ

翌日になって、俺と子供たちは別行動することになった。

二人は昨日同様、妖狐さんが立ち会って魔力の制御方法を練習するそうだ。

俺はと言えば……。


「ユージンさん、しっかりお願いしますね」


支度を済ませると、ルックルさんが待っていた。

静かに怒っている執事からツルハシを受け取り、俺はあの鉱山だった場所へ向かった。

妖狐さんと一緒に出歩いて以来、妙な目で見られることもなくなった。

気分が良くなった俺は鼻歌交じりで道を進む。

だが、遠目からでも否応なく突きつけられる現実……瓦礫がれきの山が迫る。


「こ、ここに立ち入らなければいけないのか……!」


フーが破壊した鉱山は、見事なまでに粉砕されていた。

俺は覚悟を決めて、瓦礫の山に踏み入る。


「うーん……やっぱり見た目だけじゃ、どれが鉱石なのか分からないな。

じゃあ、ツルハシを使いますか!」


俺は試しに5ほど魔力をツルハシに注入してみる。

すると、ツルハシは薄っすらと光を放ち始めた。

ルックルさんはたしか……


『原石に近づけば近づくほど、このツルハシが強く光を発します。

またツルハシで原石に触れますと音が鳴ります』


って言ってたな。


ツルハシが薄っすらと光っているということは、宝石の原石が近くにあるということだ。

見た目ではどこにあるか分からないので、そこら辺に落ちている石にツルハシを当ててみる。


ピピピピ


音が鳴った。

この小石が原石なのだろうか。

俺は、隣のやや大きめな石にもツルハシで触れてみる。


ピピピピ


「え? これも宝石の原石なのか?」


ツルハシが壊れている?

それか、偶然二連続で原石に当たったのかもしれない。

俺は、更にその隣の石にもツルハシを当てる。


ピピピピ


また鳴った。

俺は状況を確認するため、手当たり次第に周りに転がる石にツルハシを当ててゆく。


ピピピピ

ピピピピ

ピピピピ


どうやら全ての石が原石のようだ。

……って、そんなわけあるかい!


「どういうことだ…?

考えられるのは…


① ツルハシが壊れている

② 全てが原石

③ 何らかの理由で全ての石にツルハシが反応してしまう


こんなところか?

もう少し調べてみよう」


俺は場所を移動して、適当な石にツルハシを当てる。

結果は同じだった。

どの石に当てても音は鳴る。


今まで調べた全ての石が原石の可能性もなくもないが、可能性としてはかなり低い。

ツルハシが壊れていることも考えられるが、ルックルさんのしっかりした仕事ぶりを見る限り、俺に壊れたツルハシを渡すようなヘマはしないと思う。

じゃあ、別の理由があってツルハシが全ての石に反応してしまうということか?


「うーん、分からない……これじゃあ、原石を見つけ出して持ち帰るのは難しそうだな」


俺はガックリして床に座り込む。

今日も鉱山を破壊した日と同じように快晴だ。

鉱石掘りに来たのに、お日様の下で鉱石を探すのは変な気分だ。

ボーっと日が当たっている所を見ていると、地面がキラキラと光っている。


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