魂の砂漠 ～聖女も悪魔も恋してる。ラバダブみたいな、熱い恋しちゃってる！～

第７節【ＲＥＧＧＡＥ】

　わたしの瞳に宿る月瞳（ムーン・アイズ）は、月の満ち欠けに影響を受けて力を発揮する。

　月のない日中では、その力は弱まってしまう。

　もっとも、満月の夜であっても、わたしには月瞳（ムーン・アイズ）を操ることはできないのだけれど――それでも、生き残るために、わたしは魔法を必死で習得したのだけれど――防御魔法だけは、誰よりも自信があった。

　砂の暗幕がわたしを優しく――そして、激しく包みこんでいく。悪魔の群れが騎士たちを皆殺しにしたとしても、わたしだけは生き残ることができるはずだ。

　夜まで持ちこたえれたら、悪魔（ラサ）と入れ替わることができる。

　ラサはわたしなんかと違って、なんだってできた。

　記憶の断片のなかで、ラサが月瞳（ムーン・アイズ）を使って悪魔の群れを一掃していたのを見たことがある。

　本当に――本当に、歯痒（はがゆ）かった。どうしようもなく、悔しかった。

　毎晩、毎晩――本当に毎晩、わたしは夢のなかで、ラサの記憶を辿（たど）っては、苦しんでいた。

　何度も繰り返して、夢のなかに現れる男の人に――どうしてだか、わたしは恋をしている。

　だけど彼はわたしではなくて、ラサを見ている。ラサに笑顔を向けるたびに、わたしの心が張り裂けるように悲鳴をあげる。

　夜が訪れるのが、嫌になった。

　眠ることが、本当に嫌になる。

　朝が来るまで、わたしは毎晩――ずっと、苦しんでいるんだ。

　どうしようもなく、苦しくて仕方がないんだ。

　意識を高めながら、わたしは砂の防御幕の強度をあげた。悪魔の一団が、騎士たちを圧倒しているからだ。

　悪魔の数は、十数体もいた。

　それに対してこちらは、七人しかいない。精鋭部隊だと司祭が宣（のたま）わってはいたが、なんたる体（てい）たらくだろうか。

　壊滅するのも、時間の問題かもしれなかった。

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　もう少しで、精鋭部隊が全滅しそうだった。

　どうやってこの場を切り抜けようかと、思案を巡らせていたその時だった。

　――ラサ。

　慥（たし）かに、そう呼ぶ声が聞こえてきた。

　不意に、心拍が跳ね上がるのを感じた。

　とてもじゃないが、冷静ではいれなかった。心の奥そこから、これまでに感じたことのないような感情が、オアシスのように湧き上がってきていた。懐かしいような、哀しいような――それでいて温かな感情が、わたしの頬を濡らしている。

　そこに、彼がいる。

　夢のなかで、何度もみた彼がいる。

　どうしようもない衝動が、わたしの心を掻（か）き乱している。

　次々に彼が――その仲間と共に、悪魔を祓（はら）っていく。

　――光をくれ。

　気づけばわたしは、歌っていた。

　わたしは、ここにいる。お願いだから、気づいて欲しい。

　夢のなかで何度もリピートしてきた感情が、歌（ラガ）となっていたんだ。