第7話 『精鋭部隊』

惑星改造テラフォーミングされた火星のセクター08では、パイソンの操縦するロケットボートのピットインに向けた準備が進められていた。

MWコーポレーションの選りすぐりのメカニックたちが集結し、どんな機器トラブルにも即座に対応出来るように待ち構えている。

彗星群をやり過ごすために、エンジンを逆噴射して急ブレーキをかけたが、データを見る限り、機体に異常は無さそうだ。

30分以内にメンテナンスをし、ロケットボートを飛び立たせないと、後続との差が縮まってしまう。このピットインだけは、メカニックたちの腕の見せ所なのだ。


「あとどれくらいでパイソンはやって来る?」


「およそ、2時間25分後ってとこだろう」


「今回こそ優勝しないとな。俺たちの報酬にも影響するしな」


「それにしても、八幡㈱のロケットボートの性能を見たか?地球スタート時の迫力は凄かったな」


「ああ、次回のレースでは本命になるかもしれないな」


「八幡㈱のメンテナンスクルーがいるのは、セクター06か?」


「そのようだな。日本人がたくさん集まっていたな」


「日本のメンテナンスクルーのお手並み拝見させてもらおうじゃないか」


「だがギャラクシーファクトリーのクルーはどこだ?かなり遠くのセクターに居るのか?」


「分からない。近くのセクターにはそれらしきものは見えないな」


「それにしても彗星群【PNOP223650】の接近を事前に察知していたのは、さすがギャラクシーファクトリーだな」


「悔しいが、MWコーポレーションより上手うわてだな」


「ああ。だがメンテナンスクルー俺たちの腕は、奴らと遜色ないぜ」


「同感だ」


MWコーポレーションのメンテナンスクルーたちは、雑談をしながらパイソンの到着を待っていた。


火星を出た後に待ち構える小惑星帯を抜けた後は、木星の衛星、ガニメデまでロケットボートの整備は出来ないが、心配する必要はないだろう。

ガニメデにもMWコーポレーションが誇る、最強のメンテナンスクルーが待っている。


ちょうどその時、地球の司令官からメンテナンスクルーたちに無線が入った。

「ピットインするまでロケットボートの状況は分からないぞ。油断せず、あらゆるトラブルに対応出来るよう、各自準備をしておけ」

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