第22話_初依頼の受注

「昔ね、ありとあらゆるクリーチャーを倒した女性が居たんだよ。

おかげで街周辺の治安も落ち着いてね。

彼女が功績を残すうちに、妖狐様が彼女を呼び寄せたんだ。

冒険者を召し上げるなんて初めてのことだったから、この界隈かいわいざわめき立ったよ。

今では語り草になっていて、彼女はこう呼ばれているよ」


「「黒百合姫くろゆりひめ」」


オハナとヘイブンが共に召し上げられた冒険者の異名いみょうを呼ぶ。

声がそろってしまい、ヘイブンが少しバツが悪そうに笑って発言する。


「あはは、今では姿も見ませんけどね。

冒険者について大まかに分かったところで、依頼を受けてみましょうか」


ヘイブンの言葉を聞きながら、一枚の紙をテーブルの上に出すオハナ。


「初回限定だけど、報酬のいい妖狐様の依頼をやってみるかい?」


ヘイブンも同調して、俺に依頼を薦める。


「シルバーフォックスが新人のために募集している簡単な仕事ですね!

初めてやるにはうってつけですよ」


「内容は鉱石掘りだよ。

場所は街から一時間ほどだし、道具もシルバーフォックスから支給されるし、難しいことはないよ」


オハナの説明では問題なさそうに聞こえる。

俺は唯一の不安点について尋ねる。


「クリーチャーは出ますか?」


オハナは首を横に振る。


黒百合姫くろゆりひめのおかげで、街周辺は安全だよ。

クリーチャーは出ない」


安心した俺は即答した。


「そのお仕事やります!」


俺はまだ見ぬ統治者の仕事を受けることにした。

期限は特になく、気が向いたら一階のカウンターまで行けばいいらしい。

気楽な仕事だ。


手続きを終え、用事のあるヘイブンと建物前で別れる。

別れ際、彼に引き留められる。


「ユージンさん、ちょっと失礼しますね」


俺の後ろに回ったヘイブンが何かしている。


「はい、できました!

これはちょっとしたお守りです」


俺の首から小ぶりなクリスタルのネックレスがぶら下がっている。

高級そうな品物に俺は戸惑う。


「え、そんな高そうな物もらえないですよ」


「今度返してもらえばいいので。

では、私はこの辺で。

また」


爽やかな笑顔で手を振り遠ざかっていくヘイブン。

俺はまた押し付けられたなと思いながら、仕方なく家路につく。

すっかり日も暮れ、影が長くなっている。

俺はからのマッシモお手製リュックを背負いながら、のっぽになった自身の影を眺めて歩く。


だが、影がもうひとつ現れ、二つに。

さらに増えて、三つ。

気付けば横に並ぶ影は、四つ。

俺がバッと顔を上げれば、見覚えのある顔があった。


「んふふ、久しぶりね」


ナイスバディの美しい女性が、俺をまた連れ去ろうとしている。



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