第50話_ソラ v.s. 大賢者②
「おっと、ユージン。
どうかしましたか?」
勝負を止めた俺に問うタルボット。
「すみません。
ソラにちょっとアドバイスしてもいいですか?
これじゃ、あんまりにも一方的過ぎるので」
子供であるソラに厳しすぎる勝負だと俺は感じ、ヒントを与えたかった。
「仕方ありませんね。
本来なら自分で気付くべきなのですが」
致し方なくタルボットが許可を出す。
「ソラ、ちょっとこっちに来い」
上手くいかない怒りと動揺がおさまらないオレンジ色の髪が上下しながら、こちらへ歩いて来る。
俺は腰を落とし姿勢を低くする。
それから、ソラのそばでヒソヒソと小声で話す。
「ソラ、いいか、よく聞けよ?
お前の目線で移動する先が大賢者にバレてる。
瞬間移動する前に、行く先を見てないか?
そうやって移動しようと思っている所を見ているから、行く先がバレるんだ。
奴を騙せ」
俺の言葉を聞いたソラからは動揺と怒りが消え去り、勝負前の笑顔が戻ってきた。
切り替え上手だな。
「兄ちゃん!
ありがとう!」
彼は
俺はソラの健闘を祈りつつ、開始の合図をする。
「改めて四回目……始め!」
ソラは左を見て、それから右を見て、今度は左に視線を戻し、最後に右を見てから瞬間移動する。
目線を使ったフェイントだ。
ソラが転移した先は、彼の右前方。
タルボットには捕まっていない!
大賢者は、ソラの位置とは真逆の左に居る。
よし! この勝負もらった!
と思ったのも束の間、ソラはタルボットに手首を掴まれていた。
あっさりとソラを捕捉できてしまったタルボットは、不思議そうに彼に尋ねる。
「ソラ……今なぜ空間移動しなかったのですか?」
「じいじを騙せたのが嬉しくて、忘れちゃった!」
俺はずっこける。
じいじことタルボットは、片膝を地面について手は眉間に当てている。
どうしたのかと思えば……
「くっ。
かわいい……」
などと大賢者様はほざいている。
あいつはダメだ。
「はいはーい。
じゃあ、最後始めますよー。
位置に着いてくださーい」
俺はパンパンと手を打って、まぬけなやり取りを強制終了させる。
ソラとタルボットが対峙する。
しかし先程までのピリピリした空気は流れていない。
フーが、ソラに声をかける。
「ソラ!
がんばれー!」
なんだか最後はいい勝負になりそうな気がする。
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