結婚

「ーーこちら、婚姻届けですね。。受理します」


婚姻届の受付係がそう言った。

昨日までのあのバトルで生き残ったのは、奇跡に近い。


特に最後の銃撃戦ーー。

一歩間違えば、俺が怪我していたか、もしくは死んでいたかも知れない。

俺はここで運を使い果たしたかも知れない。


「入籍だけを済まし、二人は同じ家に帰っていく」


ーーついに決着が着きました。

ーー長沢洋子さんと結婚するのは、村上亮さんとなります。

お二人に祝福の拍手をーー。


番組関係者が拍手をする。

しかし、その場で見ていた村上のファンの子達や、見物者たちは拍手など出来なかった。


なぜなら彼は川中に向かい、銃口を向けたのだから。


テレビにまで放送されていたこの馬鹿げた勝負は、人たちの中で一生忘れられないモノとして心に刻まれるだろう。


ーーようやくそのすべてが終わった。


村上は微かに笑みを浮かべながら、肩の荷を下ろした。

俺もついに結婚したんだ。



その日から長沢洋子との同棲生活が始まった。

勝負で将来の結婚相手を決める、とか言ってた人だから、相当な変り者だろうと思っていたが、実際はそうでもなく。。


「ところで、なんであんなゲームで結婚相手を探そうなんて考えたの?」


唐突かも知れないが、俺はそこが一番知りたかった。


「ーーだって昔からもてていて、でもどれもタイプじゃなくて。。タイプって言うと分からなくて。違う人にまた断る理由を考えたりーーそう言うのもうめんどくさくて。。どうせなら、いろんな人が見守る中で決めたかったの」


もてない人からすれば、イヤミに聞こえるだろう。

だが、事実だから仕方なかった。


「じゃ、他の人が相手でも結婚してたんだ」


それはつまり誰でも良かったと言う事。俺は少しだけショックを受けた。


「まーそうなるね。。こっちも質問なんだけど、殺し合いして、なんてゆー要望をする女とよく結婚したね」


「そうだよな。今思えば、すごい決断だよ」


そう言えばあの時の勝負ーーテレビでも取り上げられたらしいよ」


「いつここに警察が来てもおかしくないな」


ジョーダンで言ったはずだった。

そんな話をしながら二人で笑っていた。



ピンポーン。


玄関のチャイムが鳴る。

覗き窓から外を覗く。

そこには警察官が2名立っている。


「こんにちは。村上さんいますか?」


チャイムを鳴らして、ドアをノックして、繰り返された。


「ーーじゃ、俺、、行くよ」


村上は覚悟を決めて、ドアの前に立つ。

ドアを開けた。


「ーー村上亮さんですね、、殺人未遂の容疑で逮捕します」


「お手数おかけしました」


村上は頭を下げる。


「あ、それと」


村上も足を止めた。


「ーー元、長沢(現在は村上)洋子さん、あなたには殺人教唆の容疑で逮捕します」


「二人とも、同じ牢屋にいれてくれますか?」


元、長沢(現在は村上)洋子は聞いた。


「そんな訳あるか」


警察官は冷たくそれを否定した。


「そうよね、、」


元、長沢洋子は微かに顔を傾け頷いた。

その姿が少しだけ寂しそうに見えた。でも、どうしようもない。



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