第4話_二つの光

……どのくらいの時間が経っただろう。

俺は落ち着くまでに相当の時間を要した。

空を見上げると、すっかり暗くなっていた。

だが金の池からほのかな光が漏れ出ていて、夕闇の中でも辺りは見渡せた。

それと今まで気付かなったが、金の池の周りにホタルのような小さな光が舞っている。

ホタルよりもサイズが大きく、時々チカチカと光る。

虫だろうか?


ボーッと水面を眺めながら、つい家族のことを思い出してしまう。

するとまた俺の意識に反応して、金の池は家族を映し出す。

次に現れ出たのは、三男だった。


こいつは年が離れていたせいもあって互いに反発し合うこともなく、俺によく懐いていた。

そんな俺の弟は、暗い部屋で泣いていた。

そして、つぶやく。


「兄貴、なんでだよ……」


正直辛くて見ていられなかった。

俺の死がこんなにも大事な人達を悲しませている。

心が張り裂けそうだった。

もう……もう、限界だ……!


その時だった。

俺の頬を何かが撫でた。

それは、先ほど見たホタルのようなフワフワとした2つの光だった。

その二つの光はたわむれるように俺の周りを行ったり来たりしながら、時折笑い合っているみたいにチカチカと輝いた。


俺はしばらく、その優しい光を見つめた。

この二つの光に慰められ、救われた。

そんな気がした。

二つの光は強い光を放ちながら、俺から離れなかった。

まるで小さい頃の弟や妹たちのようでかわいい。


その光を見つめていたが、ずっと座っていたせいで固まってしまった。

俺はベンチから立ち上がり、伸びをする。

すると二つの光がスーッと離れて行ってしまった。


「おい、どこに行くんだ! 待ってくれよ!」


俺は慌てて押し付けられた品々をかき集め、光の行く先へ走った。

二つの光はそう遠くには行っておらず、すぐに追いつくことができた。

しかし追いつくと、またどこかへとフワフワと飛んで行ってしまう。

またその二つを追いかけて走る。

結構なスピードで飛んでいくので、段々と離れてしまう。

だが距離が少し遠くなると、二つの光はピタリと止まった。


「俺を待ってくれている?

どこかに案内したいのか?」


正解! ピンポンピンポーン! と言わんばかりに、チカチカと光った。


俺は二つの光に案内されるまま、歩道を外れ、茂みを突き進む。

もう振り返っても金の池が見えない所まで来た。

一体どこまで歩いて行くのだろうか。

そう思った矢先、遠くに明るい光が見える。

何だろうか?


その光が少しずつ近づいてくる。

目の前に生えている草を抜けると、いきなり広い空間に出た。

そこに遠くから見えていた光があった。

その正体は、湧き出る金の池だった。

たぶん金の池の源泉だと思う。

湧き出た水が池の方へ流れている。


それに加えてフワフワとした光が、池の方とは比にならないほどたくさん舞っている。

恐らく、ここが彼らの家なのだろう。

案内をしてくれた二つの光は、依然として俺の傍で飛ぶ。

俺はどうやら招待されたようなので、ここに居させてもらうことにする。

ここを当面の拠点にさせてもらえれば、荷物も置いておけるし助かるな。

それに、なんだか心地が良いところだ。


俺は草の上に寝そべる。

ふぁ~……眠く……


ない。

あれ、全く眠くないな。

今日は色々あったから、緊張しているのかもしれない。


あれ、お腹も空かない。

今日は色々あったから、緊張しているのかもしれない。


んん??

俺はひとつ気付いた。

体が軽い。

不摂生を極めた俺の豊満ボディにへばりついていた脂肪がないのだ。

体が若返った気がする。

一体どういうことだろう?


訳の分からない状況ではあったが、俺は目を閉じて体を休めた。


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