「あの番組みたー?」


「見た見たー!あの女、何て言ったっけ?」


「長沢洋子でしょ?」


「そうそう。人を使って殺し合いさせるなんて最悪だよね!」


「ほんとほんと。顔見たけど、そんな可愛くないじゃんねー!」


「あんな女に村上くんを取られたかと思うと、もう悔しくて悔しくて」


「結局そこじゃん?ーー長山洋子じゃなくて村上亮くんの事じゃん」


「だって、、カッコいいじゃん?村上くん」


「確かにねー!あんたが好きそうな顔つきだよねー?私は別にーって感じだけど」


高校生たちが噂話をしている。

もはや、笑い話のようになっていた。


「長沢洋子をかけた勝負ーー初めは面白かったのになぁ」


「まさか最後にあんな事をさせるなんてーーちょっとガッカリーって感じ?」


そんな声も聞こえてくる。


一歩間違えれば「殺人の瞬間」を写し出したかも知れない番組だった。だが、視聴者はその緊迫した空気さえ見誤り、もう終わった事のようにーー。



村上亮と長沢洋子が逮捕されてから数年の時が経った。

彼らが住んでいない間、二人で暮らそうとしていたあの家は、まだそのまま放置されている。


ーーよくも。

ーーよくも村上くんに犯罪を犯させたな。


悪意の塊の様だ。

女は鬼の形相で長山洋子の顔写真にナイフを突き立てた。


ーー許さない。

ーー絶対、あの女を許さない。


あの事件からどれくらいの時間が経ったのだろうか??


あれからずっと二人が暮らしていた部屋の中にいた。

窓も開けず、カーテンも閉めたままーー。


私の心は暗がりにいる。 

ずーっと暗い闇だけが目の前に続いていた。


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