第35話 『作戦プラン』
「メンテナンスクルー、こちらパイソンだ。自動燃料補給ロケットの
パイソンはガニメデで待機しているメンテナンスクルーに無線を入れた。
「了解した。こちらは準備万端だ。いつでも、どんな事でも対応出来るから、遠慮せずに無線をくれ」
メンテナンスクルーは力強く答えた。
「頼りにしてるよ。とりあえず計算通りに進んでいるし、何も問題はないだろう。若干だが、ミツルとの差は縮まったようだ。このままなら更に差を縮められそうだ」
「分かった。何かあれば連絡をくれ」
「そうだ、ひとつだけ教えてほしい。ブースターエンジンの点火以外で何か加速する方法はないだろうか?もし最後の追い込みをかける時に、万が一加速が出来ないとなった場合の事も想定しておきたい」
パイソンはメンテナンスクルーに質問した。
操縦桿に伝わる微震動の事がどうしても頭から離れなかった。なので、ブースターエンジンが故障した場合の加速方法を聞いておきたかったのだ。
「・・・申し訳ないがパイソン、それは教えられないよ」
メンテナンスクルーは答えた。
予想外の答えにパイソンは困惑した。
「教えられないとは、どうしてだ?ブースターエンジンの点火以外で、加速の方法が無いということか?」
「いや、あるにはある。だがそれはあまりにも危険なものだ。その方法を知ってしまったら、絶対に実行してしまうだろ?君を危険な目にあわせたくはない」
「とりあえず知りたいだけさ。心配するな。本当に危険であれば実行しないよ。妻のリリアンとも約束したんだ。危険な真似はしないとね。だから教えてくれ」
「・・・。分かった。教えるが、実行はしないと約束してくれ」
「ああ。約束するよ」
「まず考えられる方法のひとつ目は、逆噴射エンジンを使用することだ。逆噴射エンジンはブースターエンジンとは違うシステムでプログラムしてあるが、それを解除すればブースターエンジンの代わりとして使うことは出来る」
「それは俺もなんとなく考えたよ。だがそうした場合、ブレーキをかけることが出来なくなり、危険だということだな」
「その通り」
「さっき方法のひとつ目と言っていたが、他にも方法はあるのか」
「・・・ああ。あとひとつ考えられる可能性は、ロケットボート内を温めるために使われている熱交換器を使用する方法だ」
「熱交換器?」
「熱交換器は、言わば暖房装置のようなものだ。ロケットボート内を最適な温度にするための熱を生み出す装置だ。その熱交換器の熱を利用すれば、ブースターエンジンに頼らず燃料に点火することが出来る」
「そんなことも出来るのか。だがそのやり方も危険なのか?」
「ああ。かなり危険だ。ロケットボート内を温めることが出来なくなるんだ。パイソン、君も低体温になってしまうし、機器類も冷やされれば、故障する可能性も高まる」
「そうか、どの方法も危険しかないっていう訳か」
「そうだ。だからくれぐれもムチャはしないでくれよ。こちらは全力でサポートをする」
「分かってる。とりあえず自動燃料補給ロケットの準備をよろしく頼む」
パイソンは無線を切った後も暫く考えていた。
他に何か加速の方法もあるはずだと。
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