第4夜

 前回のあらすじ。

 年下の弟だと思っていた相手に匂わせをされ悩みすぎて熱出した。以上。


 そう、翌日私は悩みすぎて熱を出していた。

 なに?長期戦って、なに?あの優し気な笑顔!!

 私の中で弟だと思っていたよる君という存在が、立ち位置が変わっていく。

 それは私の中であまりにも衝撃の出来事であり、由々しき事態であった。

 脳が現在進行形で発熱をおこし寝込むくらいの一大事。

 よる君の発言が嫌だったわけではない。そう、嫌だと、嫌悪感を微塵も感じなかった自分にも驚いた。

 そうやって自分の知らない自分の感情を知るたびに余計に頭は混乱してしまう。

 こんな事は初めてで、恋愛スキルがほぼ無いに等しい私はどうしていいものか、うんうんと頭を抱えながらベッドの中で小さく丸まりながら考える。

 しかし、考えても考えても当たり前の事だけど考えはまとまらず、それならば友人に相談してしまおうとスマホに手をかけた時、インターホンが鳴りだるい体でベッドから出て来訪者の確認をする。

「よる君・・・」

 正直どうしようか迷ってしまった、ここで出てよる君を前にしたとしてどんな表情を彼に向ければいいのか分からなかった。

 悩んでいれば彼は踵を返して自分の部屋へと戻ろうとしてしまうのが見えて、だるい体の事なんか忘れて玄関まで走り寄って扉を開けていた。

「よる君、待って」

 思ったよりも声は小さく震えてしまったけど、彼には届いていたようで

「春樹さん?大丈夫ですか?」

 驚いた顔で駆け寄ってくる。

 そんなよる君の反応を見ていたらなんだか嬉しくて笑みがこぼれる。

「熱が出たってメッセージが入ってたから心配で仕事の帰りに色々と買ってきたのでよかったら使って下さい」

 そういうとよる君は私に買い物袋を手渡してくれる。

「ありがとう」

 中を見ると冷えピタやスポーツ飲料が数本に数種類のゼリーなどが入っていた。

「あ、お金・・・」

 よく回らない頭で考えて出た言葉がそれだった。

「いいですよ、俺が好きでやっていることなんで!気にしないでください」

「でも」

 少しだけ食い下がるとよる君がこう言った。

「じゃあ、今度俺が熱出した時に同じものを下さい!それならいいでしょ?というか春樹さん顔真っ白ですよ?こんな問答切り上げて早く寝てください」

 これ以上はよくないと思ったのか私が何か言う前による君は早口でそういうと「それじゃあ、おやすみなさい」とだけ言って自分の部屋に戻っていった。

 私はというと、思ったよりもよる君が普通でいつも通り過ぎて拍子抜けしてしまったと同時に安心もしていた。

 そう、安心したらなんだか体が怠くなってきた。

 顔も真っ白だって言われたし、今日はもう寝てしまおう。

 そうしてゆっくりとダイニングテーブルの椅子に腰かけてさっき貰ったゼリーなどをありがたく頂戴したあと、風邪薬を飲んで寝室へ行きベッドへ潜り込む。

 ふかふかとしたマットレスの感触と温かい毛布に包まれるとやがて瞼が重たくなってくる。

 そういえば、よる君と出会って一緒にご飯を食べるようになってからだんだん薬に頼らなくても眠れるようになってるな。

 そんな事をふと思いながら私は眠りについたのであった。

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よるに春 yoruni @yoru-ni

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