第41話 『打ち上げ』

自動燃料補給ロケットの打ち上げを間近に控えたMWコーポレーションのクルーたちは、慌ただしく最終確認を行っていた。

ここで焦って失敗しては、元も子もない。


「打ち上げまで、あと5分だ。各サポートチーム、最後のチェックをするぞ」


司令官が作業を進めるクルーたちに指示を出す。


「エンジンチーム」


「オーケーです。燃料満タンに積みました」


「了解。そして次にロケットチーム」


「問題ありません。補給ロケットの機体に異常は見られません」


「了解。最後にコントロールチーム」


「こちらも準備完了です。誘導コンピューターも、正常に動作しています」


「了解した。発射まであと2分21秒。いよいよだぞ」


司令官をはじめ、メンテナンスクルーたちは緊張感が増してきた。

これまで誰もやったことのないミッションが迫っている。

補給ロケットは、問題なく飛ばせるだろうが、パイソンのロケットと上手く接続ドッキング出来るだろうか。下手をすれば、パイソンの命も危ない。ギリギリの決断だが、我々がチェイス・ザ・ギャラクシーの新しい扉を開くのだ。このミッションが成功すれば、今後この作戦がセオリーになるかもしれない。


「パイソン、自動燃料補給ロケットを、これから発射する。発射まであと1分30秒」


司令官はパイソンに無線を入れる。


「分かった。こちらも準備は出来ている。確実に成功させてみせる」


パイソンは力強く答えた。


「ではいくぞ。よし、誘導コンピューターセット」


司令官はサポートチームに指示を出す。


「セット完了!」


「ロケットエンジン、点火準備」


「点火準備オーケー!」


「発射まであと30秒」


いよいよカウントダウンが始まった。

歴史的作戦の幕開けを告げるロケットエンジンが、唸りをあげ始める


「29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、発射!」


自動燃料補給ロケットは、轟音を引き連れてガニメデの空へと昇っていく。


「エンジン問題ありません。順調に飛行してます」


サポートチームの一人が言う。


「了解」


司令官は答えた。


「誘導コンピューターも正常です」


「了解した。みんなよくやった。後はパイソンのロケットボートと、上手く接続ドッキング出来るかだ。それまでは油断するな」


自動燃料補給ロケットの打ち上げは無事に成功した。


その様子を、ギャラクシーファクトリーのピットインセクターからロックが眺めていた。


「全く無茶をやりますね。二兎を追う者は一兎をも得ずですよ」


ロックは呟いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る