第4話 リス買いたい(父)
当時僕は「オカッパ頭」前髪ぱっつんに揃っていた。
僕はなぜか髪が長いのを好む少年だった。
家は公務員、教員家庭。
倹約家の父は「お父さんが切るから床屋行かないでいいわね。」そんなふうに言う。
母親は、逆に浪費家で、高いものは買わない。なぜか知らないが「半額」という値札にめっぽう弱くて
「れい!こんなに半額なんだわね。びっくりした。お母さんみんな買ったわね。」
そう言っては「不要な物」をやたらと買い込んできた。いまも、変わらない。
「安物買いの銭失い」
なぜ、家の家庭はこんなに「格言」を私に体験的に教えてくれるのだろう。
小学生やはり二年生くらいだったろうか。
僕は突如として、たぶん冬の平日だかに。
「リスが欲しい」と言いだした。
その日の僕の風貌。白いセーター、腕には意味不明に赤と紺のラインが腕を巻いていた。ズボンはよくわからないが綿生地の紺色のズボンだ。ジーンズみたくオシャレな代物ではないことは間違いないのである。
「リス買いたい」
と言っても糸魚川にはペットショップなどない。
お父さんはかなり悩んだ後に
「上越行けばあるんかもしれん。お母さんに、リス買っていいか聞いてきなさい。」
お母さんに「リスを買っていいか?」なんか聞いたら、買ったらダメだし、飼えないだろうと即座に僕はわかった。
母親は自分は無駄遣いなのに子供には一紋たりともださないようなある意味は「厳格な親だった。」
いつかこんなエピソードもある。
学校からのアンケートだ。
「ご家庭の教育方針は厳しいですか?」
1きびしい
2ややきびしい
3そうでもない
4やや甘い
5甘い
両親に見せたら「きびしいかねえ。」母親は頭をかしげながら言った。
お父さんは「どこが?!うちは大甘だよ。何を言ってるんだ!」ムキになり、珍しく怒っていた。
母親と父と全く考え方が捉え方が違っていたのである。
話を戻すが「母親に聞いたらリスはだめと言われる。だから、強引にお父さんに泣きながら言った。」
「お母さんに聞かないでいいよ。いいから、行こうよ。直江津のナルスに行こうよ。行こうよ。行こうよ。」
僕は本当に思い出したら、ワガママな息子だった。
お父さんは、「わかった、わかった、黙んなさい」そういうと海岸線を片道1時間、車を走らせる。
日本海の荒波が見えた。特には美しいわけではないような「くらいような、薄いような、緑のような、青いような海」、海の境目は、「空」だった。当たり前か。
一時間は当時の子供には、かなり長く感じた。
1日がかりのような気持ち。
お父さんは、大変だったと思う。思い遣ると胸が痛くなる。馬鹿な少年。甘えん坊の末っ子だった。
直江津ナルスという大型ショッピングセンターについたのは何時だったのだろう。
「本日は定休日」
そう入口に書かれていた。
しかし、あまりショックな思い出はない。
「仕方ないよ。また来たらいい。」
お父さんはそう言った。
僕の「リス欲しい熱」はたぶん翌日には消失していた。トンデモないクソガキである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます