リリー20 (十六歳)
久しぶりに学院が再開されて、私も外に出る事が出来た。
この前のチャレンジ大失敗により、大人しくおしとやかになった私は、これ以上身内に迷惑をかけないように心がけている。
なので普通に学院に通い、普通に帰宅し、ほど程に主人公から身を隠していたつもり。
だけど移動教室で廊下を歩いてたら、学食で私にメンチ斬ってきた、主人公と勘違いしていたあのこが現れた。
第三王女様のエルストラさん。
初めは彼女がふわふわの主人公だと怯えていたけど、本当の主人公は別に居たので、今はあんまり怖くない。
しかも彼女、家族やお兄さんが麻薬密輸に関係してて、今まで周囲に居た友達たちが、ほぼほぼ離れてしまっている。
だけどそんな環境でも、頑張って勉強しに来ているのがすごいと思っていた。
だからなんとなく、私の周りの黒色メンバーズを見て居心地が悪そうだったから、少し離れてもらったの。
見通しのよい階段前広場、こちらを気にする黒色メンバーズもよく見える位置。初めは皆の前では言いづらそうに見えたエルストラさんだったが、二人になると私をキリッと睨んできた。
たくましい。二面性。
「今度開かれるグランディア様の就任披露宴、そこで婚約発表が行われるそうなのです」
「まあ、そうなのですね」
へー、ついにグーさんも婚約するんだね。王太子になったんだもんね。おめでとー。お相手は、ひょっとしたら
「リリエル大公令嬢は、その事をどう思ってますの?」
「どうと言われても、良いことなのではないかしら?」
否定する気も割り込みする気も、全くもってありません。無害アピールだけは全力で頑張ろうと思います。
「グランディア様がこの学院に通われるから、ここまで頑張ってこれた。…でも、私は、披露宴で婚約発表なんて、耐えられない、」
『エルストラちゃん、大丈夫ですか?』
ーーえ!?
エルストラちゃんて、王女様への場違いな、フレンドリーなこの声かけって?
これって、まさか、
オー…、エム、ジーッ!
ヤバイヤバイ。ヤバすぎる。
ヘルプ!! ヘルプッ!!!!
下から階段を上ってきた主人公。どういう訳か、なんだかこっちに走り寄って来る。
アワアワ、アワアワ。
『エルストラちゃんを虐めないで! リリーに何を言われたのですか?』
『何の事かしら? 私は何も言ってないでしょう? 私はエルストラ様のお話を、聞いてただけよ、』
一度目よりも近すぎる接近戦。
しかも心の準備無し。
とっさに言い返したけど、内心は、なんで突然出てきたのって、かなり、けっこう焦ってる!
「エルストラ、何をしているんだ」
「!!」
更に続く大ピンチ。主要危険人物が、このタイミングでのこのこと現れた。
そう頭がパニックしてたら、強く押されて身体がぐらっと宙に浮く。
「!?」
あれに近いよね、これ。
通学で利用する電車のホーム。最前列はなんとなく嫌だなって、後ろが少し気になっていたあれ。
それは過去世では考えすぎの用心しすぎだったけど、まさか今、こんなことする人が、現実に居るとは思わなかった。
人を突き落とすって、かなりヤバい犯罪行為。
まあでも、私も過去世で犯罪を計画して、それを実行したんだから、言い返す言葉はないのかも。
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