第14話 『大金』

ここはアメリカのニューヨークにある巨大カジノ『Jackpot』だ。

ここでは毎回、チェイス・ザ・ギャラクシーの勝敗を賭けて莫大な金が動いている。

今回のレースは、三選手のみの出場なので、確率的にいえば三分の一で勝てる勝負だが、人々は様々な憶測を立て、世界最大のレースの行方を固唾を飲んで見守っていた。


No.1・・・ギャラクシーファクトリー ロック【単勝オッズ:2.3】

No.2・・・MWコーポレーション パイソン【単勝オッズ:4.1】

No.3・・・八幡㈱ ミツル【単勝オッズ:10.7】


火星を過ぎるまでは、自身の賭けを変えられる為、人々は最後まで熟考していたのだ。


「やはりロックは素晴らしい戦術家だ。やはり彼に投資するのが無難だな」

「パイソンは今回のレースで引退だ。何かしらの意地を見せてくれるはずだ」

「八幡㈱のメンテナンスクルーの素早さを見たか?!信じられん。それにミツルのテクニックもなかなかのものだ。俺は八幡㈱に賭けるぜ」


名うてのギャンブラーたちは、レース展開を見極め、自身の直感も頼りに大金を注ぎ込んでいた。


そんな中、全財産をパイソンの勝利に賭けた男が居た。彼の名はマックス。マックスは多額の借金返済の為、今回のレースに全てを賭けていたのだ。

「パイソンは絶対やってくれる。この賭けに勝てれば俺はやり直せる」

火星を発進したのはパイソンが最後だったが、マックスは賭けを変えず自分の直感を信じた。

負ければ一文無しになってしまうが、そんなことはマックスにとっては、どうでも良かった。金を返せなければ、どちらにしろ自分の命は危ういものになる。

「頼むぜ、パイソン」

マックスはカジノで放映されているライブ中継を食い入るように見つめていた。


ちょうどその時、パイソンのロケットボートがブースターエンジンを点火させ、加速を図ったようだ。

これによりミツルとの差はぐんと縮まった。

「MWコーポレーションのブースターエンジンは、改良されて世界一になったかもしれないな。ギャラクシーファクトリーよりも性能を向上させたようだ。これならトップを狙えるぞ」

マックスは飲んでいたバドワイザーを飲み干すと、時計を見た。

あと数時間後には小惑星帯へと突入するだろう。

「ちょっとホテルで一眠りしよう。小惑星帯を抜け、木星まではかなりの距離がある。まだまだレースは分からんからな」

そういうとマックスはチップを置き、カジノを後にした。

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