第15話_初めての買い物

「魔力量を知りたかったら、魔力確認って念じてみろ」


マッシモが教えてくれた通りに、俺はすかさず念じた。



『魔力確認』

ユージン

320,000,000



数字が空中に現れ、俺はそれをしげしげと眺めた。

三億二千って、多いのか少ないのかよく分からない。


「出たようだな。

おっと、自分の魔力量は人には言わない方がいいからな!」


俺は思わず言いそうになっていたが、口を閉ざす。


「この界層は、大体三億前後の奴が集まっていると言われてる。

界層は相当な数あるからはっきりとは分からんが、真ん中よりちょっと上くらいらしいぞ」


真ん中よりは上だったのか。

俺は人生の結果を聞いているような気分になった。

マッシモは大事なことを付け加える。


「あとな、意思を持って人を痛めつけちゃいけない。

もしやっちまうと、魔力がとんでもねぇ量減らされる。

『神の罰』って呼ばれてるから、気を付けろ」


人を殴ったり、攻撃しちゃいけないのか。

そのルール大事じゃないか。

やるつもりはないが、やってしまう前に知れてよかった。


「話を戻すが、テント買うか?

1,000マリでいいぞ。

この界層では魔力の単位はマリなんだ」


なるほど。日本でいう円みたいなものか。

俺が納得していると、マッシモが再度問いかける。


「んで、このテント1,000マリでどうだ?」


俺はすっかり忘れていたテントについて、もう一度考える。

1,000マリって、3億以上あったら安く感じるな。


「かなりお安くしておいたぜ。

これからもいい付き合い頼むぜ、ユージン!」


ここまで世話になったマッシモそう言うなら、その値で買うほかない。


「じゃあ、その値段で買うよ。

で、どうやって支払えばいいんだ?」


「1,000マリを俺に譲渡するって念じるんだ。

数字を間違えないようにな!

あと! いくらおどされたとしても魔力は渡しちゃダメだからな!」


俺は忠告をありがたく聞きながら、1,000マリをマッシモに渡すよう念じた。


「できたと思う」


「やり取りがあった後は必ず魔力確認しろよ!」


マッシモに促され、俺は魔力確認を行う。



『魔力確認』

ユージン

319,999,000


履歴

-1,000 テント購入



「ちゃんとやり取りできたみてぇだな!

それと、その格好じゃ目立つから服見繕みつくろっておいたぞ。

代金はいらねぇ」


俺の砂ぼこりで汚くなった服をチラッと見て、ニシシと笑うマッシモ。


「そこまでしてもらってすまない……。

今日はすごく助かったよ。

忙しいだろうに、色々と手助けしてくれてありがとう」


「いいってことよ!

また何かあれば俺を頼ってくれよな!

がははは!」


その後、俺はテントの使い方をしっかり教えてもらった。

マッシモに改めてお礼を述べてから、テントと新しい服を金の池源泉へ持ち帰った。


やはり眠気はやって来ないが、今日は色々あったので疲れた。

早速購入したテントを広げてみる。

結構な大きさで、源泉の広場の半分を埋めた。

中に入れば、広々としていて快適だった。

俺は寝る前にやりたかった事を実行する。


「フーとソラ、来てくれるか?」


二つの光がフワリと俺の元へやって来る。

俺は心を救ってくれた彼らにお礼がしたかった。

魔力をこの二つの光に渡すと俺は念じる。

願いは聞き届けられたらしい。

なぜなら、フワフワした光の輝きがひと際増しきらめいたのだ。

実は感謝の意を込めて、かなり多くあげてしまった。

ここでは食事をする必要はなく、病気も税金もない。

さらに寝床にも困っていないから、これだけ残れば十分だと思っている。

俺は二つの光に深く感謝していた。

これくらいして当然なんだ。



『魔力確認』

ユージン

19,999,000


履歴

-300,000,000 魔力の譲渡

-1,000 テント購入



俺は強烈な立ちくらみを感じ、その場に倒れて気を失ってしまった。


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