第20話_冒険者組合
俺はヘイブンの怪しい笑みを拒めず『冒険者組合』に案内される。
「ここは色々な方と知り合えるし、きっと今後の役に立ちますよ」
ヘイブンはニコニコしながら、俺を連れて行く。
『組合』という名からして、俺は固い雰囲気を想像していた。
しかし予想は裏切られた。
俺の前に現れたのは、広場の中央に位置するオープンカフェのような開放的な建物だった。
人もちらほら見受けられ、カフェにそぐわない武装した人々がのんびり過ごしている。
俺の想像とあまりにも違っていたので、ヘイブンに確認を取る。
「ここが『冒険者組合』ですか?」
「はい、ここです。
一部カフェスペースになっていて、情報交換などで多くの人が使っています。
夜はバーになるんですよ。
えっと、入会の受付は二階だったと思います」
ヘイブンに続いて開け放たれた入口をくぐると、爽やかな風を感じた。
その風は、天井のシーリングファンが回転して送っていた。
広々としたエントランスには、フカフカのクッションが添えられたソファもある。
まるで南国リゾートだ。
エントランス奥のエメラルドグリーンに彩られたカウンターが俺の目に入る。
カウンター上に焼き菓子やサンドイッチが並んでいる。
その奥でこんがりと日焼けした女性が俺に手を振る。
水着の跡がまぶしい。
俺はヘラヘラと手を振り返す。
女性に気を取られている俺に、ヘイブンが奥にある階段から声をかける。
「こっちですよ」
その声で正気に戻った俺は、慌ててヘイブンを追いかけて階段を上る。
二階の廊下は、天井が吹き抜けになっていて一階の明るい南国の印象を引き継いでいた。
俺たちは、数部屋あるうちのひと部屋を訪ねた。
「やぁ、ヘイブン、調子はどうだい?」
アロハを着た色白のマッチョな男性が、ゆったりした口調で俺たちを出迎える。
「オハナさん、お久しぶりです。
今日は彼の冒険者登録をしようと思いまして」
オハナと呼ばれた男性が俺に微笑む。
「はじめまして、私はオハナ。
この冒険者組合の職員をしているよ」
オハナに続き、俺も自己紹介をする。
「初めまして。
ユージンと言います。
この界層に来てから、まだ数カ月なのでお手柔らかにお願いします」
「数カ月か……ほう。
では、こっちで冒険者の登録をしよう」
一瞬彼の顔が険しくなったが、俺とヘイブンは受付に通される。
受付でオハナが冒険者という仕事について教えてくれる。
「冒険者というと怖いイメージがあるかもしれないね。
でも、実際はみんなの困り事を解決する何でも屋みたいなものさ。
例えば、人手の足りない店を手伝うとかね。
難しいことはないさ」
それを耳にして、俺の中にひとつの疑問が頭をもたげる。
疑問を放っておけるわけもなく、俺は口にする。
「じゃあ、なぜ街にいる冒険者たちは武器を持っているんですか?」
オハナは表情を崩さず微笑み、俺の質問に答える。
「中には護衛や退治といった依頼もあるからだよ」
曖昧な答えに俺は更に問いかける。
「護衛? 退治? 一体何が出るんですか?」
オハナは微笑みをたたえているが、その笑みが怖かった。
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