第38話 『視認』
最後尾を行くパイソンの肉眼でも、うっすらと木星が視認出来た。
「ようやく見えたか」
パイソンは若干緊張した。
もうそろそろ自動燃料補給ロケットとの
失敗は許されない。
「メンテナンスクルー、こちらパイソン。自動燃料補給ロケットの準備はどんな感じだい?」
パイソンはガニメデで待機しているメンテナンスクルーに無線を入れた。
「何も問題はないさ、パイソン。予定通り打ち上げを実行する。時間でいうと、あと42分後だ」
メンテナンスクルーは答えた。
「了解。こちらも準備万端だ。いつでも
「頼む**イソン。***いはゆ**れ*い。****け**賭けだ。それを***」*****」
突然、メンテナンスクルーの無線にノイズが生じたため、パイソンは焦った。
しまった。ここへきてトラブルが増えたのか?
しかし、司令官に報告をすれば、ピットインをするように指示が出るだろう。無線のトラブルは命取りだ。
だがパイソンは、少し考えた。
これが一時的な電波障害であれば、問題はないと。太陽風の影響か、もしくはヴァン・アレン帯のようなものが原因かもしれない。
最近になり木星の付近にも、このヴァン・アレン帯に似た放射線帯が存在している事が判明してきている。
「ロックのやつはそろそろガニメデへと到着するだろう?ギャラクシーファクトリーのメンテナンスクルーたちは、
メンテナンスクルーからの無線はあまり聞き取れなかったが、パイソンは報告はせず会話を続けた。
「**た***動き****いる。流石に***い*ピッ**ンを***プする事は、***いしな」
相変わらず無線にノイズが混じる。
これから前代未聞の事に挑戦するのに、この無線トラブルが続くのは致命的だが、パイソンは一縷の望みに賭けた。
このトラブルは一時的なものだと。
「そうか、了解した。こちらは少し、頭の中で最後のシミュレーションをしておく。打ち上げの準備だけ進めておいてくれ」
「****。打ち上げは、あと39分後だ」
最後の無線部分はしっかりと聞こえた。
やはり一時的なトラブルだろう。
パイソンは少し安堵した。
小惑星との接触で、エンジンにも何かしらのトラブルがありそうだ。これ以上のトラブルは御免蒙る。
様々な思案をしていたが、不安を払拭させるようしっかりと前を向いた。
そしてパイソンはだんだんと大きくなってくる木星の姿を、肉眼に焼きつけようとした。
「これが最後のレースなんだ・・・」
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