第9話_マッシモと街歩き 後編
次に返品に向かったのは、訳の分からない絵が描かれたポスターを渡してきた店だ。
ポスターを何度見ても、やっぱり何が描かれているのかさっぱり分からない。
「よし、ここだな!」
マッシモが案内した所は、薄暗い裏通りだった。
本屋は大通りにあったが、ポスター屋は儲かっていないのか裏通りに面していて店舗も小さい。
またしもマッシモがズカズカッと店に入って行く。
俺も置いて行かれまいと急いで入り、ソラとフーが店内に入ったのを確認してから扉を閉めた。
中に入ると俺は室内の異様さにたじろぐ。
まず色がショッキングピンクやら蛍光イエローで、激しくて目に痛い。
それから置いてある物も、ペンキのはげた動物のオブジェやエロティックなマネキンなどカオスだった。
というか、怖い。
「がははは!
相変わらず気持ちわりぃな!」
マッシモが
異様な室内の恐怖と相まって、俺は思わず「ヒィッ!」と声をあげてしまった。
「何なんだい!
君たちは!」
部屋と同じテイストの服装をした人物が怒りながら出てきた。
俺はそいつがポスターを押し付けてきた当人だとようやく気付いた。
「よおよお!
ウノちゃん、そう怒るなって!
おめぇ、この前こいつに押し売りしたろ?
そいつを返しに来たんだよ」
ウノちゃんと呼ばれたへんちくりんはムッとしたまま俺に近付き、俺から自分が描いたであろうポスターをむしり取った。
「ふんっ!
この良さが分からないなんて、君は見る目がないね!」
と言い捨てて、そっぽを向いてしまった。
「まあまあ、そう怒りなさんなよ。
絵の良し悪しは別としても、ウノちゃんの絵には特別な効能があるんだぞ!」
マッシモが余計なことを言ったせいで、ウノちゃんは余計にプンプン怒っている。
そんなことは気にもとめないで、マッシモは勝手にポスターを広げている。
「あ、何を勝手に僕の絵を触っているんだ!」
「ほれ、ユージン、こっちに来てみぃ!」
マッシモはガン無視だ。
俺は広げられた絵の近くに行く。
すると、なぜか暖かい。
「暖かい……?」
「そうなんだよ!
こいつは絵を描きながら、実際の温度を再現する機能を絵に注入できるんだよ!
この絵は太陽が描かれてるから、ポカポカするってわけだ!」
すごいな!
もちろん暖かくなるのもすごいが、何が描かれているか分かるマッシモがすごい!
「フン、さすがマッシモだね。
そうさ、僕の絵は特別な力があるんだ」
ウノちゃんはさっきまであんなに怒っていたのに、今度は自信満々でふんぞり返っている。
それに水を差すようにマッシモが商人としての見解を述べる。
「だから俺は絵単体で売るのをやめて、他の商品に絵を描いて売った方がいいと言って……」
「うるさーーーーーーい!!!
僕の絵の良さが分からないなら、出ていけーー!!」
俺達は怒ったウノちゃんに店を追い出されてしまった。
「追い出されちゃいましたね」
「がははは! しかたねぇな!
じゃ、次行くか!」
俺達は残りを返品すべく歩き始めた。
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