噂
「あの番組みたー?」
「見た見たー!あの女、何て言ったっけ?」
「長沢洋子でしょ?」
「そうそう。人を使って殺し合いさせるなんて最悪だよね!」
「ほんとほんと。顔見たけど、そんな可愛くないじゃんねー!」
「あんな女に村上くんを取られたかと思うと、もう悔しくて悔しくて」
「結局そこじゃん?ーー長山洋子じゃなくて村上亮くんの事じゃん」
「だって、、カッコいいじゃん?村上くん」
「確かにねー!あんたが好きそうな顔つきだよねー?私は別にーって感じだけど」
高校生たちが噂話をしている。
もはや、笑い話のようになっていた。
「長沢洋子をかけた勝負ーー初めは面白かったのになぁ」
「まさか最後にあんな事をさせるなんてーーちょっとガッカリーって感じ?」
そんな声も聞こえてくる。
一歩間違えれば「殺人の瞬間」を写し出したかも知れない番組だった。だが、視聴者はその緊迫した空気さえ見誤り、もう終わった事のようにーー。
※
村上亮と長沢洋子が逮捕されてから数年の時が経った。
彼らが住んでいない間、二人で暮らそうとしていたあの家は、まだそのまま放置されている。
ーーよくも。
ーーよくも村上くんに犯罪を犯させたな。
悪意の塊の様だ。
女は鬼の形相で長山洋子の顔写真にナイフを突き立てた。
ーー許さない。
ーー絶対、あの女を許さない。
あの事件からどれくらいの時間が経ったのだろうか??
あれからずっと二人が暮らしていた部屋の中にいた。
窓も開けず、カーテンも閉めたままーー。
私の心は暗がりにいる。
ずーっと暗い闇だけが目の前に続いていた。
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