第40話_初仕事
俺たちは初仕事をこなすため、シルバーフォックスを出発した。
二人にとっては初めての外の世界だ。
光だった時に何回か歩いてはいるが、やはりその時とはまた違うのだろう。
というわけで、さっきから全然歩みが進んでない。
「日が暮れちゃうぞー!
ほら、行くぞー!」
「「はぁーぃ」」
あ、空返事だわ。
ほらね、もうしゃがんで何かやってる。
うーーーん、どうにか鉱山まで連れて行かないと。
鉱山って、きっと人いないよな。
仕方ない。
俺はしゃがんでいる二人の背後に立つ。
「お前たちも、たまには伸び伸び遊びたいだろう。
……禁じられた遊び……やりたくないか?」
二人がバッと俺の顔を見上げる。
みるみるうちに二人の顔が笑顔になる。
禁じられた遊びとは、フーがかまいたちを放ってソラが空間移動でそれを避けるという二人が編み出したとても危険な遊びである。
周りへの被害があまりにも大きかったため俺が禁じたのだ。
しかし目的地は人がいなさそうな場所ということで許可を出すことにした。
「ここじゃできないから、鉱山まで行こうな。
ほら、よーし、行くぞー!」
「「はーーい!」」
ようやく元気よく歩き出した。
街の外まで来ると予想通り人はいなかった。
俺は胸をなでおろした。
鉱山へ続くであろう道を進む途中でソラが騒ぎ出す。
「ねぇ、兄ちゃん!
オレお腹空いちゃったよー!」
お昼には少し早いが、休憩をはさむことにする。
道を外れ、道を見下ろす小高い丘に座りお弁当タイムだ。
「これはソラの分。
こっちがフーの分な」
二人にルックルさんから頂いたお弁当を渡す。
竹の皮に包まれたお弁当を開くと、案の定おにぎりと漬物だった。
「おいしぃー!」
フーが幸せそうに言う。
ソラは言葉こそないが、美味しそうにおにぎりを頬張る。
確かにこんな青空の下で食べるおにぎりは美味しいに決まっている。
俺はおにぎりを食べながら地図を広げる。
地図とにらめっこしていると、偶然にも人が通りかかる。
どうやら羊飼いのようだ。
俺は丘を降り、その人に鉱山の詳しい場所を聞く。
「ここからあと五分くらいなんですね。
ありがとうございます。
助かりました」
「いやいや、大したことではないよ。
では、失礼するよ」
彼は羊を連れて離れた。
ソラとフーが食べ終わるのを待って、俺たちは再び鉱山へ向けて出発した。
時々何か興味を引かれた物に捕まっていたが、俺がボソッと「禁じられた遊び」と言うとすぐに歩き出した。
こうして俺たちは、今回の仕事場である鉱山へ到着した。
二人は大喜びである。
あの禁じられた遊びができるためである。
俺も約束した手前、やらせないわけにもいかない。
周りに人がいないか確認し、人がいる方向には絶対に打たないと誓わせ渋々了承する。
「その代わりケガするなよ!
手加減するんだぞ!」
「キャー! 行くよー!」
フーが歓喜のあまり叫んでいる。
それにソラが元気よく返す。
「いいよー!!」
もう聞いてないね。
俺はソラとフーから少し離れた所にあった岩に腰かける。
「お兄ちゃーん!
『よーい、スタート!』って言って~!」
「はいはーい。
じゃ、よーい、スタート!」
フーがかまいたちを放つ構えをする。
「行くよー!」
次の瞬間。
ドゴォォォォオオオン!!!
爆音と地鳴りが起きる。
それと共に目の前に砂ぼこりが立ち何も見えない。
「ゲホゲホ!
二人とも大丈夫か!!」
ソラが俺の横に空間移動でやって来る。
「ソラ! 大丈夫か!
一体何が起きたんだ!?」
俺の呼びかけにも反応せず、ソラは無言で砂ぼこりの先を見つめている。
ひとまずソラの安全を確保する。
そして砂ぼこりがおさまった先に、フーがピンク色の髪の毛までをも真っ白にして立っていた。
俺はフーに走り寄って、無事を確認する。
フーにケガはないようだ。
ただ茫然としている。
砂ぼこりが風に流され消えると、そこにはあったはずの鉱山がなかった。
いや、正しくは、がれきの山と化した鉱山が目の前にあった。
更に鉱山の奥にあったであろう山も吹っ飛んでいた。
俺もただただ茫然と立ち尽くす。
すると後ろから絶叫が響いた。
「俺の家がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
恐る恐る振り返ると、そこには先ほど道を教えてくれた羊飼いが居た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます