第42話_羊飼いと帰宅
しばらく青空のもと歩く。
さっき休憩した場所を通り過ぎ、街の入り口に着いた。
羊飼いは羊を連れたまま街へ入る。
羊が街を
俺はまた妙な噂が立たないか内心ビクビクしていた。
俺たちは、シルバーフォックスに到着した。
しかし俺はこの店にどうやって入るか知らない。
考えあぐねていると、羊飼いが
「なんだ?
やっぱり賢者様とお知り合いじゃないんだろ!
俺様をこんな所まで連れて来ておきながら、どうするつもりだ!?」
すると門から声が聞こえてくる。
「ユージンさんですね?
ルックルでございます。
早いお帰りでございましたね。
……そちらはどちら様でしょうか?」
「ルックルさん!
ユージンです!
少しトラブルが起きてしまって、こちらの羊飼いさんにご迷惑をおかけしてしまって」
「そうだよ!
俺の家がこいつのせいで消えちゃったんだよ!
賢者様に会わせろ!」
俺が話している
「さようでございますか。
今そちらに向かいますので、少々お待ちください」
ルックルさんが入口まで来てくれるようだ。
羊飼いはまだ半信半疑だ。
奥からルックルさんが木箱を抱えて足早にやって来る。
「皆さんご無事でしたか?
お怪我はございませんか?」
「はい、だいじょ」
「それより! 家だ! 家! 弁償しろ!」
俺の話を遮って、羊飼いが怒鳴る。
「詳しいお話は中で伺います。
羊たちにはこちらを」
ルックルさんはそう言って、箱からロープを出す。
彼は羊たちを手早くロープでくくる。
「あ! 何を勝手に!」
羊飼いが文句を言ったが、ルックルさんはあっという間に羊たちをロープで繋げてしまった。
直後、ロープに縛られた羊たちが縮んでしまった。
「申し訳ないのですが、羊は室内に入れませんので。
ツルハシは、お預かりいたします」
ルックルさんは小さくなった羊たちを木箱に入れ、羊飼いの持つツルハシと羊の入った箱を交換した。
羊飼いは驚きのあまり文句もなく、ただ木箱を受け取った。
「ロープを外せば元通りでございますので、ご心配なく。
それでは中へご案内致します」
木箱の中で羊が小さくメェーと鳴いている。
俺たちは応接室に案内される。
フーの白くなった格好やソラの不安そうな顔に気付いたルックルさんは、二人を退出させる提案をした。
「今回の一件は大人のみで話し合いましょう」
「は? 何を言って……そいつら子供の格好をした大人だろ?」
「いいえ、羊飼い様、こちらのお二人は
「え? そんなわけが……」
それ以上は言葉が続かなかった。
実際にシルバーフォックスに入店できたことで、羊飼いは俺たちのことを信じる気になってきたようだ。
「というわけで、こちらのお二人には先にお部屋に戻っていただきたいと思います」
ルックルさんは反論の暇も与えない物言いをして、ベルを鳴らして他の使用人を呼ぶ。
すぐに女性の使用人がやって来て、二人を預かって部屋を出ようとする。
「あの! 後で二人にココアを飲ませてやってください!」
俺は帰り際にした約束を果たすために、思わず口走る。
ピリピリした空気でココアなどと口にするのは
「かしこまりました。
さぁ、こちらへ」
女性の使用人は微笑み一礼をして、ソラとフーを連れて部屋を出て行った。
シーンと静まり返った部屋で最初に切り出したのは、羊飼いだった。
「で、俺の家どうしてくれるの?」
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