リリー42 (十七歳)
歩き去るグーさんと主人公をぼんやり見送る。
『終わった……』
婚約破棄、しっかり破れた手応えが無かった。
むしろ私の先手必勝の婚約破棄に、グーさんや
だって他の悪役の皆さま同様に、私も生き残る事に必死。時と場所なんて選んでられない。チャンスは逃さない! って、思って焦ってたけど、やばい方向で終わった……。
グーさん、本当に怒った顔してたよね。
フェアリオって言ったあの
過去世ではなく現在世では、自信満々の美人のはずなのに、ちやほやの発信源が常に身内からのエールという私。身内外でのちやほや経験の少なさからか、なんか、なんか、自信、弱まる……。
「おい!」
ハッ!
あ、ウサギまだ居たんだった。このウサギ男とピアンちゃんが来てくれて助かった。お陰でなんとかあの場を乗りきったよね。
ありがとう……。
でもそれは、心の中でだけ……。
「どう思った?」
ウサギ男の話の中で、ピアンちゃんが危なかったのだと気がついた。普段の私ならきっともっと気を利かせられたのに、それどころではなかった。
(危ないことはしないでねって、後でピアンちゃんに教えてあげよう)
この後ウサギ男と
エンヴィーって、あの教師も態度悪かったし…。
「……」
さすが人のあら探しを瞬時に言葉に表現出来る、ハラスメントの白ウサギ。
褒めてつかわそう。
でもそれも、心の中でだけ……。
学院までの長ーい廊下。それをウサギとおしゃべりしながら歩く。
ほとんどお肉の話をしていた。
向こうが先に聞いてきたんだよ。お肉に飢えてる私が、
こほん。
だから
あ、今年は少なめかも。だからお裾分けは出来ないのよとも伝え済み。
「どうされたのですか?」
エレクトくん、私、無事、生還致しました…。
ようやくたどり着いた学院の連絡通路。それぞれのお迎えが、変な顔して私たちを見ていたよね。
ほんの少しだけ、
**
はーやれやれ。
大変な一日だった。
でもご存知? 皆さま。わたくし、初めほど
そして家に帰ったら、今もうちに居るファンくんに癒される。
七歳なのに賢いファンくんは、うちの二人の兄達からも一目置かれてて、私が参加した事のない会議にも出席している。
仲間外れの私は、指を咥えて悔しそうに見ていると思うでしょ? そうでもない。別に悪の中枢であるお兄様達の長々とした座談会に、参加したいとは思わない。
ただ私が想像している彼らの会話の内容、お子様の情操教育によろしくないんじゃないかって、それだけを心配している。
「リリー様!」
会議が終わって、私の一人ぼっちお茶会に現れたファンくん。可愛いよね。弟が居るってこんな感じかな?
『…………』
一緒にお茶しましょ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます