結婚
「ーーこちら、婚姻届けですね。。受理します」
婚姻届の受付係がそう言った。
昨日までのあのバトルで生き残ったのは、奇跡に近い。
特に最後の銃撃戦ーー。
一歩間違えば、俺が怪我していたか、もしくは死んでいたかも知れない。
俺はここで運を使い果たしたかも知れない。
「入籍だけを済まし、二人は同じ家に帰っていく」
ーーついに決着が着きました。
ーー長沢洋子さんと結婚するのは、村上亮さんとなります。
お二人に祝福の拍手をーー。
番組関係者が拍手をする。
しかし、その場で見ていた村上のファンの子達や、見物者たちは拍手など出来なかった。
なぜなら彼は川中に向かい、銃口を向けたのだから。
テレビにまで放送されていたこの馬鹿げた勝負は、人たちの中で一生忘れられないモノとして心に刻まれるだろう。
ーーようやくそのすべてが終わった。
村上は微かに笑みを浮かべながら、肩の荷を下ろした。
俺もついに結婚したんだ。
※
その日から長沢洋子との同棲生活が始まった。
勝負で将来の結婚相手を決める、とか言ってた人だから、相当な変り者だろうと思っていたが、実際はそうでもなく。。
「ところで、なんであんなゲームで結婚相手を探そうなんて考えたの?」
唐突かも知れないが、俺はそこが一番知りたかった。
「ーーだって昔からもてていて、でもどれもタイプじゃなくて。。タイプって言うと分からなくて。違う人にまた断る理由を考えたりーーそう言うのもうめんどくさくて。。どうせなら、いろんな人が見守る中で決めたかったの」
もてない人からすれば、イヤミに聞こえるだろう。
だが、事実だから仕方なかった。
「じゃ、他の人が相手でも結婚してたんだ」
それはつまり誰でも良かったと言う事。俺は少しだけショックを受けた。
「まーそうなるね。。こっちも質問なんだけど、殺し合いして、なんてゆー要望をする女とよく結婚したね」
「そうだよな。今思えば、すごい決断だよ」
そう言えばあの時の勝負ーーテレビでも取り上げられたらしいよ」
「いつここに警察が来てもおかしくないな」
ジョーダンで言ったはずだった。
そんな話をしながら二人で笑っていた。
※
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴る。
覗き窓から外を覗く。
そこには警察官が2名立っている。
「こんにちは。村上さんいますか?」
チャイムを鳴らして、ドアをノックして、繰り返された。
「ーーじゃ、俺、、行くよ」
村上は覚悟を決めて、ドアの前に立つ。
ドアを開けた。
「ーー村上亮さんですね、、殺人未遂の容疑で逮捕します」
「お手数おかけしました」
村上は頭を下げる。
「あ、それと」
村上も足を止めた。
「ーー元、長沢(現在は村上)洋子さん、あなたには殺人教唆の容疑で逮捕します」
「二人とも、同じ牢屋にいれてくれますか?」
元、長沢(現在は村上)洋子は聞いた。
「そんな訳あるか」
警察官は冷たくそれを否定した。
「そうよね、、」
元、長沢洋子は微かに顔を傾け頷いた。
その姿が少しだけ寂しそうに見えた。でも、どうしようもない。
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