砂の星
あし
砂の星
あるところに、砂だけでできた寂しい星がありました。砂の星の人々は、自分たちの星をあまりよく思っていませんでした。それどころか、憎んでさえいたのです。右を見れば金色に輝く黄金の星、左を見れば青と緑に満ちあふれた生命の星があるというのに。自分たちの星ときたら、どこにいっても砂ばかり。きれいなものは何ひとつありません。
そこで砂の星の人々は、黄金でできたすばらしい星を奪いにいこうと決心しました。あの星が自分たちのものになったら。そう想像するだけで、胸が沸き立つような思いがするのでした。
ところがついてみてびっくり。誰も人がいないのです。恒星に近いせいか黄金の地面は焼け付くように熱く、とても住める環境ではありませんでした。しかし、そうは言っても黄金は黄金です。砂の星の人々はありったけの黄金を船に積み込むと、次は生命の星に飛び立ちました。あの素晴らしい青や、図鑑でしか見たことがない木々の緑がぜひとも欲しいと思ったのです。
ところが、着いた途端にすさまじい轟音が鳴り響きました。大砲の音です。生命の星では、何十年間も戦争がおこなわれていたのでした。
砂の星の人々は最初はびっくりして「せっかくこんな美しい緑があるのに戦争なんかするのだろう」と疑問に思いましたが、それもすぐに消えました。あのすばらしい機械はなんだろう!あれがあればどの星も手に入るに違いない。そしたら、青や緑、光り輝く黄金にも引けをとらないくらいすばらしい星が手に入るぞ!
砂の星の人々は黄金と引き換えに、星一つ吹き飛ばせてしまいそうなほどたくさんの兵器を手に入れて、意気揚々と自分たちの星に帰りました。もう自分たちの星が惨めなことを気にしなくていいのです!
だってこれからすばらしい星を手に入れるんだから。
そこで、兵器の確認をしようと一人が手を伸ばすと……
高温によって砂は美しいガラスに変わり、人々は光り輝くダイヤモンドになって、砂の星は宇宙一美しい星となりました。砂の惑星の人々の願いがようやく叶ったのです。
砂の星 あし @ashiashiasyura
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